25話 賑やかな晩飯
俺はリビングのイスに座り、晩御飯を待っていると
キッチンからロミオとエミリの会話が聞こえてきた。
というのも、リビングとキッチンの間には特に壁があるわけでもない。
俺が聞き耳を立てずとも、勝手に話し声は聞こえてくるというわけだ。
「ロミオ君、私たちもお互い、気を遣わずにタメ口で話さないか?」
「え、えっと、でもエミリさんは僕より年上ですし……」
「私たちは同じパーティーメンバーじゃないか! 確かに、名乗りもせずに無礼を働く輩は好かんが……私が良いと言っているんだ。どうか、気を遣わず話してくれると、私もありがたい」
ロミオは少し考えるように間を開け、照れ臭そうに口を開く。
「う、うん。わかった、エミリさん」
「ありがとう、ロミオ」
エミリも機嫌よくそう言った。
ロミオが俺以外の人とこんな風に会話しているのを聞いていると、なんだか俺まで嬉しくなってくる。
晩飯が楽しみになってきたぜ。
「あ! エ、エミリさん! オーブンから火、火がっ―」
「あ、あわわわわわわわわ、す、すまない―」
ボンッ!
ん?
「エミリさん! それは水じゃなくて、油、油―」
「お、おおおおおおおおおおおお、一体、どうすれば―」
バンッ!
んんん?
「エミリさん、スープが噴いてる―」
「わ、わわわわわわわわわわわわわわわ、そ、そんなはずは―」
バシャアアアアン!
んんんんんんんんん?
「……って、エミリ! お前は俺と一緒にここで待ってろよ!」
俺は突っ込まずにはいられなかった。
それから、リビングで待つこと一時間。
ロミオが作ってくれた料理がテーブルに運ばれた。
隣に座っているエミリはというと―
「私は無能……料理の一つもできない……誰の役にも立てない……要らない子……要らない……」
エミリは意気消沈し、ひどく落ち込んでいる
……というか、怖い。
そんなエミリを励ますようにロミオは口を開いた。
「エミリさん、失敗は誰にでもあるよ。ね、ねえユーリ」
ロミオがそう言って、俺へ会話のボールを投げてきた。
「そ、そうだな! 今日はあれだ、いろいろあって疲れてたんだろ、本領が発揮できなくて残念だったな!」
エミリは落ち込んだ表情を変えず、淡々と答える。
「いいんだ……そんな慰めはいらない……何の役にも立てず……面目ない」
自信を無くして、相当落ち込んでいるようだ。
……まあ、飯でも食ったら、少しは機嫌も治るだろう。
もうそれに期待するしかない。
「まあ、冷めないうちに食べようぜ」
「うん、エミリさんも、どうぞ召し上がれ」
ロミオはエミリへ食事を促すようにそう言った。
「ああ、頂きます……」
エミリはそう言って、ハンバーグを一口、口に入れた。
その瞬間、先ほどまでの死んだ魚のような目が、キラキラと輝きだした。
「な、なんだ、これは!」
「エミリさん、口に合わなかった?」
「いや、違う! 違うぞロミオ! なんて美味しいんだ! こんなにおいしいハンバーグを食べたのは生まれて初めてだ!」
エミリの話を聞き、俺も思わずハンバーグを口に入れた。
「ああ、うまいな! 昨日のパエリアにも驚いたが、ロミオは何を作っても最高だな!」
「ええ、そうかな……」
ロミオは照れたように下を向いた。
「ああ、たいしたものだ! 美味しい、美味しいぞ!」
エミリもパクパクと料理を口にしている。
ご飯でも食べたら少しは元気がでるかと思ったが想像以上に効果があったようだ。
とりあえず元気になって良かった。
そして、俺も目の前のご馳走を腹いっぱい食べた。




