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73 無明の世界

「開会式始まるよ!」

 ティーチ達が帰り、世界大会の開会式が始まった。

 日本大会の時はヒメキチとベルさんとの3人だけだったのに今では12人も居る。ギルドハウスがちょっと狭く感じる。まあ、ギルドの最大人数は50人だから、これでも少ないくらいなのだが。

 ヒメキチが隣に座り、何食わぬ顔で腕に抱きついてくる。カレンも張り合って隣に座った。


 日本大会と同様に主催者の有馬が出ている。その後ろにメタトロン・システムが佇んでいた。

「んあ!? どういう事や!?」

 完全に油断している影月がソファーから落ちた。

「メタトロン・システム……」

 俺もソファーから落ちなかっただけで影月くらい驚いている。

 ヒメキチ誘拐した犯人で、有馬に停止させられていたはずだが。それが何故今再起動している。


 メタトロン・システムが再起動している事以外は何1つおかしな事無く開会式は終わった。

 影月が俺を引き連れて、2人で近くの部屋に入った。

「ザインはん、ザインはん」

「うるさい、影月、分かってる」

 影月を止める。

「メタトロン・システム、何で再起動してるんだって事だろ? 俺には何も分からない」

 そう! それ! みたいな感じで影月は俺を指差している。

「動きがうるさい」

「それ、流石に酷ない!?」

「全然」

「うわぁ……」

「とにかく、分からない事は分からない。どれだけ警戒しても無駄かもしれない。でも、しないよりはマシだろ」

「要は注意だけはしとけっちゅう事やろ」

「まあ、そう言う事だな」




「それで、トーナメント表は?」

 みんなの居る部屋に戻ってきた。トーナメント表が発表され、騒いでいる。

「あ! 兄助、何処行ってたの? もう、出てるよ」

 もう出ていると言うが、そのトーナメント表は画面に出ていない。

「初戦はティーチさんのところでしたよ」

 ベルさんが横から教えてくれる。

「……戦うまで負けるなって言ってたのに、初戦で当たるのかよ」

 こういうギャグみたいな事を起こすのはティーチらしい。

 そして、アンフィニティのワールドテイカーは決勝で当たる事が分かった。


 誘拐や殺人、裏社会の親玉など、大きな事が起きている割に、その終着点が見えない。俺の知らない何かがこのゲームにはある。

 それに、あの夢、世界から人が居なくなるという奇妙な予知、大きな事なら原因が何処かにあるはずだが。

 だが、それを知る術は無い。戦い続ける以外に道は無い。




 頭がこんがらがる。大会は明日からだ。ゆっくり休んで大会に集中するしかない。

 気晴らしにギルドハウスから出て町を歩く。

「おら! この雑魚が!」

 物騒な声が聞こえてくる。あれ? 何処かで聞いた事がある。

「金も装備も全部だって言ってんだ!」

 声のする方を見てみる。

 何処かで見た事がある初心者狩り連中にライトレアがボコられている。

 その様子を眺める。

「おい! お前! 何見てん……だ……え?」

 チンピラの1人がこっちに来た。

「別に俺が何見てたって良いだろ? 何か文句あるのか?」

「いや、その、ですね。こいつは、あなた様である天下のザイン様に……」

 チンピラは俺を見てビビり始めた。

「そうだ。お前らの装備と金、全部置いて行けば、俺の機嫌は良くなるかもな」

「ひ、ひぇー!?」

 チンピラは腰を抜かして後ずさる。

「冗談だ」

「え?」

「そんな悪い事する奴なんて居ないよな?」

 剣を抜きながらチンピラ達に詰め寄る。

「あ、あっ! はい!」

 チンピラ達は逃げて行った。


 ボロボロのライトレアは俺を見上げる。

「ざまあ」

 ライトレアを見下す。

「何やってんだ、お前」

 ライトレアが立ち上がった。

「余計なお世話だ」

 ライトレアは吐き捨てて去ろうとする。

「そうだが? クソ雑魚のお前に何を言われても俺が気にするわけ無いだろ」

 ライトレアの足が止まり、こちらを向いた。

「俺に用が無いなら、話しかけてくるな」

「用ねぇ……あるぞ」

 1つ思いついた。

「は?」

「サンドバッグになれ」

 ライトレアが固まった。

「俺の特訓に付き合えって話だ。明日からの大会のために極められるものは極めておきたいが、仲間をサンドバッグにはしたくない」

「……わかった」

 意外な事に素直に従った。

「俺の特訓に付き合えば俺の弱点でも分かるかもな」


 ライトレアが綺麗に空中で回転して地面に叩きつけられた。

 回し蹴りがライトレアの頬にしっかり入った。

「避けてくれても構わないが?」

 伸びをしながらライトレアを見る。野原で適当に動きを調整することにした。

 ライトレアは足回りは良いがそれ以外が何もかもダメ、攻撃も防御もまるで出来ない。

 あまりに下手過ぎて笑いが出る。

 がしゃどくろに攻撃を任せていたのも肯ける。手を震わせながら剣を振っている。隙だらけで全ての攻撃にカウンターを取れる。

「何でそんなにプルプルしてんだ。産まれたての小鹿か」

 ライトレアが息を切らしながら起き上がる。

「ゲームなんだから、ビビってないで思いっきり攻撃しろよ。重いなら武器変えてしまえ」

 びっくりした顔をしている。

「流石にもう少し動いてくれないと案山子殴ってるのと同じなんだが?」

「怖くないのか?」

 こちらの話を無視して質問して来る。

「喧嘩して怪我でもさせたのか?」

 ライトレアがびっくりして転けた。

「図星か」

 ため息を吐く。

「アレが起きる前までは喧嘩もしてたし、怪我もしたし、怪我させたこともあった。ヒメキチを守らなくてはいけなくなってからは手を出す事はやめた。虐められてたヒメキチを守るために殴られた事だって数えきれないくらいある」

 ライトレアはじっと聞いている。

「本当に怖いものは何か、よく考えれば良い」


 ライトレアはすぐに上達し、攻撃にブレが無くなった。適当な雑魚モンスターなら負ける事は無いだろう。

 教えるのも腕が良いとなると本当に俺って最強だな。

 まあ、ふざけた事を考えるのも大概にして、明日の準備は出来た。後はティーチをボコボコにするだけだ。

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