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碧眼の神威使い ー奪われた幼馴染を救うため俺は魔人をぶった斬るー  作者: ARU/MERIA
第1章 騎士・魔法師育成学校入学編
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2話 魔物のランク


 「ロミオ、もしよかったら、教官室まで案内してくれないか? 中の構造がいまいちわからなくてな」


 「はい、いい、ですよ」


 「あ、それと敬語は、その……むず痒いから、普通に接してくれると助かる。俺のことは呼び捨てで呼んでくれ」


 「うん、わかった。ユーリ……」


 ロミオは少し照れ臭そうに下を向いた。

 俺たちは教官室へ向かいながら、ロミオにこの学校の構造や制度なんかを聞いていた。


 「じゃあやっぱり、外にあったあのバカでかい建物は闘技場だったんだな」


 「うん、決闘をするときや、学校のイベントなんかで使われているよ」


 「決闘? なんだそれは? 真剣を使って戦うのか?」


 「えっと、昔は真剣を使っていたみたいだけど、今は模造刀を使って戦うんだ。決闘というのは、生徒同士がお互いの何かを賭けて、他の生徒や教官の監視下のもと、正式に行われる模擬戦のことだよ」

 

 そうなのか。


 「ロミオは決闘したことあるのか?」


 「え?」と一呼吸おき


 「……僕はないよ。僕が決闘しても、はじめから勝負は見えてるしね」


 ロミオは足を止め、少し悲しげにハハハと苦笑いをもらした。

 ロミオは少し自分に自信がないところがあるようだ。

 自信がないということは、つまり自分のことをあまり好きではないのだろう。

 俺はそんなロミオの考えを否定したくなった。


 「そんなことないだろ、勝負はやってみなきゃ分からない。それに……なんとなくわかるんだが、ロミオは弱くない。だから大丈夫だ!」


 俺はニシっと笑って見せた。

 俺が話した言葉に嘘はなく、俺が見るにロミオは弱くないと感じた。

 俺は今まで外の世界で魔人や魔物と数えきれないほど死線を潜り抜けてきた。

 その経験からある程度、相手の力量が読める。

 ロミオはそこらへんにいるやつらより、かなり魔力が高い。

 本人は自覚していないのかもしれないが……。


 「ううっ……ユーリはその、優しいね、ありがとう」

 

 ロミオは少し照れ臭そうに笑った。


 「おう!」

 

 俺もそれに応え笑った。

 

 「そういえば、その、少し気になったんだけど……ユーリはどうして2つ剣を身につけているの? しかも一つはその何というか……」


 ロミオの視線から何を言いたいのか伝わった。


 「これか?」


 俺は2本の剣のうち、古びた刀を鞘ごと腰から取りロミオに見せた。


 「これは、かなり錆びついているけど、使えるの?」


 ロミオは率直な疑問を投げかけてきた。


 「まあ一応な、……これは本当に必要な時にしか使えない特別な刀なんだ、だから主に使うのはこっちだな」


 俺はもう片方のロングソードを鞘から取りロミオに見せた。

 するとロミオはメガネ越しからわかるくらい目がキラキラと輝かせ、身を乗り出して剣身を覗きこんできた。


 「おおお、これはすごくいい素材を使っているね、この剣身の素材はブラックダイヤモンドだよね?」


 「へ~、詳しいな。これはある鍛冶屋に頼んで作ってもらった受注品なんだ。かなり高額の金を要求されたけどな」


 ロミオは乗り出した体勢を戻し、続けて俺に疑問を投げかけた。


 「ブラックダイヤモンドはとても貴重なものなのに、どこで売ってたの?」


 ブラックダイヤモンドは‘‘絶対に砕けない鉱石‘‘というキャッチフレーズがあるように、世界最高峰の硬度をもつ、とても貴重なものだ。

 その発掘方法は極めて危険で、とある火山の山頂付近や、強力な魔物が生息している地中深くの洞窟でしか手に入らなかったりする。

 なので、大富豪がいくら金を積んでも手に入らないこともしばしば。


 「これは旅の途中で、ある洞窟に潜ったときに、たまたまブラックダイヤモンドの原石を見つけたんだ、いや~ほんとに運がよかった」


 俺がそう言うと、ロミオは驚いたようにメガネを触りながら話した。


 「え、えええ? 自分で発掘したの? というか……ブラックダイヤモンドの原石、しかもロングソードが作れるほどの大きさのものが眠っている洞窟なんて、そんなの……S級指定されている魔物がいるような危険な洞窟しか思い当たらないよ?」


