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75 2人の動き

「ドウジ! 俺が道を開ける、お前はあのわかめを一気に叩け!」

 ハイドはラカムを守る海賊達に銃を乱射する。

「何度、何度、わかめでは無いと言ったら分かるのですか! この腐れ脳無しが!」

 ラカムの罵詈雑言にドウジの体が一瞬だけ震えた。

「ガードオーダー。盾になりなさい」

 ヒステリックから冷静に戻ったラカムの指示により、海賊達は陣形を整える。隙間なくラカムとハイド達の間で横一直線の壁になる。

 ハイドの放った銃弾が海賊に当たる。

「……あ?」

 ハイドの足が止まる。海賊に当たった銃弾は潰れて床に落ちた。

「防御の陣形に攻撃を犠牲にした防御バフをかければ、あなたの豆鉄砲など、ゴミカスのクズ同然です」

 攻撃を下げ、防御を大幅に上げるバフがかかった海賊達はハイドが放った銃弾では1ダメージしか喰らわない。

「どけ」

 ドウジが茫然としているハイドを蹴り飛ばし、海賊の壁に大太刀で斬り込む。

 海賊の壁は崩壊し、大太刀が直撃した海賊の1人のHPが0になった。

「お前じゃ話にならない」

 ドウジがハイドに吐き捨てる。

「……お、おおぅ、やる気に満ちてんな」


「爺にあの馬鹿にお前」

 祖父の虎助と幼なじみの影月、ギルドに誘ったハイドの事

 飢え狂った猛獣のような目でドウジはラカムを睨む。

「はっ、ツンデレか?」

 ニヤニヤしているハイドをドウジは鞘で殴った。

「……俺は」

 苦い感情を噛み潰す。

 虎助をゲームに誘ったのはドウジと影月だった。なのに、いつの間にか、虎助も影月も手の届かない場所に居た。

「アタックオーダー、そっちの獣じみた目付きの悪い方だけで十分です」

 海賊達がドウジを囲む。

「鬼だ」

 ドウジは下を向いていて顔が見えない。ラカムは顔をしかめた。

「獣じゃなくて、鬼だ」

「鬼? ああ、東洋のゴブリンの事ですか。何をほざくかと思えば、そんな醜悪無比な下等生物を名乗るとは無様ですねぇ」

 ラカムが嫌味ったらしく鼻で笑う。

「教えてやるよ、東洋の鬼って奴を」


 ドウジは鬼気迫る表情で力強く踏み込む、船の床板を踏み破りながら、大太刀を振り回す。適当に振り回しているように見えて、その太刀筋に乱れは無い。

 運悪く直撃した海賊の1人が真っ二つになった。

「ハイド!」

「そのやる気、しっかり影月と虎助さんに届けてやるよ!」

 ハイドは船縁を蹴ってジャンプする。そして、振り回されている大太刀に飛び込んだ。

「あいつらだけじゃ無い、俺をこのギルドに誘ってくれた事が正しかったって事を」

「ああ、見せてやろうぜ、俺達の実力を!」

 ハイドは不敵に笑う。

「……何を? 自ら真っ二つにされに行く気ですか! そのミジンコ以下の脳みそで何をしようと無駄だと分からないのですか!」

 ドウジとハイドの謎の行動にラカムも海賊も呆気に取られている。

 ハイドは振り回される大太刀の上に片手で乗り、大太刀を振り回す勢いに乗って高く跳んだ。


「おいおい、口を開けて突っ立ってると」

 ハイドが空中で銃を構える。

「弾丸を喰らう事になるぜ」

 引鉄を引き、銃弾の雨を降らせる。海賊達は銃弾の雨の中で動けなくなっている。

 その中を走り抜ける。

「まずは、お前からだ!」

 ドウジの眼光にラカムは一瞬言葉が出なかった。

「……ガ、ガードオーダー!」

 ラカムの盾になる為に集まってきた海賊達が目の前で左から右に移動する。

 ドウジの姿だけが見える。

「……何が……起きて……」

 狼狽るラカムの背後にハイドが着地し、ラカムに銃を突きつける。

「お前の仲間は鬼に薙ぎ払われて、おさらばってわけだ」

 ハイドがニヤニヤ笑う。

 ドウジの薙ぎ払いで海賊達は全滅していた。

 ドウジも無言で大太刀をラカムの首に突きつける。

「わかめ、お前に働かれると面倒なんだ」

「だ〜れ〜が……わかめですか!」

 ラカムがわかめのような髪を震わせ、キレる。

 ハイドが引鉄を引き、ドウジが首を大太刀で斬った。そして、無言で2人はハイタッチをした。

 2人はザインが戦っている方を見て固まった。

 そこにザインは居なかった。代わりに船に大きな穴があいていた。




「アン、見てよ、ラカムやられたよ?」

「そうですね、メアリー。それなら、私達で倒せば良いのでは?」

「それいいかも!」

 心底楽しそうな笑顔のアンとメアリーの前でボロボロになり肩で息をしながらカレンとリノは何とか立っている。

「先にこの2人にトドメを刺さないとですよ」

「ティーチもやられてくれないかな〜、そしたらザインと遊べるのに」

「その前にヒメキチ様も倒しましょう」

 和やかに2人は話をしている。


 アンとメアリーに全く手が出なかった。

 アンのモーニングスターでリノの鎧は穴だらけになり、メアリーのインファイトにカレンはズタボロにされている。

 アンとメアリーはまだ得意の連携すらしてない。

「でもさー、この2人より、あっちの2人を先に倒さない?」

 メアリーの提案にアンが思案する。

「動けない2人より動ける方を先に倒してザイン様とは万全を期すという事ですね」

「そーそー」

「分かりました。その提案に賛成します」

「やった!」

 ヒメキチはバフをやめてアンとメアリー、2人の様子を剣を構えながら見ていた。


「ハーイド、久しぶり〜」

 普通に歩いてくるアンとメアリーにハイドは銃を構え警戒する。

「久々だな……ドウジ、構えろ」

 ハイドの顔が引きつっている。

「いきなり攻撃するような無粋な真似はいたしませんよ?」

「そーそー、遊んでくれる? ハイドとそこのお兄さん」

 楽しそうな笑顔でメアリーがサーベルを構える。

「遊ぶ?」

 ドウジが混乱している。

「ゲームだし戦うのって遊ぶことじゃん?」

 メアリーが不思議そうな目で見ている。

「そういうことか、良いぜ」

「あ!? 馬鹿!」

 ハイドが焦り急にメアリーから距離を取るように走る。

「やった、アン、良いって!」

「はい! 楽しみましょう!」

 メアリーの姿が消えた。

「ダメだよ、ハイド。そんなに逃げたら撃てないよ?」

 メアリーは距離を取ったハイドに一瞬で追いついた。

 ドウジは何が起きたか分からず愕然として動けない。

 メアリーはハイドを追い越しながらハイドの足をサーベルで斬った。

「痛っ!」

 ハイドは顔面から床に転けた。

「ふふっ、大太刀に銃、得意距離が遠いですね」

 アンもいつの間にか消え、ハイドの上にジャンプしていた。

 降りながらモーニングスターをハイドの後頭部に叩きつける。

「当たりますかね、私達に」

「さあ? 当たんないと思うよー」

 2人は楽しそうに笑っている。

「前より桁違い……か」

 苦笑しながら言い残し、ハイドのHPが0になった。

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