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碧眼の神威使い ー奪われた幼馴染を救うため俺は魔人をぶった斬るー  作者: ARU/MERIA
第2章 高位6魔人<ネグルス>編
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5話 化け物


 俺とエミリは、ロミオの言葉に驚愕した。


 「何だと・・・」


 人を殺しかけた?


 こんなにも優しく、大人しいロミオが?


 それに・・・化け物というのは一体・・・


 ロミオが続ける。


 「・・・エリオット兄さんが、妻に強く言ってくれたおかげで、僕は妻から嫌がらせを受けることはなかった。 だけどある時、エリオット兄さんが数日、家を留守にしなければいけないときがあったんだけど」


 ロミオは再び暗い表情で俯いた。


 「そんなエリオット兄さんが不在の中・・・僕は妻から、自身の寝室に呼ばれた。 今まで、僕が寝室に呼ばれたことはなかったから・・・嫌な予感がした。 それに恐ろしくもあった。 だけど使用人の僕には・・・断ることなんて出来なくて・・・。 僕は言われた通り妻の寝室に向かった。 ・・・そして寝室に入ると、妻はいつものように、軽蔑したような目を僕に向け暴言を吐いた。 まるで、溜まりに溜まっていた怒りをぶつけるかのように、僕と・・・亡くなった僕のお母さんを罵り・・・大声を上げて罵倒した。 ・・・胸が苦しかった。 僕のことを悪く言われるのはいい。 慣れていたし、我慢することも容易だった。 だけど・・・僕の大好きだった、お母さんのことを悪く言われるのは・・・とてもつらく・・・苦しかった。 心が壊れてしまいそうになるほど」


 「そして妻は、僕に追い打ちをかけるように・・・僕に暴行を加えようとした。 妻の掛け声とともに、寝室の扉から、見知らぬ大柄の男が2人現れた。 そしてその男は僕に近づき、僕は両腕を掴まれた。 そして身動きがとれなくなった僕に妻が近づき、手に持っていたナイフで僕の服を裂いた。 使用人の制服を裂かれた僕は下着だけの格好になり・・・妻の合図とともに、男の人たちが、僕を無理矢理ベッドに押し倒した。 僕はこの時、この後自分がどうなってしまうのか・・・何をされるのか・・・幼いながらも理解していた。 でも抵抗したところで・・・大柄の男2人を相手に・・・僕の力ではどうすることも出来ない。 これが・・・僕の運命なんだ・・・そう僕は諦めかけた。 だけどその時・・・僕の頭の中に、兄さんの顔と、兄さんの言葉が浮かんできた」



 ―君は今日から、ここで一緒に暮らす僕の家族だ! これからよろしく!―


 ―大丈夫! 君には僕が・・・兄がついている! 遠慮せずいつでも僕を頼ってくれ!―


 ―僕の妹にそのような振る舞い・・・たとえ母上であっても決して・・・許しはしない!―


 「そんな兄さんのことを考えていると・・・僕は自然と涙が溢れてきた。 そして―」



 ―君はどうしたいんだ?―



 「そんな兄さんの言葉を思い出して・・・僕は・・・心の中で強く叫んだ」


 嫌だ・・・こんな知らない人たちに・・・僕の体を触られ・・・穢されるなんて。 そんなの絶対に・・・嫌だ! そして・・・許せない・・・。 亡くなった僕のお母さんのことを・・・あんなにも・・・あんなにもひどい言いぐさで・・・侮辱し・・・罵倒して! この人だけは・・・この人だけは絶対に・・・絶対に許さない!!!


 「僕がそう心の中で強く叫んだ瞬間。 僕の体から信じられないほどの魔力が溢れ出した。 そして次の瞬間、僕は一瞬にして、大柄の男を凍らせた。 それどころか・・・辺りを見渡してみれば、部屋中一面が凍っていた。 そして僕は・・・恐怖で腰を抜かしている妻に・・・近づき、歩み寄った。 正直そこからのことは記憶になくて・・・次に気がついた時は・・・エリオット兄さんが僕を強く抱きしめてくれていた。 そして、僕の視線の先には、妻が瀕死の状態で、そんな妻を使用人たちが慌てて手当をしていたのが見えた」


 「幸い、妻も、凍らせてしまった男の人も、重症ではあったものの、命を落とすことはなかった。 だけど、僕が起こしてしまったことは、牢獄へ連れていかれてもおかしくないほどの重罪だった。 だけど、エリオット兄さんの強い訴えにより、僕は牢獄へ連れていかれずに済んだ。 だけどその代わりに・・・屋敷の片隅の、何もない部屋に・・・僕は閉じ込められた。 24時間・・・たった一人・・・誰と話すわけでもなく・・・僕はそこで過ごした」


 ロミオは、俯いてそう言った。


 「何だと・・・ロミオが行ったことは正当防衛だ! なのになぜ・・・ロミオがそのような・・・。 それでは大して牢獄とかわりないではないか・・・」


 エミリは悔しそうにそう言った。


 俺も同じ気持ちだった。


 なんと胸くそが悪い話だ。


 叶うなら、妻とその男どもをこの手でぶん殴ってやりたい。


 それに・・・


 エミリが言ったように、ロミオは自分の身を守っただけだ。


 たしかに、瀕死の状態にしてしまったというもあるのだろうが。


 それでも!


