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93 復讐の憎悪

「あ゛? やるか?」

「いや、その、すまん、ザイン……」

 雑誌をギルドハウスのテーブルに叩きつける。

 ハイドは部屋の端で小さくなっている。

「……クールに見えて実は超おちゃめ、ザイン特集」

 ヒメキチが雑誌を拾い読み上げる。

「クールなザインだが、実はおっちょこちょいな面もある。実はあまり知られていないが……本人は綴りを間違えている。ドイツ語の1が名前の由来で、綴りはeinsだ。しかし、本人は……ainと書いている。アインは当時小学生、とても可愛らしい間違いだ」

 ヒメキチの頬が笑いを堪え、膨らんでいる。笑いをみんな堪えている。

「悪かったな。間違えたまま高校生になってて」

「ぷはっ、兄助、可愛いよ。超可愛……痛いぃ……」

 ヒメキチの頬を引っ張り、周りを睨む。

「インタビュアーがハイドはんやったな。なんやニヤニヤしながら行ったと思うたら、そういう事やったんか」

 影月が興味無さそうに部屋に入ってきた。

「知ってたのなら止めてくれ。災いしか呼ばないんだから」

「いやぁ、僕はネタ無いしな」

「は? 紅白試合で自分の仕掛けた罠に嵌ってた事も書かれてるぞ?」

「なんやて!?」

 影月が雑誌を奪い取り、影月の事が書かれている部分を読んでいる。

「ハイドはん、自分だけええ事書いて、僕とザインはんとドウジの3人はオチにするなんて、ええ度胸やなぁ」

 完全に他人事と決め込んでいたドウジがもたれかかっていた壁からずり落ちた。

「良い度胸だな……ハイド!」

「いや、マジで、俺が悪かった」

「なら、覚悟は出来てるんだろ?」

 ラブリュスを振り上げる。重厚な刃がハイドの頭の上で輝いている。

「いや、ザイン、マジでぇぇぇええ!?」




「作戦会議始めるで」

「ああ」

 特にハイドに何もせず、作戦会議を始めることにした。

「次の相手は、彼岸の狩人、ダンテやな」

 配られる資料に目を通す。

「カインドさんが手塩にかけて育てたんだろ?」

「せやな。アインはんを倒す為だけに育てた言うてたしな。前に戦った時とは、過去のギルド戦を見る限り違うとるな」

 カインドという名前が出ると、元九頭竜商会のメンバーが暗い顔になる。

「それ、オレ達に勝てるのか?」

「ちょっと、ゼロ!」

 クリスティーナがゼロ兄の耳を引っ張る。

「私、出て良いですか?」

 ベルが手をあげている。体操選手のように指先まで綺麗に手が上がっている。

「ザインはんとベルはんは決定やな」


「わ、私も出る!」

 ヒメキチも頑張ってベルを真似して手をあげた。

「行けるん? ヒメキチはん」

「も、もちろん! 兄助をメタってきてるなら私の出番でしょ?」

 全員の頭の上に疑問符が浮いている。

「無理するなよ?」

「無理してないもん!」

 頬を膨らませて怒っている。子供か。

「他には居る?」

 誰も返事をしなかった。

「ほな、頑張ってな」

 影月は手を振って部屋から出ようとする。すぐに肩を掴んで逃げられないようにする。

「作戦!」

「あ、やっぱり?」


「とは言え、作戦、作戦なぁ……う〜ん、やっぱ無いわぁ」

「仕事放棄してんじゃねぇよ」

 ハリセンで影月を殴る。

「ダンテの過去の試合見て分かるやろ? 真っ向から全部潰して来とる。カインドはんを超える策なんて僕には無理やで」

「……お前なぁ」

「そこなんよ、天才策士カインドはんと最強の戦闘力アインはんのハイブリッド相手に、何をすればええかわからんし、戦いたいと思えんで」

 カインドさんの非道で悪辣な策の数々を間近で見てきたから分かる、相手にしたくないし、勝てる気がしない。

 その上、戦闘スタイルがある時期の俺に近い。一閃の破壊者の生誕の時の修羅のような超攻撃型だ。相手に何もさせずに、何をしてでも速攻で倒す事に特化している。

 対戦相手を、修羅のような攻撃で恐怖を与え、引退に追い込んだ事も少なくない。それを近くで見ていたメンバーが出たくない事も分かる。

 ベルとヒメキチと虎助さんは直接見ていないが、虎助さんは知っているらしい。

「僕は真っ向勝負をお勧めするで。相手さんもそうしてくるようやしな」


「うんうん、大丈夫だよ、兄助」

「何でそんなに自信があるだ……」

「だって、兄助に私とベルさんがついてるんだよ? 負ける要素が無いよー」

 ドヤ顔で胸を張るヒメキチを見ていると不安が吹き飛んでいった。

「そうですよ。ザイン君は最強ですからね」

 みんなが期待の目で俺を見ている。

「俺も負ける気は無いけどさ」

「けど?」

「いや、特に」

「何のけどやねん!?」

「もう時間だよー?」

「だってさ」




 観客の盛り上がりは最高潮まで上がっている。準決勝の2試合に地球上の殆どの人が注目している。運営の発表では人類の90%以上が見ているらしい。

 戦争、紛争、この世界の争いに介入し治め、貧しい国を支援してきたハチマンだから出来たことだ。ハチマンに世界が支配されていると言っても過言では無い。

 その準決勝の舞台である闘技場のグランドに立っている。

「す、凄い盛り上がりだね〜……」

「そうだな」

 急にベルがヒメキチを抱きしめた。

「わ! わ!? ベルさん、いきなりどうしたの!?」

 ベルがヒメキチを放した。

「ヒメちゃんが緊張していると思ったので、解そうと思ったんです」

「確かに、ちょっと安心したかも。ありがとう、ベルさん」

 まるで姉妹だ。

 2人の様子を眺めていると、2人が目を輝かせ、こっちににじり寄ってくる。

「別に、俺は緊張してない」

「そんな事関係無いよねー。ベルさん」

「そうですよね。ヒメちゃん」

 2人に挟まれ抱きしめられる。

 力が強く、少し苦しい。

「兄助成分補充〜」

「私はザイン君のお姉さんみたいな存在ですから、安心して頼ってくださいね」

 2人が満足するまで動かずにいる。そして、満足して離れた。


 試合が始まるギリギリでダンテが現れた。

 退屈な表情のダンテとダンテにベタベタしている謎の若い女が相手だ。

 過去の試合を見るにダンテ以外は戦わない観客みたいなものだ。応援しているだけで全く援護しないから、無視しても良いだろう。

「地獄に落ちる準備は出来たか?」

「地獄ならもう落ちてる」

 ヒメキチの誘拐など、笑えない程の回数を地獄には落ちたつもりだ。

「僕が、カインド様の仇を討ちます……待っていてください、カインド様」

「だから、何でオレが仇なんだよ……」

 聞いてなさそうだが、言っておかないと仇と認めたようなものだ。


 試合開始の銅鑼が鳴った。

「僕がお前を倒して、全てを明らかにして見せる」

 ダンテにベタベタしていた女がダンテから少し距離を取る。

 そして、ダンテの蛇腹剣が女の心臓を刺し貫いていく。刺された女はHPが0になり倒れていく。

「この復讐で僕は、お前を潰す」

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