 俺は顎に手をあて洞窟での記憶を探り起こした。


 「S級なんちゃらはよくわからないが、えっと、あの時は確か……サイクロプスが4、いや5体だったか、あとは小型のキマイラくらいだったから、比較的安全だったな」

 

 サイクロプスは、図体はでかいが動きも単調でしかものろまだからな。

 あの大きな手に捕まりさえしなければ容易に片づけられる。

 キマイラも口から火を吐くこと以外はとくに警戒することもない。

 大型ならまだしも、あの時は小型だったから、これも容易に片づけられた。

 もう一年以上前になるのか、なんというか少し懐かしい気もするな。

 などと、思い出にふけっているとロミオから思わぬ言葉が飛び込んできた。


 「ユーリ、それはS級モンスターだよ!しかもサイクロプスとキマイラを相手に五体満足なんて……いやそれ以前に、S級モンスターっていうのは、特級騎士や特級魔法師でさえ苦労する相手なのに……ユーリ、君は一体……」


 そんなに驚くことなのか?

 そもそもS級指定されているモンスターがわからないのだが、

 サイクロプスとキマイラはS級だったのか。

 知らなかった。


 「サイクロプスもキマイラも、そんなに強いモンスターなのか? 以前戦ったフェンリルのほうが手強かったけどな」


 ロミオは後ずさりながら驚愕していた。


 「フェ、フェンリル? ユーリ、それは遭遇したらまず生きては帰れないといわれている、あのフェンリルのことだよね?」


 そんなキャッチフレーズは初めて聞いたぜ。


 「俺が知っているフェンリルは1種類しかいないが、ここら辺では呼び名が違うのか?」


 ロミオはプツンと何かの糸が切れたように

 落ち着きを取り戻し冷静に淡々と話始めた。


 「ユーリ、君は驚かないとは思うけど、フェンリルは最上位に指定されている幻の5体、SS級指定モンスターの1体だよ、特級騎士でさえ生きて帰れるかわからないと称されているとてつもなく恐ろしいモンスターだよ、でも僕はそのフェンリルとの戦闘を平然と言ってのける君の方が恐ろしいモンスターだと感じているよ……」


 「ひどいな、ロミオ、俺は人間だぞ」


 ロミオも本気で言っているとは思っていないが一応訂正しておいた。

 ロミオはハハハと引きつった笑顔を見せながら、俺たちは教官室へと再び足を運んだ。

 それにしてもフェンリルはそれほど恐れられているモンスターなのか。

 モンスターにはS級とさらに上にSS級と……

 いろいろと覚えなきゃいけないことがありそうだ。


 俺は今まで外の世界で多くの魔物を狩ってきた。

 正直、人間がつけたランク付けはあまり関係ないことだと思う。

 外の世界では殺るか殺られるか命の取り合いの連続だ。

 『弱肉強食』

 強いものが生き残る。

 背を向けた弱者に未来はない。

 つまり、目の前にどれだけ恐ろしい魔物が現れたとしてもやることは変わらない。

 ただ全力でぶった斬るだけだ。


 弱ければ負け

 命を……大切な人の命を奪われる。

 

 俺はもう二度と、

 俺の大切な人の命を絶対に奪わせない。

 あの時のような思いは二度とごめんだ。

 そのために俺はもっともっと強くなる。

 そしていつか、あの魔人を倒し……


 リリアを助ける。

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