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95 修羅と悪魔の輪舞曲

「1人で勝てるのに、仲間なんて要るの?」

 カインドさんは試合後のデータを眺めて、足を組んでいる。

「盾にしたり、爆弾つけて特攻させたり、そんな足の引っ張り合いしかしないのなら、仲間なんて意味無いと思わない?」

 カインドさんは珍しく苦笑いしている。気ままで奔放な部分が多いが、根は優しい。

「さあ? 盾にした事を根に持ってるなら謝る」

 背中に爆弾を貼り付けられ、特攻させられた仕返しにカインドさんを掴んで盾にして敵陣に突っ込んだ。

「根に持ってる」

 間髪入れずに返事が来た。

「悪かった」

 壁にもたれかかり腕を組んで謝る。

「まあ、そんな事は良いんだけどさ。ヒメキチさんとベルさんと、影月の知り合いの虎助さんが仲間になるでしょ?」

 姫花と凛さんが一緒にやりたいと言っていたのでカインドさんに相談した事が原因か。

 虎助という老人は試合の様子を見て苦い顔をしていた。味方共々毒にしたり、蹴っ飛ばしたりと、このギルドは無茶苦茶だ。

「アインも、仲間が増えても難しいだけじゃない?」

「……さあ? 考えた事が無い」

「負けるかもよ?」

「負けるのなら、俺達は弱かったんだ。仲間が出来て負けるなら、それはまだまだ強くなれる部分があったから」

「へー、そう考えるんだ。負けを仲間のせいにするのかと思ったんだけどね」

「俺を安く見過ぎだ」

「それなら自分達は変わらないといけないね」

「大丈夫だ。俺がみんなを勝たせる」

「それなら、自分だって負けないように策を練るよ」

「それでも負けたら、また強くなれば良いだろ。1人だけの最強じゃなく、みんなでの最強になれば良い」

「脳筋だね。でも、残念な事に自分もそう思う」

「だろ?」

「策を練るこっちの労力も考えて欲しいんだけどね」




「ヒメキチ、ベル、俺が援護する。だから、大丈夫」

 ヒメキチとベルにうなずく。

 呪いに残りHP1、そして14機もあるダンテ、決して良い状況では無いが、ヒメキチもベルも居る。全然負ける気がしない。

 少し震えていたヒメキチとどうすれば良いか困っていたベルがうなずき、落ち着きを取り戻す。

「無様。カインド様を捨て、お前はあまりにも弱くなった」

「さあな?」

「カインド様の願い通り、僕がお前を倒す」

 ダンテが蛇腹剣を構え直す。

「お前はカインドさんに教わらなかったのか?」

「……何を?」

「仲間を信頼する事」

 ダンテが思い悩んでいる。

「確かに、僕はカインド様から信頼出来る仲間を作れと教わった。それは今でも出来てない……でも、僕はお前を倒して見せる」

「そうかよ。なら、お前の負けだ」

 不敵に笑って見せる。


「黙れ! 僕が負けるはずが……」

 もう一度バリアを貼ろうとダンテが剣を振る。

 一瞬だけ球体のバリアが出来るが、すぐに歪み始めた。

「今だ!」

「分かったよ!」

 ヒメキチがバリアに出来た歪みから、ダンテを狙い撃つ。

「っ!?」

 弾丸はダンテの目に直撃し、ダンテがバリアを止めた。

「たぁっ!」

 ベルの回し蹴りがダンテの頭に入り、ダンテが地面を転がっていく。

 ダンテの残機が1つ消し飛んだ。残り13機。


「何が……起きて」

 うつ伏せに倒れたダンテが顔を起き上がらせる。ダンテの視線の先には蛇腹剣の刃が見える。

「……ナイフ? まさか!?」

 ダンテが蛇腹剣を手繰り寄せ、蛇腹剣の紐に刺さったナイフを抜くと、紐が切れて、先端の部分が取れた。

「掴んだ時に……!」

「ご名答。そのバリアは強力だが、凄まじく精密な物、バリアを展開している時は動く事が出来ない程集中しなければいけない。先端が欠けたその蛇腹剣で、果たしてまたバリアが出来るかな?」

 ダンテはバリアを貼ろうとして上手くいかず、自分に刃が当たった。

「くっ……何で出来ない!?」

「もう一撃!」

 混乱しているダンテにベルの正拳突きが決まる。残り12機。


「どうした? さっきから殴られてばかりじゃないか」

「ああああ! 黙れぇ! 僕らを馬鹿にするなぁ!」

 攻撃をしようとしていたベルをダンテが睨む。そして、蛇腹剣を振った。蛇腹剣はうねりながらベルを囲んだ。

「まずは、お……」

 ラブリュスがダンテの頭に刺さる。

「1人で多人数を相手にする時、ペースを取られたら、もう負けなんだ」

 ラブリュスを蹴り上げ、上空に飛ばす。そして、ラブリュスを追いかけ、ダンテを蹴って上に跳ぶ。

 ダンテは焦って蛇腹剣を手元に戻す。

「私が兄助を守る!」

 ヒメキチが蛇腹剣を撃ち、ダンテの動きを止めた。

「流石です! 私も続きますよ!」

 ベルに足払いをされ、ダンテが空中に浮いた。そのままベルのかかと落としを喰らい地面に叩きつけられた。残り11機。

 空中のラブリュスに手が届く。回転しながら落下し、倒れているダンテに叩きつける。残り10機。


「HPも1で呪いまでかかっている。なのに、何故まだ動ける!」

 ダンテは苦しそうに立ち上がる。

「カインドさんに言ったんだよ。俺は絶対に仲間を勝たせるってな。だから、勝つまで動き続けるさ」

「カインド様……と?」

「そうだ。アレでも仲間だからな」

「黙れ! 黙れ! 黙れぇぇええ! 僕が、僕だけが……」

「良い事を教えてやるよ。冷静さを失ったらいけないってカインドさんは言ってたぜ」

 ダンテがハッとする。だが、もう遅い。

 隙を逃さず、ベルの一撃が入り、ヒメキチの追撃が入った。冥月の大鎌を投げ、俺も追撃する。

 ダンテは一気に7機まで減らされる事になった。

「……僕は、どうすれば……教えてください、カインド様」

 戦意喪失したダンテは呟くだけで立ち上がろうとしない。

 ダンテの肩を掴み無理矢理立ち上がらせる。

「舐めるな! あの人の後を継ぐんだろ? それなら最後まで諦めず不敵に笑って戦い抜け!」

 全力で頭突きを入れる。

 ダンテはよろよろ下がりながらも倒れないように踏ん張る。

「俺はあの人の仲間だ。あの人の意志も戦い方も継ぐ気はない。でも、お前は違う。あの人に教わったんだろ? 継ぎたいんだろ? だったら、最後までカインドさんらしく戦ってみろよ、そうしたら、もし誰も認めなくても、俺だけは認めてやるよ。カインドさんの仲間で唯一の友達の俺が認める」

 仁王立ちして腕を組んでダンテを睨む。

「……ふっ。今だけは、感謝してやるよ。そうさ、僕はカインド様の後継者になる。お前を倒して!」

 ダンテが立ち上がり蛇腹剣を鞭の状態から剣の状態に戻す。

「後悔するなよ。僕とカインド様の本気の力でお前は倒されるんだからさ!」

 清々しいまでに勝利を確信した不敵な笑みをダンテが見せる。カインドさんそっくりだ。

「来い! 全力で俺がお前を叩き潰す!」

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