27話 一体何なんだ?
「よし、明日の勝負……絶対に勝つぞ!」
俺はぐっと握り拳を作った。
負けるつもりは微塵もないのだが、エミリの話を聞いて
ますます負けるわけにはいかなくなった。
「だが、リギルは正面から正々堂々と勝負をするようなタイプではない。何かしら卑怯な手を使ってくるかもしれないぞ」
エミリは心配そうな表情でそう言った。
「たとえどんな手を使ってこようが、負けていい理由にはならねえ。奴が何を仕掛けてきようが俺は絶対に勝つぜ!」
俺は気合を入れるように立ち上がった。
「ユーリ……ああ、そうだな! 私にできることなら何でも言ってくれ!全力でサポートする!」
エミリも立ち上がりそう言った。
「僕も! ユーリ、僕にできることならなんでも言ってね!」
そう言って、ロミオも立ち上がり、みんな揃って机を囲んで立っていた。
俺たちは顔を見合わせ、同時に机の上で拳を合わせた。
そして、再び顔を見合わせて、俺たちはニシっと笑いあっていた。
「もうこんな時間か、私はそろそろ帰るとしよう」
時計を見ると、20時を回っていた。
たしか、寮は21時が門限って言っていたな。
ここから、5分くらいで着くから、門限には間に合いそうだ。
俺たちは玄関まで行き、外を覗くと、外は暗闇に包まれていた。
暗闇を照らすわずかな光は、等間隔にある街灯りと月明りのみだ。
「寮まで送っていこうか? 夜はどんな奴がうろついているか分からないしな」
俺はエミリの身を案じ、そう言った。
こんな暗闇に一人で帰すのは、少し心配だった。
「ありがとう、だが大丈夫だ。私はこう見えても上級騎士、不逞の輩がいれば、その場で斬ってくれる。……それに私のような可愛げのない女にそのような心配は無用だ」
エミリは苦笑いをしながらそう言った。
……本気で言っているのだろうか?
俺は思ったことをそのまま口にした。
「何を言ってるんだ? エミリは十分キレイじゃないか、もっと自分の魅力を自覚した方がいいぞ」
エミリは10人いれば10人全員が口を揃えて‘‘美人‘‘と答えるくらいに顔が整っている。
それに、スタイルもいい。
それを自覚せずにいるというのは不用心というか、危険だ。
すると、エミリの顔はみるみる内に赤くなっていった。
「な!? ななな、何を言っているんだ貴様は!」
「何って、そのままの意味だが」
なんか、デジャブだな。
「そ、そんなにも、ス、ストレートに、キ、キレイだなんて、へへへ……じゃなくて! き、貴様は、そんなにも、私のことが……%#……なんだな!?」
笑ったり、怒ったりと忙しいやつだ。
それに後半よく聞こえなかった。
「なあ、もう一回言って―」
「そ、そうか、貴様の想いは固まっているのだな」
……。
エミリは完全に自分の世界に入っているようだ。
俺の言葉がまるで届いていない。
「なあ、さっきから何を―」
「だが、私たちは今日会ったばかりだ。私は貴様のことを何一つ知らない。だから、これから少しずつお互いを知っていって、それから正式に返事をしたいと考えているのだが……ど、どうだろうか?」
……。
「ああ、そうだな」
「わ、わかってくれたか!」
「ああ」
俺はエミリの背中を押して、玄関の外へ出した。
「一人で大丈夫そうだから……また明日な!」
「お、おい、待て! 貴様、どういう―」
ダンッ!
俺はエミリの言葉を切るように玄関のドアを閉めた。
「はぁ~、一体何だってんだ……なあロミオ」
俺はロミオへ視線を向けると……
ロミオは虚ろな目で、こちらを見ていた。
「ユーリはスタイルがよくて、キレイな人が好きなんだね」
「ど、どうしたんだよ、ロミオ」
何やらロミオの様子がおかしい。
というかその目……
めちゃくちゃ怖いんだが。
「別にどうもしてないよ……ははは」
「いやいや、明らかにどうかしてるだろ!」
「いいや、何も……ははは」
ダ、ダメだ
ロミオがまるで壊れた機械のようになってしまった。
エミリといい、ロミオといい
一体何なんだ。
俺は深いため息をついた。




