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85 白の女君と黒の雷霆魔神絢爛魔王覇道真竜

「長い、長過ぎて覚えられないから、ゼロ兄」

 ゼロ兄が不服そうな顔をする。

「らいてーまじん」

「けんらんまおー」

「はどーしんりゅー」

 ヒメキチとカレンとリノが続けて口に出す。

「そう! 雷霆魔神絢爛魔王覇道真竜!」

 今回ばかりはゼロ兄のノリについていけない。

「長ければ良いって物じゃない」

「僕は好きやで雷霆魔神絢爛魔王覇道真竜、並べるのがええやんな」

 唯一分かってくれるのが影月だった事がゼロ兄にはショックだったようだ。

 ゼロ兄は肩を落とした。

「なんか、僕がセンス無いみたいになっとる!」

「ギルドのマスコットがツチノコだったしな。センスは無いでしょ」

 影月が作ったギルド、日ノ下の案内人はツチノコだった。それも妙に生々しい感じの。それでセンスあるは無理がある。

「もうええから、作戦会議始めるで!」


「作戦名インフェルノプラン、作戦の鍵はもちろん、ゼロはんやで」

 イリヤのギルド氷原猟団、データが少ない相手だ。ロシア大会と今大会分しか試合の映像が残ってない上にロシア大会はの分は何の役にも立ちそうになかった。

 その上、今大会の映像もほぼ訳に立たなかった。

「ふっふっふっ、やっとオレの出番という訳だな!」

「まあ、そうやな。覇道魔神雷霆魔王絢爛真竜が重要になってくる訳や」

「ズレてる!」

「まあその魔竜の魔法が必要になるからやな」

「2文字まで略されてる!」

「だから、出るメンバーとしてはクリスティーナはんが必要ってわけやな」

「はいはい、またろくでもない事するんでしょ?」

「せやな。あとウィルはんも出て欲しい」

「分かりました」

「後は、攻撃役に僕と虎助はんとザインはん」

「ふむ、分かった」


「ザインはん?」

 反応しなかったから影月が不審に俺を見ている。

「試合の前に、ウィル」

「あ! はい! これ、ザイン君と集めてみんな分作ったんです。受け取ってください」

 ウィルが貝殻のアクセサリーをみんなに配っていく。

「ウィルウィル、これ可愛いよー!」

「みんなで最後まで戦い抜くという願いを込めて作りました。だから、その、スキルとかは無いんですけど」

 早速、アクセサリーをつける。

「準備は出来たか?」

 みんながアクセサリーをつけ終える。

「イリヤって奴は何度も宣戦布告するくらいには勝てると思っているらしい。完璧に叩きのめして思い知らせてやろう。どういうギルドに喧嘩を売ってしまったかって事を」




「あらあらあら、逃げずに立ち向かってくる事は褒めて差し上げますわ」

 イリヤが手を叩いている。

 ガスマスク達はしっかり整列している。

「それはこっちの台詞だな。元世界一が胸を貸してやるよ」

「元なんやな」

「今現在の世界一って誰なんだ?」

「たぶん、僕やな」

 恥ずかしげもなく言ったぞ、こいつ。

「アインはんが引退してから、こっちに移行するまではたぶん僕やと思うで」

 影月が納得しながらうなずく。

「2回も言わなくていい」

「お喋りはもう十分ですわ。わたくしに相応しい純白の荘厳な舞台を見せてあげますわ!」

「純白……荘厳……舞台! くっ、魔王的には結構ありかも」

 魔王の心にイリヤの言葉が響いたようだ。そして、クリスティーナにハリセンで引っ叩かれた。




 試合開始の銅鑼が鳴る。

 イリヤが片手を上げて合図をしながら、ガスマスク達の後ろに下がっていく。

 イリヤの姿が見えなくなると同時に空が暗雲に包まれ、吹雪を巻き起こす。

 闘技場の壁は見えなくなり、果ての見えない雪原しか見えなくなる。所々に針葉樹が見えるが、吹雪で視界がホワイトアウトし始める。

「追えばチャンスはあったかもしれへんな」

「返り討ちに会う可能性も十分にあるけどな」

 フィールド魔法により猛吹雪が吹き荒れている。過去の試合の映像を見ても吹雪しか見えず、参考にならなかった。

 さて、どう来る?


 高速で何かが風を切る音が聞こえる。猛吹雪の中それは突っ切ってくる。

 神経を研ぎ澄ませ、それを見ようとするが、吹雪に視界を塞がれ見えない。

 吹雪の中から姿を見せたのは銃弾だった。大きさが明らかに普通の物とは違う、大経口の対物ライフルの弾だ。

 弾はウィルの頭を正確に狙っている。

 弾丸の音と対物ライフルの弾速からして、撃った場所からは、かなりの距離があるはずだ。この吹雪の中どうやって狙いを定めているのか。

 剣でガードしてライフルの弾からウィルの頭を守る。

 剣と弾丸が接触する時に出る耳をつんざく衝撃音と弾丸から飛び散る火花に怯む事なく弾丸からウィルを守り切った。

「ザインはん!」

「イリヤは力を持っている。それが何なのかは分からない。ただ、俺達は今、イリヤが作った舞台の上にいるって訳だ」

 吹雪でお互いが見え辛くなってきている。

 試合が終われば相手は全滅し、イリヤは傷一つ無く勝っている、それが観客の見る舞台。


「ゼロはん、インフェルノプランの準備頼むで」

「任せろ!」

 また弾丸が風を切る音が聞こえる。

「……3方向から弾丸が来る! 伏せろ!」

「3方向!?」

 全員が伏せると弾丸は互いに衝突し止まった。

「痛っ!」

 弾丸が伏せたゼロ兄の上に落ちてきたようだ。何でこのタイミングでゼロ兄なんだ、あまりに的確過ぎる。

 今度は雪が踏まれる音が聞こえる。数は6、狙撃が3人だから、残りの半分が攻めに来たという事だ。

「ゼロ兄!」

「分かった! 兄弟!」

 ゼロ兄がソロモンの答という武器の魔術書を取り出す。ソロモンの答には魔力を大幅に強化するスキルが付いている。

「絢爛なる魔王の姿の一つを見るが良い! 覇道を作る真の竜、オーバード・ゼロ・ファフニール!」

 ゼロ兄が闇の炎に包まれる。

 また弾丸が風を切る音が聞こえる。狙いはやっぱりゼロ兄だ。

「はい、みんな、下がって!」

 クリスティーナが盾を出してゼロ兄からみんなを守る準備をしている。

 3方向からの弾丸に武器を投げて、弾丸を止める。その後、クリスティーナの後ろに下がった。


 闇の炎ノ中から黒い竜の翼と尻尾が出てくる。

 そして、闇の炎が弾け飛び、中から巨躯の禍禍しいドラゴンが現れる。変身魔法で変身したゼロ兄だ。

「さあ! 兄弟、行くぞ! ここからはオレ達の番だ!」

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