31話 クエスト勝負④
*ロミオ*
―翌日―
AM―11:30
僕とエミリさんは制限時間より少し早めにギルドに行き、ユーリの帰りを待っていた。
ギルドの中には昨日よりも多い、100人ほどの生徒が集まっていた。
みんな、勝敗の行方が気になって来たのだろう。
ユーリはマクルド君を倒したことで、1年の間ではすでに有名人だから。
そして、クエストボードの近くには、2年の上級騎士のカイさんの姿もあった。
立っている姿も決まっていて、女子に人気が出るのも納得といった佇まいだった。
それはそうと、僕はユーリが心配で昨夜はあまり寝付けなかった。
僕はエミリさんに、魔法具に信号があれば知らせてもらうようにお願いしていた。
だけど、今までエミリさんにも、そんな信号は送られてこなかったようだった。
僕はユーリが心配で自然と俯いてしまった。
「ロミオ、大丈夫か?」
僕を心配して、隣に立っているエミリさんが声をかけてくれた。
「は、はい……どうしても、ユーリが心配で……」
「そうだな……。だが、私たちに出来るのはユーリを信じることだけだ。それに奴は、私を負かした唯一の男だ。きっと大丈夫」
エミリさんは僕を元気づけるように笑った。
「そうだね……ユーリならきっと大丈夫だよね」
そう言って、僕たちは笑顔を向けあった。
その時―
ダンッ!
と、ギルドの扉が勢いよく開いた。
「ユーリ?」
僕は自然と声が漏れた。
だけど、僕の期待は裏切られ
立っていたのはリギルさんだった。
そして、リギルさんは後ろに4人ほど連れており、みんな両手に大きな袋を持っていた。
そして、ニヤニヤと笑いながらこちらに近づいてくる。
「ふふふ、あの平民じゃなくて残念だったね。まあ、どれだけ待った所で、あの平民はここに帰ってくることすら、出来ないだろうけどね。なあ、みんな?」
リギルさんがそう言うと、後ろの4人が笑い出した。
「おい、どういうことだ」
エミリさんが覇気を込めてリギルさんに問いかける。
「どうって、そのままの意味だよ? い~や楽しみだな~、あの平民の悔しそうな顔を想像するのは……ふふふ、ふははははは」
「貴様もしや、ユーリに何かしたのか!」
「いいや、私は何もしていないよ。私はね」
僕は、ふと昨日のことを思いだした。
「そ、そんな……」
「どうしたんだ、ロミオ」
昨日、ユーリがギルドのドアを握ったとき、一度すぐに離した。
ユーリは何ともないと言っていたけど
明らかにあの動きは不自然だった。
魔法陣は見えなかった。
だけど、きっと、
この人たちが、何か魔法を仕込んでいたんだ。
「僕のせいだ……あの時……僕が気づいていれば」
僕は悔しさのあまり、自然と涙が出てしまった。
それと同時に、激しい怒りがこみ上げてきた。
許せない……
この人たちと……それに気づくことが出来なかった情けない自分が……
「ロミオ、一体どうしたというんだ? あの時というのは―」
「ふふふ、まあたとえあれがなくても、私が勝つことには変わりないんだけどね」
そういって、リギルさんと後ろの人たちは手に持っていた大きな袋を机に置いた。
そして、その袋を一斉に裂き中身を出した。
机の上には、真紅の鉱石がおよそ300個ほど置かれていた。
「何……だと……」
エミリさんは動揺していた。
でも、当たり前の反応だった。
ブラックウルフというのは、A級指定モンスターで、上級クラスでも苦戦する相手だ。
そして、ブラックウルフが3体集まれば、S級指定モンスターと同格の危険度になり、上級騎士であっても、一人では決して挑まないようにと学校でも教わっているほどだ。
そんなブラックウルフを300体も……。
「これでわかったかな? どうあがいたって、あの平民が私に勝つことなんて、最初からあり得ない話なんだよ」
リギルさんはそう言った。
だけど2つ、不可解な点があった。
クエストに行っていたリギルさんだけではなく、後ろに立っている人たちも、袋を持っていた。
それに、その人たちも砂埃などで、みな服が汚れている。
ま、まさかリギルさんは、一人ではなく、この人たちとクエストに行ったのではないだろうか?
そう考えたのはエミリさんも同じだったようで―
「おい貴様、なぜ後ろにいる奴らも袋を持っていたんだ?……まさか、こいつらにブラックウルフ討伐を協力してもらったのではないだろうな?」
エミリさんがそう言うと
「ふふふ、君は何を言っているんだい? ここにいる奴らは私のパーティーメンバーだよ? もちろん……ふふふ、一緒にクエストに行ったに決まっているじゃないか!」
リギルさんは、堂々とそんな言葉を口にした。
「な、何だと! それでは勝負にならないではないか! ユーリはたった1人でクエストに行ったんだぞ!」
「私は初めから、1対1の勝負とは言ってはいなんだがね。 にもかかわらず、自分から1対1の勝負に持ち込むなんて、ふふふ、何とも騎士の道にそった、立派な心がけじゃないか~。 バカ正直すぎて、笑いが、笑いがとまならによ、ふははははははははははははははははは」
リギルさんは、本性を現したかのように、下品な笑い声をあげた。
「き、貴様あああああああああああ!」
エミリさんが叫び、腰に携えている剣を握った。
「エミリさん、ダメだよ!」
僕はエミリさんを止めた。
「離せロミオ! 私は我慢の限界だ! 許婚だろうがどうでもよい、ここで斬ってくれる!!!」
「ふふふ、私は構わないよ。 今後の為にもここらへんで、ご主人様が誰なのかということを君の体に教え込んでおくのもいいだろう。 こいつらと共にね」
そういって、リギルさんの後ろに立っている人たちが、前に出てきた。
「言っておくが、こいつらはみな私と同じ上級騎士だ。 いくら君が学校一の剣術使いと言われていても、5人を相手に1人で、はて、一体どこまで持つかな? ふふふ」
「くっ……」
エミリさんは、悔しそうに唇を噛んだ。
すると―
「これで5対2だ」
そう言って、颯爽とカイさんが僕たちの前に現れた。
「カイ……」
カイさんはエミリさんへ視線で合図する。
「さあ外道ども、表に出ろ。俺も……我慢の限界だ!」
カイさんは怒りをあらわにしながら、剣を鋭く抜いた。
それに合わせるように、エミリさんも剣を抜く。
「ふふふ、私の後輩はなぜこんなにも頭の悪い子たちばかりなんだい? 仕方ない、今日は特別に、先輩である私から君たちへ ‘‘恐怖‘‘と‘‘絶望‘‘ を与えてあげよう」
リギルさんがニタニタと笑みを浮かべてそう言ったところで―
ダンッ!
ギルドの扉が勢いよく開いた。




