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65  撃滅の閃光

「よう!  ソウセキ」

 にやけながら手を上げる。

 ギルド戦の時が来た。ソウセキのギルド、マッドエイドのメンバーが集まっている。

 1人以外はペストマスクを着けている不気味な集団だ。

「良い催し物だと思わないか?  見てくれよ、この観客の数、全部俺のファンなんだぜ」

 観客に手を振る。歓声が上がる。ファンサービスなんて求められた時しかやらないが、今日は大盤振る舞いだ。

「お前、何したか分かってんのか?」

 ソウセキの声は明らかに不機嫌だ。

「お互い様だろ」

 余裕の笑みを見せつける。


「もう証拠は固まってる。これはただの時間稼ぎ、兼

 、憂さ晴らしって訳だ」

 1人だけマスクを付けてない奴がビクッと体を震わせた。

「逃げるなんて真似はしないよな?  清水次組の組長はカタギにビビって尻尾巻いて逃げ出す小心者だなんて、言われたく無いもんなぁ?」

「そんなに命が要らないか」

 ソウセキの手が怒りに震えている。

「あの時みたいに薬物漬けの暴漢でも送りつけてくるか?」

「お前……!」

「ヒメキチの父親に薬売ったのもお前だろ? 」

 ソウセキの手の震えがピタッと止まる。

「シューベルトか?  あの野郎が吐いたのか?」

 マスクのせいで表情は分からないが声から侮蔑が滲み出ている。

「やっぱりそうだったのか」

 情報提供者はシューベルトだった。勝手な行動をするソウセキをフィクサーが疎ましく思い。ソウセキの、いや、清水次淳也の悪事の証拠を送ってきたのだ。

 尚、そのおかげで俺の作戦には穴が見つかり、ポンコツとツッコミを入れられたのは言うまでもない。


 捕まる、捕まらないは別として、姫花の幸せを粉々に破壊した、こいつらを許せるわけが無い。

 父親を組長の座から引き摺り下ろし、中学生でヤクザの親となり犯罪に手を染めた、生粋の悪だ。絶対にここで終わらせる。


「ちょっと、兄助、良い?」

 ヒメキチに袖をつかまれる。何故かジト目で俺を見つめている。

「どうした?」

「2つ言いたいことが有るんだけど」

「うん」

「ホントなの?  だって、兄助と歳同じだよ? 」

「薬の話は本当、信じられないかもしれないけど証拠もある」

 最初は信じられなかったが、シューベルトから送られてきた証拠の中にあった。

「あとね、もう過去の事は良いの」

 目から決意が見える。ヒメキチに手を掴まれる。

「だって、つまんないもん。そんな事より、これからのデートの事考えた方が良いんじゃん」

 ヒメキチがピースする。マスクを着けてない奴が諦めて目を閉じた。


「あいつは確実に殺す、だから安心しろよ」

 なるほど、マスクを着けてない奴の中身は広田か。よく見ると結構普通な格好だ。ライトレアがプレイヤーネームだ。

「もう辞めてくれ」

 声が震えている。

「降りたいって事か?  つまんねえ事言うなよ。俺達ずっと一緒にやってきただろ」

 ソウセキが肩を竦める。ライトレアは何も言わなかった。




「さて、ヒメキチ、準備は良い?」

 軽く体を動かして、動きをチェックする。異常は無い。

「私も大丈夫!」

 ヒメキチの返事を聞いて、ソウセキ達の方を見る。

 作戦会議をやっていて、ちょうど終わったようだ。

 開始の時間まで無言で睨み合う。


 遂に開始の銅鑼が鳴った。

 ソウセキはどんな卑劣な手を仕掛けてくるか分からない、ここはゆっくり攻めるのが良いだろう。

 ソウセキの前の地面に紋章が浮かび上がる。

 ソウセキの部下達が苦しみ始めた。

 1人また1人と倒れていく。

「何だこれ……」

 そして、全員が倒れた。

 闘技場は静まり返っている。

 地面が揺れ、紋章の中から何かが出てきた。

 白い体で、足が無く、その大きさは闘技場を埋め尽くす程、カタカタと不気味な音を鳴らしている。

「がしゃどくろ……」

 超巨大な骸骨が俺達を見下ろしている。

 ソウセキはモンスターを闘技場の中に召喚したのだ。

 しかし、このゲームにサモナーはまだ無い。またチートか。


「兄助、来るよ!」

 ヒメキチが走りながら叫ぶ、ヒメキチと反対に走った。がしゃどくろは大きな手を叩きつけてくる。闘技場のを埋め尽くす大きさのがしゃどくろで逃げ場がほぼ無い。

 がしゃどくろの手を間一髪で避ける。

 叩きつけた手は砕け、がしゃどくろから新たな腕が生えてくる。

 ヒメキチと分断された。がしゃどくろはべきべきと音を立て、もう一つ腰から上半身を生やした。

 がしゃどくろは手を振り上げる。叩きつけると同時に手を生やし、叩きつける為に手を振り上げる。息つく間も無く次の叩きつけがきている。


「どうだ?  面白いだろ?  あんなゴミ供と戦うよりずっと楽しいだろ?  お前らみたいな虫ケラは叩きつけられて潰されるって相場が決まっているんだよ」

 ソウセキの声が聞こえる。がしゃどくろが地面を叩くごとに地面が揺れ、それどころじゃ無い。

 回避しながらウタヒメを頭蓋骨に投げる。ウタヒメはがしゃどくろの頭蓋骨に突き刺さり戻ってこない。

「マジぃ?」

 がしゃどくろは頭に剣が刺さっている事など気にせず、攻撃を続ける。

 埒が開かない、先にソウセキを倒す方が良いかもしれない。

 ナイフを取り出し、ソウセキに投げる。ソウセキは回避しない。ライトレアがソウセキの前に出てナイフを叩き落とす。両手に剣を持った二刀流スタイルだ。見た目だけならラノベの主人公と言われてもおかしくない。


 冥月の大鎌を取り出して、ソウセキに向かって走る。

「せっかくオモチャを用意してやってんのにな」

 ソウセキは動かない。

 ライトレアが行手に立ち塞がる。

「邪魔すんな!」

 ライトレアに鎌を振る。ライトレアは2本の剣でしっかりとガードする。

 ガラ空きのスネに蹴りを入れようとするが、それもガードされた。

 がしゃどくろの手が後ろから迫っている。右にローリングしながら叩きつけを回避する。

 ライトレアもほぼ同時にローリングをして、前に立ち塞がり続ける。

 チートか進化か、いや、まさか、素で出来るのか?  サッカー部のエース、相手の動きを見極め、前に立ち塞がる事くらい出来ても不思議じゃない、かもしれない。

「世界一も形なしだなぁ。手も足も出ないってか?」

 がしゃどくろが手を大量に生やした。ライトレアごと、俺を叩き潰す作戦か。流石に逃げ場が無い。


 眩い光ががしゃどくろを包む。

「持つ者の意志により、力が変わる聖剣、ウタヒメ」

 光の中から声が聞こえる。

「私に力を貸して!」

 光が水平に切り開かれる。光が消えるとがしゃどくろは真っ二つになっていて、ウタヒメとハンドガンを持っているヒメキチが立っていた。

「私は兄助の隣で戦いたい!  背中じゃ無くて、一緒に同じ景色が見たい!」

 ヒメキチがウタヒメを天に掲げる。ウタヒメの装飾が煌びやかで可憐な装飾に変わっていった。

「兄助、ここから反撃だよ」

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