4話 恐ろしすぎる女教官
―教官室―
スライド式のドアを開け、教官室へ入ると
机とイスが辺り一面、びっしりと敷き詰められていた。
学校の規模が大きいだけに教官の数も多い。
いまここにいる教官の数だけで30人ほどはいるだろう。
全教官を合わせると倍近くはいそうだ。
……教官を見ていて思ったが、俺たち生徒は白を基調とした制服を着せられているが、教官はみな黒を基調とした服のようだ。
生徒のように同じ服に身を包んでいるというよりは、教官ごとに服の種類が若干違う。
教官の中でも上下関係や騎士の階級なんかで、分ける必要があるのか、それとも個人の自由なのか……よくわからない。
まあとにかく、学生は白、教官は黒といった具合で判断すればいいということだな。
うん、よくわかった。
ちなみに、なぜ俺は教室ではなく、真っ先に教官室へ来たかというと、3日前に届いた合格通知に、もう一枚、筆で書かれたような筆跡で
「登校初日は真っ先に教官室へ来い、来なければ……」
ただ一文、それだけ書かれた紙が届いたからだ。
読みようによっては、少し脅迫じみた文章ではあるが
学校から届いたものなのでいたずらというわけでもないだろう。
そんな理由でおれは真っ先に教官室へ来たのだが……誰に声をかけたらいいのか……。
俺はキョロキョロと周りを見ていると、窓際の椅子に座っている黒髪の女教官と視線があった。
向こうが、何かに気づいたように俺に手招きをしてきた。
俺は手招きされるまま女教官が座っている机へ向かった。
女教官の前で立ち止まると、教官も椅子から体を起こし立ち上がった。
手紙の送り主はわからないが、相手は教官なのでとりあえず挨拶をしておくことにした。
「えーと、今日この学校に入学した、ユーリ・アレー」
「貴様がユーリ・アレクシスだな、貴様のクラス担当、レイラ・フォルティンだ、よろしく頼む」
名乗り終わる前に言葉を切られてしまった。
第一印象は気の強い女教官、そんな感じだ。
とりあえず返答しておく。
「ああ、よろー」
「オイ貴様、目上の人への口の利き方ってものを知らないのか? あ゛あ゛ん?ガキからやり直してくるか? あ゛あ゛ん?」
そういって俺の額を片手で掴み、アイアンクローをくらわしてきた。
「い、いたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたー」
俺は両手で教官の腕を掴み振りほどこうともがくが、ほどけない。
あー、手紙の送り主は絶対この人だ。
しかもこの人、人の話を聞かない。
い、いや、今はそれどころじゃない。
脳が……潰される!
この人の握力どうなってるんだ?
ほんとに同じ人間なのか?
「……わるい、じゃない……す、すみません」
俺は精一杯知っている限りの口の利き方を示した。
今まで敬語というものを使ったことがないから、慣れない。
なんせシルバーにも敬語を使っていなかった。
強要もされなかったし。
「よーし、とりあえず許してやる」
そういって俺の頭部を破壊する勢いで締め付けていた指に力が抜けていった。
あー、マジで痛かったぜ。
骨格が削れる勢いで痛かった。
この女教官には逆らわないほうがいい。
俺の本能がそう叫んでいた。