55話 武者震い
*ユーリ*
PM20:10
俺は、エミリの屋敷を出た後、馬を全速力で走らせ、ダルウィン家に急いでいた。
エミリからもらったメモによると、ダルウィン家はバラドールの内部に位置しており、俺たちが通う学校からそう遠くない場所にあるらしい。
なので、俺はとにかく学校を目指し、馬を走らせていた。
「そろそろ、バラドールが見えてくるはずだ。 ・・・長時間走らせてすまないな・・・もう少しだけ頑張ってくれ」
俺は馬を撫でながら、そう呟いた。
そして―
「よし、バラドールに入った。 ここから学校まで、あと少し―」
俺がそう言った瞬間―
ダダダンッ!!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!
っと、はるか前方から光の矢のようなものが轟音をたて、もの凄い速さで上空を飛んで行った。
「な、なんだ・・・あれは・・・」
俺は呆気にとられ、光の矢が飛んで行った方を見つめていた。
あれは・・・矢か?
だが、あんな魔力を帯びた矢なんて一体・・・
そんなことを考えていると―
ダダダダダダダンッ!!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!
っと、先ほどよりも大きな音をたてながら、再び同じように光の矢が飛んでいった。
「まただ。 あれは一体・・・」
俺はそう言った所であることに気づいた。
「あの方向・・・ダルウィン家がある方じゃ」
まさか・・・
誰かが魔人と戦っているのか?
・・・わからない。
だが、急ぐにこしたことはないようだ
ニギギ・・・
俺は手綱を強く握り、ダルウィン家に急いだ。
馬を走らせ数分―
「ここか・・・」
大きな屋敷の前に着いた。
エミリのメモによると、ここがダルウィン家の屋敷らしい。
あれは・・・
屋敷の二階の窓が割られており、その隣の壁に大きな穴が開いている。
やはり、先ほどの光の矢は
ここから放たれたもので間違いなさそうだ。
「よし」
俺は気合を入れ、屋敷の門を開けた。
すると―
シュン・・・
「な、なに・・・!?」
「やあ、ユーリ君じゃないか。 エミリ君の一件はかたがついたのかい?」
なんと俺の目の前に、騎士生徒会長のアランが現れた。
ど、どうして、こんなところにアランが・・・
俺は驚きながらも続ける。
「あ、ああ・・・エミリの家はもう大丈夫だ」
「そうか、それはよかった」
アランは笑顔でそう言った。
なぜ、アランがダルウィン家の屋敷から出てきたんだ?
・・・まさか・・・先ほどの矢は・・・
俺は疑問をアランに投げかけた。
「アラン・・・聞きたいことがあるんだが・・・」
「ん? なんだい?」
「どうして、ダルウィン家の屋敷なんかにいたんだ・・・しかもこんな時間に・・・」
「ああ、それはね。 学校にリギル君の退学届けが出されていたので、リギル君を引き留めに来ていたのさ」
「そ、そうか・・・って、そうじゃなくて・・・その」
そういうことを知りたいんじゃないんだ。
アランは、ここで魔人と戦っていたのか?
それに、光の矢の正体は一体・・・
そんなことを考えていると、
アランは俺の心を読み取ったかのように、俺の疑問について話はじめた。
「ああ、そうか。 ここの屋敷の当主・・・魔人は僕が始末したよ。 だからもう大丈夫」
「な、なに・・・始末しただと・・・」
魔人は、魔物なんかよりもかなり手強い相手で、学校一の剣術使いと言われているエミリでさえやられかけていた。
だがアランは、見るからに無傷で、その服には埃一つついていないようだ。
それに、アランを含め、あの学校の生徒は誰も魔人の存在すら知らなかった。
アランは初見にも関わらず、その手で魔人を倒したというのか?
俺は呆気に取られていると、アランから衝撃の言葉が発せられた。
「僕も神威使いなんだ・・・ユーリ君と同じね」
「な・・・」
アランはニコリと笑顔を見せてそう言った。
二つの衝撃が俺を襲う。
なんだと・・・
アランは神威使いだったのか・・・
それに
俺が神威使いだっていうことを
見抜いていた・・・
俺は衝撃のあまり、声が出せなかった。
「ユーリ君、それじゃ僕はそろそろおいとまするよ」
アランは交差するように、俺を通りすぎ―
「それと・・・君には生徒会に入ってもらう・・・これは決定事項だ」
アランの声で、俺が振り返ると、
アランもこちらを向いており―
「おやすみ」
アランは爽やかな笑顔でそう言って
シュン・・・
と、間の前から消えた。
アランが神威使い・・・
ということはつまり・・・先ほどの光の矢・・・あれはおそらく、アランの神器から放たれたものだ。
「騎士生徒会長・・・アラン・ファルガレス・・・」
学校1の実力者にして、俺と同じ神威使い・・・
・・・
・・・・・・
「お・・・おもしれぇえ!!!」
俺はこみ上げてくる熱い思いを抑えられず、声に出してしまった。
こんな気持ちは久しぶりだ。
武者震いが止まらない。
あいつと戦いたい!
いや、絶対に戦ってやる!!!
うおおおおおおおおおおおお!
「学校が楽しみだ!!!」
俺は興奮が冷めないまま帰路についた。