 屋敷の部屋に・・・閉じ込めるなんて。


 「くそっ! ・・・許せねえ」


 俺は怒りをぶつけるように、机に拳を打った。


 するとロミオは顔を上げ―


 「ユーリ・・・エミリさん・・・ありがとう」


 俺たちにそう言った。


 そしてロミオが続ける。


 「エリオット兄さんだけは、僕の話を信じてくれたんだけど・・・両家はもちろん信じなかった。 それにどんな理由があったとしても・・・僕は現当主の妻を殺しかけた。 両家にとっては、そもそも理由なんてどうでもよく・・・重要なのは確かな事実だけだった。 だから、エリオット兄さんが両家にどれだけ訴えても・・・この決定を覆すことは出来なかった。 だけどそれとは違って、もう一つ・・・両家が僕を、部屋に閉じ込めたいある理由があった」


 「もう一つの理由?」


 俺はロミオにそう問いかけた。


 「うん。 兄さんから聞いた話だけど・・・僕が正気を失い、妻を殺しかけているとき・・・僕の全身の皮膚には、青いアザのようなものが浮かび上がっていたらしいんだ。 魔法科学、魔法師の歴史について記されている本をいくら探しても・・・僕の体に浮かび上がっていた、そのアザについて記されているものはなかったみたいで・・・。 両家は、そんな不可解で不気味な僕のアザ・・・いや・・・僕を気味悪がり・・・恐れた。 そして僕は・・・エリオット兄さんを除いた・・・屋敷の者全員から ―化け物― と呼ばれるようになった」


 なるほど。


 ロミオが言っていた化け物っていうのは


 こういうことだったのか。


 だが確かに・・・


 そのアザについては不可解ではある。


 まあ、魔法の歴史なんてこれっぽっちも知りはしないんだが


 俺が今まで見てきた中で、魔法を使っている者に、そのようなアザが出現しているのを見たことがない。


 もちろん・・・魔人でも。


 「僕は、何もない埃まみれの部屋でただ一人・・・何をするわけでもなく・・・ただ時間だけが過ぎた。 だけどそんな僕に、兄さんが監視の目をかいくぐり、会いにきてくれた。 兄さんは両家と妻から、僕に会うことを禁止されているはずなのに・・・そんな危険をおかしてまで、僕に会いに来てくれる・・・それが・・・たまらなく嬉しかった。 兄さんはいろいろな話を僕に聞かせてくれた。 楽しい話や笑える話、兄さんが訓練している剣や魔法の話。 部屋に閉じ込められ一人で過ごしている僕にとっては・・・そんなエリオット兄さんとの時間だけが何よりの楽しみであり・・・生きているという実感が持てる唯一の時間だった。 ・・・それから二年後。 僕は13になり、エリオット兄さんは15になった。 15になると、兄さんが騎士・魔法師育成学校に行くことは知っていた。 家を継ぐにしても、騎士・魔法師育成学校を卒業しているということは、貴族の中ではとくに重要視される項目だった。 そして、兄さんは学校に入学する前日、僕にこう言ってくれた」


 ***


 「俺は明日から、騎士・魔法師育成学校に行く。 剣と魔法の技を高めるという理由もあるが、俺にはもう一つ大きな使命がある」


 「使命・・・ですか?」


 「ああ。 それは俺がもっと・・・もっともっと大きな、一人の人間として成長すること。 そして胸を張って・・・この家・・・ラングヴェイ家を継ぐんだ」


 「兄さんなら・・・きっとできます!」


 僕は兄さんにそう言った。 すると、兄さんは僕の頭に手を置き、優しい表情を向け―


 「そして・・・君をここから出す」


 そう言った。


 「・・・え?」


 「俺が必ず・・・君をここから出す! 君が胸を張って、この部屋から出られるよう・・・俺がもっと力をつけて、正々堂々君をここから出してやる! すまない・・・少し時間がかかるだろうが・・・俺を信じて待っていてくれるか?」


 「うぅ・・・うん・・・」


 ***


 「僕はその言葉がたまらなく嬉しくて、涙を流した。 そして翌日、兄さんはバラドールにある、騎士・魔法師育成学校に向け、この家を後にした。 兄さんが家を出る直前、僕は部屋にある小さな窓から、兄さんを見つめていた。 そして兄さんが見えなくなるまで、僕は片時も目を離さなかった。 兄さんの佇まい、そして後ろ姿は、言葉にできないほど、たくましく、かっこよかった。 兄さんなら必ず、自身の使命を果たしてくれる。 兄さんが、僕をここから救ってくれる・・・密かに兄さんを見送りながら、そんなことを考えていた。 ・・・この日がまさか・・・エリオット兄さんとの・・・最後のお別れになるなんて・・・この時の僕は知る由もなかった」


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