36話 勧誘
*ロミオ*
アラン会長の声でユーリも視線を向ける。
「さきほどの剣術・・・僕の見立てでは・・・古くから伝わる、古流剣術の一つだと思うんだけど・・・どうだろうか?」
アラン会長がユーリへ疑問を投げかけた。
「古流・・・剣術?」
僕は、気づかぬ間に声が漏れていた。
そして、隣のエミリさんが口を開き、僕はエミリさんへ目を向ける。
「古流剣術・・・私も詳しいわけではないのだが・・・あまりの習得の難しさに、現代ではそれを使えるものは、わずか数名だと聞いている・・・」
「そ、そうなんだ・・・そんな剣術を・・・ユーリが・・・」
僕はユーリへ再び視線を戻した。
「だっだら、何だってんだ?」
ユーリはアラン会長へそう答えた。
アラン会長は少し笑顔を見せて続ける。
「やはりそうか・・・しかも君が使った、雷轟一閃流・・・僕が知っている限りでは・・・7つある古流剣術の中で最速のスピードを誇る流派だね。 だから、リギル君を吹っ飛ばしたあの時・・・剣を抜き、振りかぶる君の動作が・・・目で追いきれなかった」
アラン会長は、やれやれといった具合に両手を広げた。
僕の中で、今までユーリが異次元の速さで動いていた理由が少しわかった気がした。
教室でも中庭でも、マクルド君との戦闘時、ユーリのあまりの速さに、誰も目で追うことが出来なかった。
これは、ユーリがこの、雷轟一閃流という古流剣術を習得していたから・・・あのような素早い動きが出来たんだ。
・・・どちらにしても、人間離れしていることに変わりはないんだけど。
それにしても、アラン会長でも目で追うことが出来ないなんて・・・ユーリはそんな剣術を・・・一体どこで・・・。
アラン会長は続けて口を開く。
「それに古流剣術は、一流の騎士でも習得するのに最短でも10年はかかると言われている・・・それどころか習得できずに生涯を終える人の方がほとんどと聞いているんだけど・・・君はわずかその年で・・・それを習得しているというのか・・・」
すると、アラン会長は何やら不気味な笑みをこぼしながら声を上げた。
「すごい! すごいよ、ユーリ君! 僕は君のような人材を待っていたんだ!」
そういった次の瞬間―
アラン会長はユーリの目の前まで一瞬で移動した。
「なっ」
ユーリも、目の前にいきなりアラン会長が現れて驚いている様子だった。
そして、アラン会長はユーリの両肩を掴み―
「ユーリ君! 会長権限で君に命ずる! 僕の生徒会に入ってくれ!!!」
アラン会長はそんな言葉を口にしていた。
「・・・はっ?」
ユーリはポカンとした表情を向けていた。
「おい、あの一年は平民なんだよな? 平民が生徒会メンバーに入るなんて、前代未聞なんじゃ・・・」
「そ、そうですよ会長! 由緒あるこの学校の生徒会に・・・平民をどうして・・・」
そんな言葉はアラン会長にはまるで届かず、ユーリに向かって口を開いていた。
「ユーリ君! ぜひ僕の生徒会に―」
「いやいや! それは聞こえてるんだが! どうして、俺が生徒会に入らないといけないんだ?」
ユーリはアラン会長の手を振りほどき、後ろへ下がった。
アラン会長は不思議そうな表情で口を開く。
「さっき言ったじゃないか・・・僕は君のような人材を待っていたって」
「だから! そういうことじゃなくて! 俺が生徒会に入らないといけない理由を説明してくれって言っているんだよ!」
アラン会長はフーと一呼吸置き、口を開く。
「やれやれ・・・話すと長くなるんだが・・・いいのかい?」
ユーリは慌てたように両手を前に出して―
「いや、よくない! そもそも俺には特級騎士になってS級クエストに行くという目的があるんだ! 生徒会に入る余裕はない!」
きっぱりとそう言った。
「なるほど・・・ユーリ君は特級騎士になりたいのか・・・だったら、僕と取引をしないかい?」
「取引だと?」
「ああ、君が僕の生徒会に入ってくれるのなら・・・僕は全力で、君が特級騎士になれるようにサポートしよう・・・もちろん、クエストにだって協力するし・・・君が望めば、僕はいつだって君の剣の相手をしようじゃないか! どうだい?」
ユーリは考えるように顎に手を当てて、下を向いた。
・・・。
そして数秒後、ユーリは顔を上げて口を開く。
「いや、その取引は必要ない! 俺はエミリとパーティーを組んだし、A級クエストにも行ける! 剣の相手というのは・・・魅力的な話だが・・・」
そう言うと、ユーリは邪念を振りほどくように頭をブンブンと揺さぶって―
「やはりこの話は―」
「だったら! 僕とも決闘をしないかい?」
アラン会長はユーリの言葉を切るようにそう言った。
「なにっ・・・」
隣のエミリさんは少し怪訝な表情をしていた。
「アラン会長と・・・あの下級騎士が決闘だと?」
「いくら、リギルさんを負かしたからって・・・会長はこの学校を代表するトップの実力者だぞ」
「いやでも! あのさっきの剣術は凄かった! 速すぎて何が起こったのか分からなかったし! もしかしたら、アラン会長にだって・・・」
周りから様々な声が聞こえてきた。
「決闘・・・」
ユーリは呟くようにそう言った。
「ああ、君が勝てば、今後僕は君を生徒会には誘わない・・・だが、僕が勝てば、ユーリ君には生徒会に入ってもらう・・・どうだろうか?」
ユーリは少しだけ考えるように間を置いて、口を開く。
「ああ、それなら―」
そう言った所で、僕の隣に立っていたエミリさんが二人の間に瞬時に移動していた。
そして、ユーリを背中に、アラン会長に向けて口を開いた。
「アラン会長・・・いくら何でも、強引ではありませんか? ユーリは決闘を終えたばかりですよ・・・それに、ユーリが勝った所でユーリにはあまりメリットがないではありませんか」
「君は・・・二年のエミリ・レンガーデン君だね・・・もちろん、今すぐというわけではないさ・・・それに、決闘といっても、剣の打ち合いではなく、簡単なゲームのような物でも何でもいいよ・・・内容は君たちに任せよう」
アラン会長は、笑顔を向けてそう言った。
「いや、そうは言っても―」
エミリさんはそう言った所で、自身の首にかけている魔法具に目をやった。
「えっ? ど、どうして・・・」
エミリさんは少し動揺しながら、その魔法具を服の中から出した。
すると、その魔法具は赤色にキラキラと光り輝いていた。




