44話 魔人戦⑤ 真実
*エミリ*
妹ではなく・・・私が標的だと?
私とユーリは、妹から魔法具の信号があり、屋敷に戻ってきた。
一体、どういうことなんだ?
そうこう考えていると、魔人が続けて口を開く。
「俺の人形を二体もやったんだ・・・少しだけ教えてやろう」
そう言って、魔人は続ける。
「エミリ・レンガーデン、お前はあの方に選ばれたんだ。 いや、正確には一年以上前から選ばれていた。 お前らは何も疑わなかっただろうが・・・ダルウィン家との結婚話は俺たちが仕組んだことだ」
な、なんだと・・・
「ど、どういうことだ! な、なぜ貴様ら魔人が・・・そんなことを・・・」
「焦るな、順を追って説明してやる。 俺たちは数年前、あの方の指示のもと、お前らの学校の生徒を連れ去っていた。 ・・・だが、立て続けに行方不明になった生徒が増えたことで、学校と国の監視が厳しくなり・・・俺たちは今までのように、動くことは出来なくなった」
「そ、そんな・・・」
魔人が言っている話を私は知っている。
いや・・・あの学校に通う者なら誰もが知っているはずだ。
数年前に世間を騒がせた・・・
上級騎士・魔法師が立て続けにクエストに行ったっきり、行方不明になった事件のことだ。
その後の調査でも、行方不明になった生徒の痕跡などは何一つ見つからず、この事件は多くの謎を残したまま幕を閉じた。
だが、これらは全て・・・こいつら魔人によるものだったというのか。
魔人は続けて口を開く。
「そんな中、次の標的がお前に決まった。 俺たちは穏便にことを済ませるため、この結婚話を計画した。 お前が学校を辞めダルウィン家に入った後に、お前をあの方の元へ送る予定だった。 学校を辞めた後なら、お前が消えた所で学校は管轄外・・・そもそも、黙っていればお前が消えたことなど、連中にはわからないからな」
なるほど・・・
ダルウィン家にさえ私を入れてしまえば
あとは、重い病気を患い外に出られないなどと、私を外に出せないという理由を適当につければいいだけだ。
・・・だがここで、私はある疑問が浮かんだ。
「結婚話は貴様ら魔人が仕組んだと言ったが・・・ダルウィン家は古くから血統が続く上流階級の貴族だ。 貴様ら魔人の計画に加担するとは・・・到底思えない。 もしや・・・ダルウィン家の者を全員・・・貴様が操っているとでもいうのか」
私がそう言うと―
「フフフ・・・フハハハハハハハハハハハハハハ」
魔人は大声で笑いだした。
「何がおかしい!」
「ハハハハ・・・ハ~・・・。 全然違う、そうじゃない。 俺がわざわざそんなことをする必要はない」
「どういうことだ!」
すると魔人は両手を広げて口を開く。
「俺が操る必要はないんだ。 なぜならダルウィン家当主は・・・俺と同じ魔人だからな!」
「な、何だと・・・」
ダルウィン家当主が・・・魔人だと・・・
私はこの瞬間―
ハッとあることを思い出した。
ダルウィン家の当主、ルイズ・ダルウィンはバラドール王国の大臣を務めている。
そして、ギルドの運営はバラドール王国が行っており、主に大臣がそれを担っている。
・・・つまりダルウィン家当主は・・・誰がどのクエストを受注し、どこに向かったのかも全て把握できるということだ。
ということはつまり・・・数年前のあの事件・・・
「まさか・・・数年前の事件・・・裏で糸を引いていたのは・・・ダルウィン家当主・・・いや・・・魔人・・・だというのか」
私が言葉を漏らすと
目の前の魔人は、ニヤりと下卑た笑みを浮かべた。
その笑みで、それが答えだということは理解できた。
・・・何ということだ。
私たちの近くに・・・それもバラドール王国に魔人が入り込んでいるだと・・・
魔人は、この世界にどれだけの数がいるんだ・・・
私が知らないだけで、至るとこに存在しているのか?
・・・わからない・・・
私はハッとある疑問が浮かんだ。
ダルウィン家当主が魔人であれば・・・息子のリギルはどうなんだ?
奴も魔人なのか?
いや、奴の首にはこいつらと同じような模様はついていなかった・・・
私は疑問をそのまま投げかけた。
「リギル・・・奴はどうなんだ! 当主が奴を操っていたのか!」
「いいや違う。 奴は何も知らないただの駒・・・いや駒だったというべきか」
駒だった?
まさか―
「どういうことだ!」
私が大声を上げると
魔人は怒りを帯びた表情を向け、口を開く。
「奴は失敗した・・・だからもうじき殺す。 奴は本気でお前を自分の物に出来ると思っていた・・・哀れな奴だ。 いや、無能なクズと言ったほうがいいか。 奴は己の小さなプライドの為に・・・決闘などという、くだらん遊びをした。 ・・・そしてそのせいで、今回の結婚話は・・・解消されてしまった。 俺たちが一年以上かけて計画していたものを・・・奴は一瞬で壊しやがった!」
魔人は大声を上げてそう言った。
やはり、魔人はリギルを殺すつもりだ。
だがなぜこいつは、先ほど行っていた決闘の結果を知っている?
あの場所に・・・他の魔人がいたとでもいうのか?
そんなことを考えていると―
「だから俺たちは、強硬手段に出た」
そう言って、魔人はポケットから赤色の魔法具をジャララっと出した。
私はそれを見た瞬間、大声を上げた。
「それは! 私がサラに渡していたものだ! 貴様が・・・どうしてそれを持っている!」
「まだ分からないのか? この魔法具を使って、お前に信号を送っていたのは・・・この俺だ。 つまり、俺がお前を呼びよせたんだ」
「何だと・・・」
つまり私は、まんまとこいつの罠にはめられたというわけか。
だが、そんなことよりも―
「妹はどこだ! 無事なんだろうな! 答えろ!!!」
私は怒りをあらわにしてそう言った。
「ああ、妹は無事だ。 それは保証してやる。 お前の妹はあの方に選ばれてはいないが、かなり魔力が高い。 あと二年も経てばお前同様・・・あの方に選ばれるまで成長するかもしれない。 安心しろ・・・お前の妹は特別に、魔力が満ちるまで俺が面倒をみてやる」
「ふざけるな! そんなことは絶対にさせない! 貴様はここで私がたたき斬る!!!」
「フフフ・・・やはり人間は愚かだ。 さきほどの一撃で、実力の違いに気づけないとは。 まあ、いい・・・。 お前はあの方に選ばれた人間・・・そして、俺の人形を二体もやった。 特別に少しだけ遊んでやろう」
魔人は私を挑発するかのように、無防備に両手を広げた。
完全に私を舐めている。
だが、そんなことはいい。
私のやるべきことはただ一つ。
私の全身全霊をかけて・・・
魔人をたたき斬る!!!
ダンッ!!!
私は床を蹴り、魔人に斬りかかった。




