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74 海賊の船

「お、おろろろろろろ……おぇぇ」

 船の外に顔を出す。吐き気が治らない。

「ガッハッハ、船の上では、お前も形なしか?」

 揺れる船の上でティーチが仁王立ちしている。

「お、おろろろろろろ」

 全然吐き気が治らない。揺れる海と無限の水平線を見て気分が落ち込んだ。




 試合前。ギルドハウス。

「はいはーい。ティーチの情報ねー」

 マオがホログラムでティーチの画像を出す。

「武器は大砲と腰のサーベルね。恐るべき所は、スーパーアーマーと広い攻撃範囲ね」

 全く戦った事が無い3人に向けてマオは話す。

「ティーチは俺が相手するから、それより……」

「そうね。まず、副船長のラカムから行っとこっか」

 話を遮られた。

「ラカム?」

 リノが首を傾げる。

「昨日は居なかったからな」

「副ギルドマスター、副船長のラカムは、ティーチと反対で細身のわかめな繊細な男ね」

 髪の毛がわかめのように見えるのでわかめわかめと言われている。言われると本人はキレるのだが。

「ティーチの討ち漏らしを長銃で狙撃してくるから、1人誰かが見ておけば良いかもね」

 ティーチが暴れ、ラカムが援護する。その図式が厄介だ。

「昨日のお2人は?」

「アンちゃんとメアリーちゃんね。あの2人は遊撃兼、ラカムの防衛が役割だから注意しないとね」

「注意するのはこの4人だな。だけど、4人以外も影月に劣らないレベルはある」

「そうそう、アンちゃんはモーニングスター、メアリーちゃんはサーベル二刀流ね。連携も得意だから気を抜いたら一瞬で首がポーンするから」

 3人が戦々恐々としている。

「大丈夫だ。何があっても最後には俺が全部倒す。安心して全力を出せば良い」


「ドウジさんとカレン先輩とリノちゃんは確定ね。後は誰が行く?」

 ヒメキチは世界大会に出た事が無い3人を初戦に出して緊張を緩和させようとしているようだ。

 誰も返事しない。

「うん、私とハイドね」

 ドウジにハイドをつかせ、カレンとリノにヒメキチがつく形で3人のカバーをするつもりか。

「俺? まあ、良いけど」

 ハイドがソファーから立ち上がる。

 全員で出る事は出来るが、全ての試合に全員が出続ければ疲労が溜まり、動けなくなる可能性も出てくる。

 俺を主軸に数人で戦う方が効率が良いと判断したのだ。

「兄助、全試合出ることになるけど、良いの?」

 ヒメキチが心配そうに顔を覗く。

「いつものことだしな」

「流石兄助、頼りになる」

 ヒメキチが微笑む。




「おろろろろろろ」

 そして、闘技場にワープしたと思ったら何故か船の上に出ていた。

「……そんなに船酔いするタイプって知らなかったから」

 俺の顔を見たティーチが申し訳なさそうにしている。

「いや、何で船の上なんだ……」

「魔法だ。知らないのか?」

 首を横に振る。

「新しい魔法の種類としてフィールドを変化させる魔法が増えたんだ。お前らは使わないようにだろうが、俺様達、モチーフは海賊だしな。海の上は強いぞ」

「その結果が……おろろろろろろ」

「ざまあ、という奴です」

 奥の方からわかめ頭のラカムがバカにしてきた。

「このクソわかめが、海のもずくになってしまえ」

 何故か静まりかえった。

「……あ! わかめともずくで、かけてるのね! 間違えたわけじゃ無いんだね!」

 流石ヒメキチ、俺の言いたい事をよくわかっている。

 何故か何人かがずっこけた。

「私はわかめでももずくでもありません! 私はあなたみたいな無神経な人間が一番嫌いです」

 煽ってるのに無神経もどうも無いような気がするのだが、まあ、ラカムはこういう奴だ。

「ザイン様」「ザーイン」

 アンとメアリーもしっかり準備している。

「今回は」「勝たせてもらうね!」

 船酔いしている俺に不敵な笑みを見せている。


 試合開始まであと1分になった。

「俺がティーチを倒す。ヒメキチ、カレン、リノはアンとメアリーを、ドウジとハイドはラカムを頼む。詳細な作戦は特に無し、仲間をよく見て好きに暴れてくれ」

 みんながうなずく。

「ガッハッハ、俺様の相手をしてくれるのか、そいつは嬉しいぜ!」

「ああ、いつでもしてやるよ」

 不敵な笑みで睨み合う。

「野郎共! 準備は良いな!」

 おー、という掛け声が船の至るところで聞こえる。掛け声で船が少し揺れた。

 吐きそう……




 ついに、その時は来た。試合開始の銅鑼が鳴った。

「おえっ」

 銅鑼で体が震えて吐きかけた。

「行くぜ! ザイン!」

 ティーチが右腕につけている大砲をこちらに向ける。砲弾が発射される。軌道からして狙いは足か。

 砲弾が船の床に当たればそこで爆発して穴があく。

 水晶突剣を取り出す。砲弾が床に着弾するまでに斬り上げ、真っ二つにする。真っ二つになった砲弾は上空で爆発した。

 斬り上げた直後、ティーチとアンとメアリーが同時に武器を取り出し、しかけてくる。

 ティーチの巨体に合う巨大なサーベルを振り下ろす。ティーチの体重のかかった一撃を喰らえば潰れる事は確実だ。

 そして、逃げ道を阻むようにアンのモーニングスターとメアリーの2本のサーベルが迫っている。


「リノ!」

「はい、姉様!」

 アンのモーニングスターをリノのハルバードが、メアリーのサーベルをカレンの槍が防ぐ。

「私が相手です!」

「良いよ、二刀流対二刀流、面白そうだし!」

 カレンがメアリーを押して、俺から遠ざける。

「引いていただけないのですね。仕方がありません、倒します」

 アンがリノをモーニングスターで殴る。モーニングスターが当たった鎧の肩の部分が壊れた。

「……と、とにかく、させない!」

 リノはアンにタックルをして、俺とティーチから距離を開ける。

 鎧が一撃で壊れリノは少し焦っている、不安だ。


「おい、わかめ!」

 ザインに狙いを定めていたラカムはわかめと呼ばれハイドの方を向く。

「またか! また私の事をわかめと言ったな!」

 ラカムが指を鳴らすと海賊達が集まってきた。ティーチ達以外の11人、ラカムを守る為のメンバーだ。

「良いか? ドウジ、あいつはバッファーでもある。あいつを早く倒せれば、みんなが楽になる」

「それは早く言え」

 ドウジがハイドを軽く突いた。

「やるぞ、ハイド」

「言われなくても分かってるって」

 ドウジは大太刀、ハイドは銃を取り出しラカムとラカムを守る海賊達に突っ込んでいく。


「みんな! バフ行くよ!」

 ヒメキチがウタヒメを掲げ、バフ魔法を発動させる。

 ヒメキチがバフをかけるのを見て、ティーチのサーベルを避ける。振り下ろされたサーベルは床を崩して穴をあけた。

「ガッハッハ! こいつは最高の戦いになるぞ! そうだろ? ザイン!」

「分かり切ったことだろ」

 水晶突剣を納め、ラブリュスを取り出す。

「行くぜ、ティーチ!」

「来い、ザイン!」

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