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64  闇の中

「あ」

 結局、鑑識が来るまで手持ち無沙汰になりスマホでネットサーフィンをしていると、新しい学園物のアニメの記事が目に止まった。そして、閃いてしまった。俺の声に驚いた桜川刑事が椅子から落ちそうになる。

「いきなり何だ?」

 桜川刑事は椅子に座り直した。

「面白い事を思いついた」

「はぁ?」

 逸る心が抑えきれず笑ってしまう。

「今まで忘れてたけどさ。俺はザインなんだ」

 アーサーは知っているという顔に、桜川刑事は訳がわからんという顔に、加瀬刑事だけは分かったようだ。

「お前、頭大丈夫か?」

「加瀬刑事、ザインとは?」

 桜川刑事を無視して話を続ける。

「はい、最強で超絶人気のプレイヤーですよ!」

 加瀬刑事も興奮している。ここでアーサーも分かった。

「なるほど、面白い」

 アーサーは感心して笑った。

「おい、ちょっと待て、何でお前ら分かるんだ?」

 桜川刑事が置いてけぼりにされて焦っている。

「俺は世界一ファンが多いプレイヤーだぞ? 」

「ん?  いや、それが何だ?」


 ついて行けていない桜川刑事を放って姫花達が座っているソファーの前に立つ。

「兄助?」

「そろそろ反撃の時間だ」

 姫花は覚悟を決めた目でうなずいた。

「私達に出来る事はありますか?」

 加恋が心配そうな目で俺を見る。

「ある」

 自信満々に笑う。それを見た加恋もつられて笑う。


「写真の目的、ソウセキの正体、俺と姫花の過去、学校、そして、ザイン」

 ニッと笑う。全てが繋がっている。もしかすると名探偵の素質があるのでは?

「いただきま……」

「おい、ちょっと待て、説明しろ、その言葉は何だ?」

 桜川刑事が割り込んでくる。

「今、良いとこだったんだけど!」


「老人達は言うのさ。難しい横文字を並べてみると教える気あるのか、と。だが、社会というのは知らないとほざいてるだけの奴に甘くは無い。それはお前が時代遅れだから分からないんだろ、と言い返されるだけだ。そう、簡単な話、知らない事は調べれば良い。人間、学ぶ事を辞めてしまえば、ただの葦に成り下がる」

「わぁ、兄助、賢ーい」

 姫花達が拍手をする。手を振って応える。

「何言ってんだ、お前」

 冷めた目で桜川刑事が俺を見ている。

「ビンゴです!」

 作業中だった加瀬刑事がノートパソコンの画面を指差す。

「はぁ!?  マジで言ってんのか!?」

 桜川刑事が画面を見て驚愕している。

「いや、でも、お前、これ大正時代の奴じゃねえか」

「合ってる。名前は時代が過ぎれば変わっていくからな。2つ世代が上なだけで苗字は4つ。大正からだと、そのまま名前が継がれるている方が少ないだろ」

「まあ、それはそうなんだが」

「時代が変わり、名前が変わっても、奴らは絶対に変えない物がある」

「お前、何でそんな事知ってる?」

「ふっ、ゲームで知った」

 渾身のキメ顔をする。

「馬鹿だな、お前」

「いつだって俺の敵は常識に縛られてない奴ばかりだからな」




「おい!  これはどういう事だ!」

 自らのギルドハウスに居たソウセキは怒りに任せて部下の腹を蹴った。腹を蹴られた部下は床で苦しんでいる。

「ふざけんな!  ギルド戦の申し込みして、それを宣伝しやがった。これで拒否したらこっちは腰抜けだぞ!  クソが舐めやがって!」

 ソウセキは床で苦しんでいる部下を何度も蹴る。

「舐められる事だけは絶対あってはならない事だ。分かってんのか!」

 ソウセキの怒りが爆発している。




「兄助、兄助!  すぐに返事が返ってきたよ!」

 ギルドハウスのソファーで寝転んでいると、ヒメキチが走って来た。

「それで?」

「やるって来てるよ!  兄助どういうことなの?」

 起き上がり悪い笑みを浮かべる。

「それは、奴の正体が」

 ヒメキチが生唾を飲み込む。

「ヤクザだからさ」


「え?  高校生なのに?」

 ヒメキチは目をグルグルさせている。

「そこだよな。俺も最初はあり得ないと思った」

「うん」

「それは一度置いておいて」

 ソウセキにナイフを投げた時のスクショを見せる。

「マスクについてる龍のマークがあるだろ?」

「うん」

「これをネットで検索しても同じ物は見つからなかった。だけど、警察のデータベースにはあったんだ」

「さっき刑事さん達と探してたね」

「これは清水次(しみずじ)会の代紋だった」

「しみずじ?」

 言い慣れない言葉をヒメキチはたどたどしく言う。

「昔の凄い侠客の会の派生で、大正時代からある」

「え?  え?」

 我ながら馬鹿げた事を言っている。だが、事実だ。


「盗撮の目的は俺とヒメキチを引き離す事だろうな」

 ヒメキチがムッとする。

「そんな事出来るの?」

「出来ると思ったんだろうな。どっちかの家に家庭訪問でもすれば、その時点で俺達はアウトなんだから」

 同棲している事がバレれば、サボりなどの素行の悪さもあり、退学、とまで行かなくても、離れ離れになる可能性はある。それを狙ったのだろう。


「あの写真は致命的だが、まだ死んだわけじゃ無い」

 ほぼ終わっているが、それでも手はある。

「写真をばら撒いた奴はソウセキ本人だ」

「何で言い切れるの?」

「写真がばら撒かれたのは、登校時間の間だから」

「あ!  そういえば、写真を最初に見つけたのは野球部が朝練をしてる時って聞いた!」

「ああ、最初に来て見回りをした教師が見つけて無いんだ」

 最初に来た教師が見つけて回収していれば、ここまで大きな騒ぎにはなっていなかった。

「でも、部下の可能性もあるよね?」

「……あ」

 その可能性がある事は完全に頭から抜けていた。

「あ!?」

「いや、刑事2人が芋蔓式に捕まえてくれるらしいから、大丈夫」

 親指を立てる。ヒメキチは心配そうに俺を見ている。


 ソウセキはヤクザのボスだ。盗撮を言い逃れ出来ても逮捕はされる。逮捕さえされてしまえば、盗撮の件でも捕まる事になる。

 後は、ソウセキの現実での居場所だ。ソウセキは追跡されないよう仕掛けをしているらしい、ギルド戦は、その仕掛けを突破する時間を稼ぐ為の口実だ。


 このギルド戦で全てを白日の元に晒してやる。

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