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67  愛の為の剣

「ほへー、とおー、たあー」

 気の抜けた掛け声と共にモンスターが倒れていく。

「ふんす」

 フロアのモンスターを殲滅したヒメキチが帰ってきた。

「強くない?  もう、俺要らなくない?」

「要る!」

 ヒメキチがギュッと抱きついてくる。

「ダンジョンに来た目的はデートでしょ?」


 ダンジョン、水晶龍洞、大量のドラゴンが巣食う洞窟だ。

 名前の通り、水晶などの綺麗な鉱石が壁や天井から突き出ていて、デートスポットにもなっているらしい。なお、レベル99のドラゴンを倒せればの話だが。

 当のヒメキチはドラゴン狩りに勤しんでいる。


 世界大会まであと少し、変な事だらけでゆっくりゲームを楽しむ余裕も無かった。

 ヒメキチに譲ったウタヒメの代わりになる剣を探すという名目で遊んでいる。


 ヒメキチは背中から翼の代わりに水晶が生えた雑魚ドラゴンを蹴散らしていく。

 その様子を少し下がってボーッと見ている。

「ほら、兄助!  宝箱落としたよ!」

 ヒメキチは宝箱を持って来た。

 相変わらず仔犬みたいだ。頭を撫でると、嬉しそうに体を擦り付けてくる。

「くぅん」

「仔犬かよ……」


「で、宝箱は?」

 ヒメキチが宝箱を開ける。

「じゃじゃーん」

 中には水晶が一つだけ、ショボい……まあ、雑魚モンスターのドロップだから仕方がない。

「次のフロアにレッツゴーだね」

 階段を降りて下のフロアに進んでいく。


「気になってたんだけどさ、ウタヒメどうなってんだ?」

 ヒメキチがウタヒメを騎士みたいに顔の前に立てる。

 俺が使っていた時より装飾が豪華だ。白を基調にピンクで可愛くまとめている。

「スキルは剣聖と剣神に心眼、あと、歌う者っていう、複合スキルがついてるよ」

 剣聖は剣を持っている時、ステータスアップ、剣神は剣を持っている時、回避中に無敵時間を作る、心眼は攻撃が弾かれなくなる、というスキルだ。全て上級のスキルだ。

 歌う者については初めて聞くスキルだ。

 何だこの大盤振る舞いは。

「歌う者は、バフ値、デバフ値、回復量上昇だって、凄くない?」

 破格のスキル過ぎて笑えもしない。ただ口を開けて唖然としているだけだ。

「これで、援護もバフも全部出来るよ!」

「俺が持っていた時はスキルなんて1つもついて無かったのに、どういう事なんだ……」

「ウタヒメは持ち主の望みによって力を変えるって言ってたよ?」

「言ってた?  誰が?」

「ウタヒメ、初めて持った時教えてくれたよ?  兄助の時は無かったの?」

 首を横に振る。

「うーん?  もしかして、兄助が何も望まないからじゃない?  だって、鉄の剣でも影月くらいボコボコに出来るでしょ?  武器に何かを望むんじゃなくて、武器に合った戦い方に兄助が合わせるからかも?」

 敵の武器を奪って戦う戦法を使ったりする故に、どんな武器にも合わせていける様にしている。それが裏目に出たという事か。

 いや、どんな裏目だよ。普通こんな事は無えよ。

「凄い武器なんかよりも兄助が凄過ぎたんだね、私には分かるよ」

 分かる、分かる、とうなずいている。

「まあ、ヒメキチを守ってくれるのなら、別に良いけど」

「そこは、兄助に守って欲しいなぁ、なんて」

 上目遣いで俺を見つめている。


「そっちの銃は?」

「これ? 」

 左手で持っている銃を見せてくれる。これも白にピンクとヒメキチらしい色遣いだ。

「これは、みんなで素材集めて作ったんだよ!」

「クリスティーナ?」

「ベルさんにウィルウィルやカレン先輩、リノちゃんも手伝ってくれたんだよー」

 思っていた以上に多い、これは確かに、みんなだ。

 ヒメキチには人を惹きつける魅力があると再確認する。

「むぅ?  何考えてたの?」

 何を感じ取ったのか分からないが頬を膨らませている。

「いや、別に、モテるなぁって思っただけ」

「それ、ブーメランだからね」

 ブーメラン……いや、思い当たる節はある。

「それに、私は兄助の事が好きなの!  モテても好きな人と結ばれる事は全然違うんだからね!」

「はいはい」

 オコなヒメキチの頭を撫でてなだめる。

「こんなに撫でてくれも……」

 モゴモゴ言いながら撫でられている。


 水晶龍洞の最下層フロアまで降りて来た。色取り取りの水晶を生やした巨大なドラゴンが中央に陣取り、奥に行く扉を守っている。

「あれが水晶鎧龍ガイアオーブドラゴンだよ」

 ヒメキチはドラゴンを指差している。

 ガイアオーブドラゴンはゆっくりとこちらを睨みつける。

 そして、その巨体を起こす。

「来る!」

 ドラゴンが咆哮を上げる。地面が揺れる。凄まじい衝撃波だ。

 背中に生えた翼の代わりの水晶がこっちに伸びる。

「ヒメキチ!  大丈夫か?」

「うん、行けるよ!」

 その言葉を聞いて安心した。伸びてくる水晶をラブリュスで叩き割る。

「俺が援護する。頼むぜ、ヒメキチ」

「任せて、兄助」


 ドラゴンは巨体をあまり動かそうとはしない。水晶で攻撃してくるだけだ。

 襲いかかる水晶を破壊しドラゴンへの道を作る。

 ヒメキチが凄いスピードでドラゴンの頭に迫る。

「とおー!」

 気の抜けた声でドラゴンの頭にウタヒメを振り下ろし、斬る。

 そして、斬った場所を銃で撃ち抜いた。

 びっくりするくらいのダメージが出て、ドラゴンは倒れた。

「強過ぎない?」

「兄助の動きは後ろでよく見てたからね」

 いや、そういう事じゃないんだけども、まあ、本人が楽しそうだからいいかな。

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