38話 使用人
俺とエミリは学校の正門に到着した。
それから、数分後―
「待たせたね」
アランはテレポートを使って、俺たちの目の前に瞬時に現れた。
「なっ・・・」
アランは両手に馬の手綱を握り・・・後ろに二頭の馬を連れていた。
馬ごとテレポートさせてくるとは・・・。
俺は驚きを隠せず変な声が出てしまった。
「さあ、二人とも・・・これを持つんだ」
そう言って、アランは俺たちに手綱を渡してきた。
俺たちはそれを手に取り、馬に乗った。
「すまない、僕も君たちについていってあげたいのだけど・・・生徒会業務が山積みでね」
アランは申し訳なさそうにそう言った。
何を言っているんだ。
「この馬を手配してくれただけでも十分だ! ありがとう!」
「恩に着ます、アラン会長」
俺たちはアランにそう言った。
「君たちの無事を祈っているよ」
アランは微笑み、そう言った。
「ああ!」
俺たちは、アランを背に、エミリの屋敷へと向かった。
エミリの屋敷へと向かう中、俺はエミリから屋敷の構造なんかを聞いていた。
そしてある作戦を立てた。
そして―
PM―16:00
エミリの屋敷のすぐそばまで到着した。
近くの木に、馬の手綱を結びつけ、俺たちは屋敷の正門まで歩く。
そして、屋敷の正門に立った。
正門は鉄格子でできており、入り口は固く閉ざされていた。
鉄格子の間から、中が見えるのだが―
エミリの屋敷は・・・言うまでもなく・・・かなり大きかった。
大きいという表現はかなりざっくりしているが・・・
高さは2階建てで、あまりないのだが、横にかなり広い。
エミリから聞いた話でも、部屋の数だけでも20はあると言っていた。
なぜ、貴族の人たちはこんなにも大きな家を建てたがるのか・・・
・・・平民の俺には理解できない。
それに、これは庭と言っていいのだろうか?
正門から、屋敷までの距離までは軽く50mはあり、通路以外はすべて芝生だ。
中央には大きな噴水があり、周りは花が植え付けられている。
噴水に、芝生に、花と・・・これは、貴族の中ではお決まりなのだろうか?
俺は少し呆気にとられながらそんなことを考えていると、隣のエミリが俺の顔を覗き込んでいた。
「ユーリ・・・どうかしたか?」
「いや、何でもない・・・」
俺は一度、大きく深呼吸をした。
「よし、行くか」
「ああ」
そう言って、エミリが正門につけられているブザーを鳴らす。
そして、数秒後―
玄関から、一人の女性が歩いてこちらに近づいてきた。
屋敷の使用人だろうか?
その女性は、エプロンドレスを着ており、髪色は銀髪で、後ろで結んでいる。
背丈もスラっと高く、表情も大人びており、落ち着いた雰囲気をかもしだしていた。
なんというか、この屋敷にとても合っている、気品溢れる印象だった。
その女性は俺たちの向かい側まで来ると、無表情のまま淡々と口を開いた。
「お帰りなさいませ、エミリお嬢様・・・旦那様は書斎におられます・・・どうぞ中へ」
そう言って、その女性はボタンを押して、正門の入り口を開けた。
「アイラ・・・サラは元気でやっているか? ・・・お父様に会う前に、サラに会いたいのだが」
エミリはそう言うも・・・
アイラにはエミリの声が全く届いていないようだった。
そしてどこか、目が虚ろだ。
アイラは続けて淡々と同じことを繰り返す。
「旦那様は書斎におられます・・・どうぞ」
・・・やはりか。
「アイラ・・・あなた―」
「ま、まあ、とにかく中に入ろうぜ! 親父さんは書斎だとさ」
俺はエミリの言葉を切り、エミリの背中を半場強引に押す。
「あ、ああ・・・」
俺たちはここに来る前、エミリとこう話していた。
屋敷の人間は、信号を送っている妹以外・・・全員魔人に操られていると仮定して動く。
もちろん、それを魔人には悟られないように、俺たちは振る舞う。
もし、魔人に気づかれ、万が一にも妹の身に何かあってはいけない。
・・・妹はまだ生きているんだ。
そう思える理由は・・・ここに来るまでも、エミリの魔法具に何度か信号があったからだ。
信号を送るには魔力を込めなくてはいけない。
大丈夫・・・きっと無事だ。
とにかく、俺たちは平静を装って行動しなければならない。
俺は気を引き締め、正門をくぐろうとすると―
「お嬢様・・・この者はお通しすることができません」
・・・アイラに止められた。
「なぜだ? この者は私の友人だぞ」
エミリがそう言うも―
「旦那様のご意向です・・・この屋敷の者以外・・・屋敷の中に入れるなと命じられております」
アイラは虚ろな目を向けながら、淡々とそう告げる。
「何だと? 礼節を重んじるお父様に限って・・・客人を門前払いするような・・・そんな指示をするはずがない・・・何かの間違いだ」
エミリは少し強めの口調でそう言った。
だが―
「間違いではありません・・・旦那様の意向です」
まるで感情がこもっていないような声色で、アイラは淡々と同じことを続ける。
そんなアイラに、エミリは怒りを覚えるように、鋭い眼光を向けた。
「・・・いつからレンガーデン家は・・・客人すら持て成すことが出来ないような、そんな礼儀に外れた家柄に落ちぶれてしまったのだ!」
エミリは大声でそう言った。
その瞬間、屋敷の方からギラリと光る、ある視線を感じた。
俺は反射的に視線を向けるが・・・姿は確認できなかった。
あの歪な視線・・・魔人か?
「私が直接お父様に断りを入れる! アイラ・・・ここは私の指示に従え!」
エミリはアイラに続けてそう言った。
アイラは無表情のまま、数秒の間を置き・・・口を開く。
「・・・承知いたしました」
・・・なんとか入れそうだ。
俺たちはアイラの後ろに続き、屋敷の中に入った。




