35話 決闘③ 決着
*ロミオ*
ユーリの周りに発せられた雷の光で、僕を含め観客席にいる生徒は一斉に目を閉じる。
そして、目を閉じた瞬間―
ダンッ!!!
っと、もの凄い速さで何かが結界を突き破り、観客席へ飛んで行った。
僕は瞬間的に目を開け、音の先へ視線を向ける。
だけど砂煙が舞っていて・・・よく見えない。
周りの生徒たちも、次々と目を開け、音がした観客席を注視していた。
「・・・何が・・・起こったんだ?」
「わからねえ・・・あの下級騎士の周りに・・・雷が走ったのは・・・見えたんだが・・・」
周りからそんな声が聞こえ―
「そうだ・・・ユーリ!」
僕はハッとユーリの方へ視線を向けた。
僕の声で周りの生徒たちもユーリへ視線を移す。
ユーリの周りにも砂埃が舞っているが・・・数秒後には砂埃が消えた。
あれは!
ユーリはその場から動いておらず、剣を振りかぶった状態で立っていた。
・・・ということは、あの飛んでいったのは―
僕は再び、音のした観客席の方へ視線を移した。
すると、そこには・・・白目を向いて倒れているリギルさんの姿があった。
そして、周りの生徒たちもそれに気づき、次々と声を上げ始めた。
「お、おい、あそこで倒れているのは・・・リギルさんじゃねえか・・・」
「マジかよ・・・あの下級騎士・・・あの状況から、リギルさんをあそこまでぶっ飛ばしたのか」
「しかも・・・結界をぶち破って・・・」
などど、驚愕の声が上がった。
そして―
「お、おい・・・あの下級騎士の周りの・・・あれは何だ?」
誰かのそんな声で僕はユーリの周りを注視する。
・・・え?
ユーリが剣を振った軌道上・・・つまり・・・雷が走った所の地面が・・・ゴッソリとえぐれていた。
ユーリが剣を振った衝撃で・・・地面がえぐれた?
そんなことが・・・あり得えるの?
そして、次の瞬間―
ユーリが持っている模造刀が、ボロボロと崩れ始めた。
そ、そんな・・・
模造刀があんな風になるなんて・・・
ユーリは振りかぶった姿勢を戻し、崩れていく模造刀を見つめていた。
「すまないな・・・」
ユーリはボソッとそんな言葉を口にした。
そして―
ユーリの足元に広がっていた大きな魔法陣と、周りの結界は音もたてずに消えた。
結界が消えたタイミングに合わせて、ユーリの前に教官が現れる。
そして、教官は驚いた様子を隠せず、ユーリと観客席で伸びているリギルさんを交互に見つめて、数秒の間を開けて口を開く。
「しょ、勝者! ユーリ・アレクシス!」
教官がユーリの勝利を告げた。
・・・。
だけど、誰も声を発さずに沈黙の間が流れる。
だが―
「す、すげえ!!!」
そんな誰かの一声で、観客席は一斉に賑やかな声を上げ始めた。
「「うおおおおおおおおおおおおおお!!!」」
「すげえ!!!」
「あの下級騎士は一体何者だよ!」
「かっこいいわ!」
場内は、ユーリを祝福する声で溢れかえった。
僕は、エミリさんの所に向かった。
「エミリさん! ・・・ユーリが!」
僕は、驚きと嬉しさが頭の中でごちゃ混ぜになりながらも、エミリさんに声をかけた。
「ああ・・・そうだな・・・」
エミリさんは、涙で頬を濡らして、体を震わせていた。
よかった、僕が言おうとしたことは伝わったようだ。
そして、エミリさんは続ける。
「本当に・・・ユーリは・・・大した男だ・・・私はもう・・・完全に・・・お前のことが・・・」
エミリさんは顔を赤くしながらそう言った。
「・・・エミリさん?」
「い、いや・・・何でもないんだ」
「うん」
エミリさんは取り繕うようにそう言った。
だけど僕には、エミリさんの気持ちがわかってしまった。
ユーリはリギルさんの魔の手から、エミリさんを救った。
しかも、リギルさんに卑怯な手を何度使われても・・・ユーリはそれをねじ伏せ、正面から正々堂々と勝利したんだ。
そんな、自分の為に一生懸命に戦う姿を見せられたら・・・きっと誰だって同じ感情を持つだろう。
それは・・・僕も同じ。
・・・って、何を考えているんだ僕は!
僕は思考をかき消すように頭をブンブンと振った。
そして、ユーリの方を見つめると、ユーリも僕たちを探すようにこちらを見回しており、数秒後、僕たちは視線が合い、ユーリがこちらに気づいた。
そして、ユーリはこちらに拳を掲げて、ニコっと笑った。
僕たちもそれにこたえるように笑顔を向ける。
そうしていると―
「いやいや、驚いたよ・・・ユーリ君・・・只者じゃないとは思っていたけど・・・ここまでとは」
一瞬の内に、アラン会長はユーリの前に現れ、拍手をしながら口を開いていた。




