9話 謝罪
エミリと朝食を作り終えたところで、ロミオも目覚め、俺たちは三人で朝食をとった。
エミリが魔改造した握り飯は、俺が昼に食べるように、容器に入れ学校に持っていくことにした。
エミリは捨ててくれと懇願していたが、貧乏性の俺にはそんなことはもったいなくて到底出来ない。
俺は基本的に出されたものは全て食べるたちなのだ。
苦手な物も特にないしな。
まあ、そんな感じで朝食を済ませ、俺たちは学校に向かったのだった。
AM―8:15
学校の前に到着し、正門をくぐって玄関へ向かった。
・・・。
さきほどから、妙に視線を感じる。
そして、ヒソヒソと周りの連中が何か話している。
まあ、特に実害はないのでいいのだが・・・
俺たちは玄関で靴を履き替え、校内に入った。
そして二年のエミリとは、入り口からすぐの所でわかれた。
ロミオに聞いたところ、二年の教室は一年の教室とは別の棟らしい。
そして三年も・・・。
学年毎に棟が分かれているとは・・・
やはりここのスケールの大きさにはいつも驚かされる。
さすが大国バラドール様だ・・・
などと考えながら、俺たちはいつもの教室
1-Eの教室へ向かった。
そして教室のドアを開け、中に入ると―
シーン
っと、いつものごとく騒がしかった教室が一瞬で静まり、クラスの連中たちは俺たちに視線を一斉に向ける。
・・・もういい加減、珍しいもんを見るような、その目はやめてほしいものだ。
「ハァ~」
俺はため息をつきながら、自分の席についた。
「・・・やっぱり注目されてるね」
隣の席のロミオが、俺だけに聞こえるような小さな声でそう言った。
「だな・・・貴族様にとって、平民はそんなに珍しいってのか、まったく」
「・・・え? それはちょっと・・・違うと思うよ」
「そうなのか?」
「うん」
「じゃあ、こいつらはどうして・・・」
俺は周りの連中へ視線を移した。
そして、あちこちで連中の声が聞こえてきた。
「お前昨日の決闘見たか?」
「当たり前だろ、やばかったよな。 三年の上級騎士を瞬殺だもんな」
「古流剣術だっけ? あまり詳しくはないけど、習得が鬼難しく、現代ではそれを扱えるのは少数だって言われているらしいぜ」
「まじ、人間じゃねえだろ」
「今年のクラス対抗戦、あいつまちがいなく選ばれるんじゃね?」
・・・。
俺は人間だ。
まあ、注目されている理由はわかった。
昨日のリギルとの決闘。
奴との決闘は、かなりの生徒に見られていたからな。
聞いたところ、下級騎士と上級騎士が決闘したことも前代未聞らしいし。
・・・まあ、そんなことはどうでもいいんだが。
それにしても、一つ聞きなれない単語が出てきた。
クラス対抗戦・・・って何だ?
俺は隣のロミオに尋ねた。
「なあ、クラス対抗戦って何だ?」
「えっと、クラス対抗戦ってのはね、各クラスから代表で選ばれた3人が、他のクラスと競いあう年に一度の学校のイベントだよ」
「なるほど。 だが3人で競いあうっていうのは具体的にどういう―」
俺がそこまで言ったところで、俺たちのすぐそばに、ある人物の影が映った。
俺は振り返る前から、その影の大きさ、雰囲気で、そいつが誰であるか予想はついた。
そして振り返る。
・・・やはり俺の予想は的中した。
「お、おいマクルドが・・・あいつらのところに」
「やべえよ・・・また喧嘩になっちまうぜ」
「教官を呼んできた方がいいんじゃね?」
クラスの連中がざわつきはじめる。
だがマクルドは、表情を少しも変えず、俺たちを見つめる。
「・・・」
数秒の間、俺たちとマクルドの間には沈黙が流れた。
マクルドは俺たちのすぐそばで突っ立ったままだ。
・・・一体何なんだこいつは。
俺たちに何か用があるんじゃないのか?
俺は思ったことをそのまま口にした。
「マクルド、俺たちに何か用か? 言いたいことがあるなら言えよ」
俺がそう言うも、マクルドは沈黙を貫く。
いや、まじで何がしたいんだこいつは・・・
まさか、あれか?
この前の昼休みの件を逆恨みして・・・
報復をしにきた・・・とか?
・・・
わからん。
などと俺が考えていると―
沈黙していたマクルドがようやく口を開いた。
「ラングヴェイ・・・」
「・・・え?」
ロミオは少し驚いた様子で、続ける。
「マ、マクルド君・・・ぼ、僕に何の・・・」
ロミオがそう返すと、マクルドは再び沈黙した。
そして数秒の間を置き、マクルドは衝撃的な言葉を発した。
「悪かったな・・・その・・・いろいろと」
「え?」
な、何だと・・・
あのマクルドが・・・
謝罪した・・・?
「・・・それだけだ」
マクルドはそう言って振り返り、自身の席に帰っていった。
お、驚いたぜ。
まさかマクルドの口から、そんな言葉が飛び出してくるとはな。
そして驚いたのは俺だけではなく、ロミオ本人も、そしてここにいるクラスの連中もみなが俺と同じような面構えだった。
「あ、あのマクルドが・・・謝りやがったぞ」
「ありえない・・・そんなこと」
周りの声を背に、俺はロミオに向かって口を開いた。
「よかったな、ロミオ」
ロミオは、驚いた様子だったが
徐々に笑顔に変わり
「・・・うん・・・」
そう言った。
そして、マクルドの謝罪を筆頭に
クラスの連中が次々と、ロミオの元へかけよってきた。
「ラングヴェイ・・・いや・・・ロミオ。 今までひどいこと言って・・・ごめん」
「私、今まで何も言えず・・・クラスの雰囲気に飲み込まれてて・・・ロミオ君、本当にごめんなさい」
「お前のことよくも知らねえくせに、親に言われたこと、周りの連中にだけ耳を傾けてた・・・ほんとごめん!」
ロミオの周りに、クラスの連中が次々と集まり、謝罪祭りが開催されていた。
なるほどな。
クラスの連中も、本当はロミオのことを心の底から悪く思っている奴なんて一人もいなかったんだ。
だが貴族である親、周囲の人間
そして、クラスを牛耳っていたボス
つまりマクルドが、ロミオに対し強い侮辱を与えていた。
そういった要因が重って、今まで誰もロミオの味方になれるものがいなかったんだろう。
だがそのマクルドが、ロミオに謝罪したことで
ロミオとこいつらの間にあった、見えない壁のようなものが消え去った。
よくも悪くも、マクルドのおかげでこういった状況になったわけだ。
俺はロミオに視線を移すと
ロミオはあたふたしながら、クラスの連中からの謝罪を受けていた。
俺がここにきて、ロミオがクラスの連中と話をしている姿を初めてみた。
「本当によかったな・・・ロミオ」
俺は心からの声が漏れてしまった。
そして俺は、後方の席
マクルドの方へ振り返り、奴と視線を合わせた。
そして、ニシシと笑顔を見せた。
相変わらずのマクルドは「チッ」と舌打ちしながら顔を逸らしたのだった。




