16話 影が・・・
「気合十分のようだね」
アランは俺の様子を見て、笑顔でそう言った。
「まあな! こんなにワクワクするのは久しぶりだぜ!」
俺が高々にそう声を上げると―
「それは良かった。 僕もユーリ君と勝負が出来るよう、相手が誰であろうと全力を尽くして戦うと誓おう。 それに僕だって最初から負ける気なんかないからね。 それはここにいる、副会長のベルガー君、書記のクロ君も同じ気持ちさ」
「ああ! ・・・ん?」
書記のクロ君?
俺の視界には会長のアランと、副会長のベルガーしか見当たらないんだが。
俺は360度、辺り全てを見回した。
そして―
「ひぃっ・・・」
・・・。
部屋の隅で、両手で膝を抱え、小さく座っている男子生徒と目が合った。
「な、なんかいる」
俺は反射的にそう声を漏らすと―
「ひ、ひぃいいいい。 す、すいません、すいません、視界に入ってすいません」
と、その男子生徒は慌てて俺に謝罪した。
「い、いや別に謝る必要なんて―」
「すいません、すいません、すいません、すいません」
と、その生徒は、涙を流しながら俺に謝罪を続ける。
・・・俺の言葉がまるで届いていない。
俺は動揺しつつも、つかさず口を開く。
「お、おいアラン、あいつは何だよ! なんで泣きながらあんなに謝ってんだよ!」
アランはにこやかな笑顔で俺に返す。
「彼は書記のクロ君さ。 極度の人見知りで、他人と視線を合わせるのが苦手なんだ」
「ひ、人見知り? そ、それでああなのか?」
俺は再び、クロに視線を移す。
クロの髪は黒髪で、全体的に少し長い。
座っているので正確にはわからないが、体は小柄で手足も細く、なんというか華奢だ。
そしてこいつは・・・
めちゃくちゃ影が薄い!!!
俺たちがここに来る前から、あいつはあそこにいたのか?
俺は他人の気配には敏感な方だが、全く気がつかなかったぞ!
だが、視認して分かったことがある。
こいつは―
「クロ君には、もっと自分に自信を持ってもらいたいところなんだけど、まあそれも彼の魅力の一つということで」
アランはニッコリと笑っていた。
「そ、そうか」
「ここにいるベルガー君、そしてクロ君も、僕がこの学校から選び抜いた優秀な人材だ。 ユーリ君・・・君に限って油断なんてことは決してないとは思うが・・・クラス対抗戦では油断することなく、初めから全力でかかってくることをオススメするよ」
アランは不敵な表情でそう言った。
そんなもん―
「当たり前だ! 油断なんて誰がするかよ! 俺は戦う前から相手の力量がある程度読めるんだ。 あそこで小さく謝っている書記が・・・決して弱くねえってことも、俺にはお見通しだぜ!」
アランに向かって俺がそう言うと、部屋の隅から慌てた声が聞こえる。
「え、ええ!? そ、そそ、そんなことは、ないですけど―」
「ユーリ君、やはり君には見抜かれてしまったか。 彼の実力を・・・」
「じ、実力!? か、かいちょう、中級騎士の、ぼ、僕の実力なんてたかが知れて―」
「ああ、もちろんだぜ!」
「え、えっと、えっと」
(こ、この人たち、僕の話を全く聞いてない。 そ、それに、なんかとてつもない勘違いをされていると思うんだけど、ど、どど、どうしょう、あわわわ)
「ユーリ君、二週間後のクラス対抗戦、楽しみにしているよ」
「ああ、絶対にお前を倒してやるぜ!」
「あ、あわわわわ―」
何やらボソボソと部屋の隅から聞こえてきたが
俺とアランはお構いなしに、互いに拳を合わせるように、拳を上げ向けあった。




