42話 魔人戦③
*ユーリ*
―数分前―
俺はエミリと別れた後、気づかれないように注意しながら、一番奥にある妹の部屋まで突き進んだ。
・・・ここか?
一番奥の部屋の前まで辿りついた。
俺は、トントンと小さくノックをする。
・・・だが、返事は返ってこない。
俺はキョロキョロと周りを見渡した。
・・・こんな事態ではあるが
女性の部屋に無断で入るというのは、何とも後ろめたい気持ちになってしまう。
俺は罪悪感で胸を締めつけられながら、ゆっくりと扉を開け、そーっと中に入る。
部屋の中は、明かりはついておらずカーテンも閉められ、真っ暗だった。
暗くてよく見えないが・・・人の気配はない。
妹はここにいないのか?
俺はゆっくりと部屋の中に入って、窓のカーテンを開けた。
ジャラララ
カーテンが開き、部屋の中に光が差し込む。
その瞬間―
俺は背後の殺気に当てられ振り返った。
すると―
シュッ!
俺の足元へ向かって2本のナイフが飛んできた。
ダン! ダン!
俺は反射的に飛んで避け、ナイフをかわした。
「誰だ!」
俺はナイフが投げられた方へ向き、そう言った。
すると、そこには―
アイラと同じエプロンドレスをまとった、使用人らしき金髪の女性が立っていた。
その女性は表情を変えず、虚ろな目でこちらを見つめ―
「不法侵入者・・・排除します」
淡々とそう言った。
何を言っているんだ?
俺はエミリと一緒に入ってきたし、使用人のアイラもそれは知っているんだが。
「いや、待ってくれ! 不法侵入じゃない! 俺はエミリと一緒に来たんだ!」
俺がそう言うも―
「排除します」
その女性は無表情で淡々と同じことを繰り返す。
「いやだから―」
ダダッ!!!
俺の言葉を切るように、その女性は両手に二本のナイフを持ち俺に向かって突っ込んできた。
そして―
シュッ! シュッ!
速く、巧みなナイフさばきで斬りこんでくる。
俺はそれをかわしながら続ける。
「だから、話を聞いてくれ!」
だが、女性は表情一つ変えず、手を止めようとはしない。
まるで俺の声が届いていないようだ。
やはり・・・魔人に操られているのか?
あまり、大きな音を立てたくはないのだが・・・仕方ない。
俺は女性が斬りこんでくるタイミングに合わせ―
バシッ! バシッ!
女性の両手首に手刀を入れ、ナイフを落とす。
だが、女性は瞬時に後方へ飛び―
シュン!
エプロンドレスの下に潜めていたナイフを俺に向かって投げた。
速い!
俺は体を捻り、ナイフをかわした。
あの一瞬でナイフを投げ・・・この速さと精度。
この女性・・・かなり戦い慣れしている。
エミリが言っていたボディーガードというのは、この女性のことか?
その女性は再びドレスの下から、次は鎖を出した。
その鎖は独特な形状をしており、先端は剣のように鋭く尖っている。
次から次へと、一体どれだけの武器をあのドレスの下に隠しているんだ。
女性は無表情のまま、その鎖をブンブンと振り回しはじめた。
そして―
ブンッ!
っと、鎖を俺が立っている方向とは別のほうへ投げた。
どこを狙っているんだ?
手元が狂ったか?
まあいい。
女性は今、鎖で両手がふさがっている。
攻め込むなら今だ!
俺はそう思い、距離を詰めようとした瞬間―
ジャラララララ!
「何だと!」
その鎖はまるで意思を持っているかのように
投げられた軌道上から直角に曲がって俺に向かって飛んできた。
ジャリリリリリ!!!
俺は体勢を下げ、鎖をかわす。
だが―
ジャラララ
ジャリリリリリ!!!
俺が避けた後も、鎖は俺を狙って向かってくる。
俺は続けて、鎖をかわしていく。
まるで生き物のように、こんな自由自在に動く鎖は初めて見た。
だが、対応できないわけではない。
それに―
女性は鎖を投げたあと、俺に攻め込んでくる様子もなくその場から動いていない。
おそらく、この鎖は女性が魔法で操っていて
その鎖の操作に魔力と、全神経を集中させているのだろう。
やはり・・・
攻め込むなら今だな!
ジャリリリリ!!!
俺は鎖を横に避け、ロングソードを抜いた。
そして―
ザッ! ザンッ! ザザンッ!
俺は鎖を斬り刻みながら、女性に向かって走った。
女性は一瞬、ハッっとした表情を見せ、両手の鎖を離し、ナイフを持って構えるが―
遅い!
ダンッ!
俺は女性の首の後ろに手刀を入れた。
「うっ・・・」
女性は気を失うように、その場に倒れた。
・・・すまない。
少し痛い思いをさせてしまった。
俺は女性を抱えて、部屋のベッドに横にした。
一つ確信したことがある。
やはり・・・この屋敷には魔人がいる!
はやく妹を助けて、エミリと合流しなければ!
俺は部屋中を隈なく探した。
クローゼットの中や、鏡の裏、ありとあらゆる場所を探すが・・・
「一体、どこにいるんだ?」
妹の姿はどこにも見当たらない。
もしや・・・すでにこの屋敷にはいないのか?
もしそうだとすれば・・・取返しがつかないぞ。
俺は今まで、リリアを救うために旅をしてきたが
リリアの情報や、魔人の居所は突き止められていないんだ。
・・・どうする・・・
そう考えていると―
「お姉さま・・・助けて・・・」
ん?
今、小さく女性の声が聞こえた。
俺は周囲を見渡す。
「助けて・・・」
再び、同じ声が聞こえた。
下か?
俺は床に手をつけ、注意深く観察した。
ここは一階だが・・・この下にうっすら人の気配を感じる。
だが、かなり床は厚そうだ。
俺は、周囲の床を観察するが・・・下へ続く扉のようなものは見当たらない。
仕方ない・・・今は一刻を争う。
俺は部屋の天井を見上げる。
よし・・・この高さならギリギリ大丈夫だ。
ダンッ!
俺は天井ギリギリまで高く飛んだ。
そして構える。
「雷轟一閃流 ―降雷―」
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオン!!!
俺は部屋の床を破壊した。




