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碧眼の神威使い ー奪われた幼馴染を救うため俺は魔人をぶった斬るー  作者: ARU/MERIA
第1章 騎士・魔法師育成学校入学編
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39話 作戦


 屋敷の中に入ると―


 大きなホールに、正面には二階へと続く大きな階段が左右対称に二つ作られていた。


 赤色の高級そうな絨毯が床を一面に覆っており、天井には高級感溢れるシャンデリアがいくつか並んでいた。


 貴族の屋敷の中に入ったのは初めてだったので、俺は呆気に取られながらキョロキョロと周りを見渡していた。


 「書斎はこちらです」


 玄関の扉を閉めたアイラが俺にそう告げた。


 俺はハッと我に返り・・・エミリへ視線で合図をした。


 エミリも俺の合図に気づき、静かに頷く。


 俺は作戦を実行に移した。


 「エミリ・・・あの、トイレを借りたいのだが・・・」


 少々、棒読みになってしまった。


 「ああ・・・それなら・・・そこの通路を真っすぐ、行った先に・・・ある」


 エミリも俺に負けず、棒読みだった。


 ・・・俺たちは、二人そろって芝居の才はないようだ。


 「ああ、わかった・・・俺はトイレを済ませてから、後を追うから・・・先に親父さんの所へ行っててくれ」


 「ああ・・・了解した」


 ぎこちない会話を済ませ、俺は左手の通路に向かって歩き出した。


 ・・・俺はあらかじめエミリから、屋敷の構造を聞いている。


 正面から左手の通路・・・つまりこの先の一番奥が、エミリの妹の部屋だ。



 俺たちの作戦はこうだ―


 まずエミリは父親の所へ向かい、ダルウィン家との結婚話は白紙になったことを報告する。


 そしてその間、俺はトイレに行ったと見せかけ、妹の部屋まで向かい、妹の安否を確認・・・そして救出する。


 妹を安全な所まで送った後、俺とエミリで魔人を叩く!

 

 こういった流れだ。


 失敗は許されない。


 よし、やってやるぜ!


 そう思った矢先―


 「お嬢様、私がこの者をお手洗いの場所までご案内致します」


 アイラがそう口にした。


 な、何だと・・・


 「そ、その必要はない! こ、この者は大丈夫だ!」


 エミリは動揺しながらも必死にそう言った。


 だが―


 「この者は、レンガーデン家の屋敷は初めてのはずです。 屋敷の中で迷われてはいけませんので、私がここの使用人としてご案内致します」


 何とも正当な理由を述べ、アイラは食い下がる。


 「だ、だからその必要はないと言っている!」


 エミリは必死に食らいつくが・・・


 「なぜ必要ないのでしょうか? 理由を説明してください」


 アイラは虚ろな目を向け、淡々とエミリへ問いかける。


 ・・・完全に怪しまれているな。


 どうする・・・どうすれば・・・。


 俺がそう考えていた所で、エミリはとんでもない地雷を踏んだ。


 「理由ならある! この者にはあらかじめ、この家の間取りを説明してある! だから迷うということは・・・!!!」


 そう言った所で、エミリはハッとした表情をこちらに向けた。


 な、何を言っているんだ。


 たとえ友人であっても、自分の家の間取りをわざわざ教えることなんて・・・普通はないと思うんだが。


 「お嬢様、どうしてこの者にレンガーデン家の間取りを説明する必要があるのでしょうか?」


 「い、いや・・・そ、そそ、それはだな・・・」


 エミリは顔面蒼白で、ひどく動揺していた。


 「それは・・・何でしょうか?」


 アイラは虚ろな目でエミリを見つめる。


 ・・・どうする。


 いっそ、アイラをここで気絶させるか?


 いや、ダメだ。


 こんな屋敷に入ってすぐの場所で物音を立てれば、騒ぎになり、魔人に気づかれる。


 考えろ、考えるんだ。


 この状況を切り抜ける方法を・・・何か・・・。


 俺は必死に思考を巡らせていると・・・


 エミリは再びとんでもないことを、意を決したように大声で言った。


 まるで顔から火が出るかのように頬を真っ赤にさせて。


 「こ、この男とは!!! 将来を誓いあった仲・・・こ、ここ、恋人なのだ!!! しょ、将来の夫に、自分の家の間取りを教えることくらい、ふ、普通のことだろう!!!」


 ・・・ろう・・・ろう・・・ろう・・・


 屋敷中にエミリの言葉がこだまするように、響き渡った。


 「#$%!!!」


 な、何てことを言いやがるんだ!


 あまりの衝撃に、上手く言葉が出せなかったぞ・・・


 そして、エミリは俺に視線を合わせて


 「な、なあ・・・そ、そうだよな!」


 と、強引に同意を求めてきた。


 その時、エミリは視線で俺に合図をしてきた。


 その合図でエミリが何を言いたいのか伝わった。


 なるほど・・・そういうことか。


 俺はエミリに口を合わせた。


 「あ、ああ! そうだな! つ、妻の実家について知っておくことは、お、夫の務めだからな!」


 演技とはいえ、自分でもわかるくらいに照れが生じてしまった。


 妻やら夫やらと、普段口にすることなんてない。


 まして、自分がそんな立場になるなんて想像もしたことないし、そもそも未知の世界すぎて想像すらできない。


 「そ、そんな・・・妻だなんて・・・へへへ・・・」


 エミリはなぜか締まらない顔に、両頬に手を置いて体をもじもじさせていた。


 ・・・エ、エミリさん?


 演技だよな?


 すると、アイラは―


 「お嬢様、ダルウィン家との結婚話はどうなったのでしょうか?」


 アイラはそんな疑問を投げかけていた。


 エミリは、緩んだ顔をシュッと引き締めて答える。


 「そ、そうだ! その件で今日はお父様に報告があって帰ってきたのだ!」


 アイラは、数秒の間を置き口を開く。


 「・・・さようでございますか」


 「ああ、だからこの者はよいから、お父様の所へいくぞ!」


 エミリは強めの口調でそう言って、アイラの背中を押した。


 「・・・かしこまりました」


 アイラはエミリに背中を押されて、階段へ足をかける。


 エミリは顔だけこちらに振り返り、俺たちは頷きあった。


 ・・・何とか、これで作戦に移せそうだ。


 なんだか、いろいろあってすでに疲れてしまったんだが・・・。


 だが、そんなことは言っていられない。


 妹の部屋に向かわなくては!


 俺は気を引き締め、通路へ向かって歩きだした。


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