32話 クエスト勝負⑤ 決着
*ロミオ*
勢いよく開いた扉の先には、僕たちの待つユーリの姿があった。
「時間ギリギリになっちまったが、まだ大丈夫だよな?」
「「ユーリ!」」
僕とエミリさんは同時に叫んだ。
良かった。
見たところユーリに怪我は無さそうだ。
僕は安堵して同時に笑みがこぼれた。
ユーリは僕たちとリギルさんの方を見て、口を開く。
「って、何でお前たちがこいつといがみ合ってんだよ! こいつの相手は俺だろ!」
ユーリがそう言うと、リギルさんもニタニタと笑いながら話す。
「ふふふ、よくここまで帰ってこれたものだね。 催眠魔法 ―ヒプノテイシス― を解いたのか……まあそれでも、結果は見えているがね」
「それだ! てめえ、その催眠魔法のせいで、俺がどれだけ大変な目にあったか! てめえには言いたいことがいろいろあるんだ! 今からそっちに行くから待ってろ!」
ユーリはそう言って、ギルドの中へ足を入れた。
……のだけど
「あ、あれ?」
ユーリが背中に背負っている何かが、ギルドの扉に引っ掛かり、ユーリは身動きが取れなくなった。
「は、入れねえ! なあロミオ、エミリ、俺を引っ張ってくれ!」
そう言って、ユーリは僕たちに向かって手を伸ばす。
「ああ!」
「うん!」
僕たちはユーリの手を引っ張り、強引にユーリをギルドの中へ入れる。
ガシャン!
「!!!」
すると、ギルドにいた人たちが、ユーリを見て次々に驚愕の声を上げた。
「お、おい、あいつが背負っているあの羽根は……」
「S級指定モンスターの……キマイラのものじゃないか?」
「う、嘘だろ、下級騎士なんかにS級モンスターを倒せるはずがねえ」
次々に声を上げる中、リギルさんも動揺を隠せずにいた。
「お、おい平民、そんなものどこで拾ったんだ?」
するとユーリは何食わぬ顔で
「拾ったんじゃねえよ。マルデリッツ山でブラックウルフを狩ってたら、こいつが空から飛んできたから、ついでに倒しただけだ」
ユーリは平然とそう言った。
ユーリは背中に、キマイラの羽根を織り込んで作った大きな袋を背負っていた。
ぱっと見ても、おそらくキマイラ5頭分の羽根を使って、袋状にしているようだった。
「う、嘘をつくのはやめたまえ……。S級モンスターは、特級クラスにしか手が付けられない相手だ。君のような下級騎士では到底―」
「お前らが言う魔物のランクは知ったことではないが、俺は嘘なんてついてない。それよりも勝負はこっちだろ!」
そう言ってユーリはその大きな袋を背中からおろして、机の上に中身を出した。
すると―
ジャラララ
っと、大量の真紅の鉱石が袋から溢れ出た。
「な、なに……」
リギルさんと、そして周りの人たちも驚愕している様子だった。
「さあ、計測しようぜ!」
っと、ユーリは言うけれど……
すでにリギルさんの鉱石を見ている僕たちからすれば勝敗は一目瞭然だった。
ユーリは一人でクエストに行ったにも関わらず、リギルさんの倍以上の鉱石を持って帰ってきていた。
つまり、ユーリは600体以上のブラックウルフを一人で討伐したんだ。
只者じゃないということは知っていたけれど、
僕の想像以上にユーリは、とんでもない人なのかもしれない。
それこそ、特級クラスの人たちと肩を並べられるくらいに……
「ユーリ……」
エミリさんは少し涙ぐみながら、ユーリの名前を呟いていた。
「ユーリ、俺は心からお前に敬意を表する」
カイさんもクールな笑顔でそう言った。
「やった、ユーリの勝ちだ!」
僕は嬉しくて、ついそう叫んでしまった。
そして、僕の声に共鳴するように、周りの生徒たちも次々と声を上げた。
「す、すげえ! あの下級騎士、上級騎士のリギルさんを負かしやがった!」
「それだけじゃねえ! ブラックウルフをあんなにも……本当に下級騎士なのかあいつは!」
「か、かっこいい……」
など様々な声が聞こえてきた。
そして、ギルドの中はユーリを祝福するようなムードで溢れた。
だけど―
「黙れえええええええええええええええ!!!」
そんなムードを壊すように、リギルさんが大声を上げた。
リギルさんの声で、周りはピタッと静まり返る。
そして、リギルさんはまるで人が変わったかのように、先ほどまでのニヤケ面は完全に消え
怒りをあらわにして鋭い眼光をユーリに向けている。
「おい……平民の分際で、この私にイカサマをするとはいい度胸だ」
「何を言ってるんだ? 俺はイカサマなんて―」
「黙れ! 貴様は上流貴族である、この私との勝負で不正を働き、周囲の前で、私の顔に泥を塗った。 これは……死罪に値する!」
するとエミリさんが口を挟んだ。
「見苦しいぞリギル! 勝負はついた! ここにいる誰がみても見ても、お前の負けだ!」
リギルさんはそんなエミリさんの言葉を無視して、ユーリへ向けて宣言した。
「おい平民……私は貴様に……決闘を申し込む!」
リギルさんは指を指し、ユーリへ宣戦布告した。
「なっ、そんなことは私が許さない! もともと貴様がクエストで勝負をつけようと言ったのではないか! それなのに―」
エミリさんの口の前にユーリが手を置き、言葉を切る。
「ユーリ」
そして、ユーリはエミリさんに視線で合図し―
「ああ、いいぜ! このまま話あった所でどうせ解決しないだろうしな。 てめえとの決闘、受けてやる!」
ユーリは声を上げて、決闘を受けた。
その時、一瞬だけリギルさんは不敵な笑みを浮かべた。
「いい返事だ。それじゃあ明日、学校の昼休みに闘技場に来い」
「ああ」
リギルさんは先ほど同様に、ニヤケ面に表情を戻す。
「ふふふ、逃げるんじゃないぞ」
「それはこっちのセリフだ」
「どこまでも私をイラつかせる平民だ……。貴様には、全校生徒の前で、今まで味わったことがないような屈辱と絶望を味合わせてやる。ふふふ、楽しみにしておけ」
そう言って、リギルさんと連れの人たちはギルドを後にした。




