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6 2人の仲

「酷いと思わへん? 僕を置いてミノタウロス倒しに行っとるなんて、ねえ? 管理者はん」

 影月は管理者と呼ぶ人物に話しかけるが、管理者は目も口も開かない。

 黒く麗しい長髪に黒いぴっちりスーツで見た感じは中性的、彼女はこの世界を管理する管理者。

 部屋の壁を覆うモニターの一つにザイン達が戦う姿が見える。管理者はそのモニターの方を向いた。


「私達には……その判断がつきません」

 機会のように冷たい声で影月に返事をする。

「なんやぁ、はよ勉強してなぁ」


「何故、アインは強いのでしょうか? あなたはどう思いますか?」

 管理者からの質問に影月は驚きを隠せない。管理者から質問されることは今まで無かった、あり得ないことだ。

「私達は、彼の判断力、瞬発力、思考力、その他諸々、そのどれもが一般人レベルと判断できます」

 今までのアインの戦いを思い出し、影月は答えを導き出す。

「せやなぁ、アインはんの戦績は覚えとる?」


「公式戦では一戦以外に負けはありません」

「そうやな、カインドはんに負けた一回以外にアインはんは引退まで負けてないんや」

「それが?」

「負けたくない相手って居るやん?」

 管理者の表情は変わらない。


「やはり、私達には分かりません」

「まあ、分かる時が来るとええなぁ」




 攻撃を避けられ続けミノタウロスはご立腹のようだ。俺にタゲを向け続けている。

「さっすが! 兄助だね! ベルさん! ティーナン! バフ行くよ!」

 ヒメキチのバフでベルとクリスティーナの攻撃力が2倍にまで跳ね上がる。


「ふっ、なら、オレも援護する! 魔王眼パラライズアイ」

 ミノタウロスが一秒だけ麻痺になり動きが止まる。

「くっ、流石ボス格! 制限があるか」


「十分、十分!」

 クリスティーナがミノタウロスの頭の高さまでジャンプする。

「ベル! 準備は?」

「大丈夫です! いつでもどうぞ!」

 ミノタウロスの足元で待機しているベルが返事をする。

「OK! 行くよ!」

 クリスティーナがミノタウロスの頭にハンマーを振り下ろす。

 ハンマーが直撃し、ミノタウロスが気絶し倒れる。


「発勁!」

 掛け声と共にベルがミノタウロスを殴った。

 ミノタウロスが弾け飛んだ。光の中から宝箱が落ちてくる。


「討伐完了だねー!」

 ヒメキチが俺に向かって飛び込んでくる。

「ふっふっふ、流石兄弟だったな」

 ゼロが肩を叩く。

「いや、だから、俺を褒め殺しにしてどうする」


 宝箱を開ける。

 ミノタウロスが使っていた斧が入っている。

「斧……斧かぁ……」

「一番のレアだよ?」

「使えなくは無いんだけど、やっぱり癖のない剣が欲しかった」

「また、一緒に頑張ろ?」

「そうですよ、まだ、今日始めたばかりですし、これからですよ」

 皆が口々に慰めてくれる。


「いや~久々に良い感じだったんじゃない?」

 色々漁ってから要塞から出てきた。ミノタウロスが落とした宝箱以外に何も無いとは。

「全然みんな衰えてないんだな」

「おじいちゃんみたい、まだまだあたし達若いんだから、っていうかあたしよりも若いでしょ」

 クリスティーナが耳を引っ張って来る。

「痛い痛い」

「ああ! ちょっとティーナン!」

 ヒメキチがクリスティーナの手を耳から外す。

「あ、ごめんごめん、そうだよね、ヒメちゃんの大事な人だもんね」

「むぅ」

 ヒメキチが頬を膨らませて怒っている。


「まあ、そう怒るな」

 ヒメキチの頬を摘まむ。

「ぷしゅー、ふへへ」

 ヒメキチの頬が緩んだ。

「ホントにデレデレだよねー、ちょっと引くくらい」

 ちょっとと言っておきながら、顔はドン引きしている。

「だって、好きなんだもん、ティーナンも好きな人が出来たら分かるよ、ね? えへへ」

 頬を引っ張られながら、蕩け切った顔になっている。

「あたしがドライなだけかもね」


「そもそもリアルでモデル、こっちではアイドルなのに恋愛なんて出来るのか?」

 ゼロが訝しげにクリスティーナを見ている。

「あんたよりは」

 クリスティーナは冷めた目でゼロを見返す。

「はぁ? どういう意味だ?」

 また言い合いが始まったようだ。こういう時はいつもベルは微笑んでやり過ごす。それに倣うことにしよう。

「あたし、モテるから引く手数多なんだよねー」


「オレだって今はモテてる」

「子供からでしょ?」

 クリスティーナは呆れた顔でゼロを見る。

「残念だが、今は人妻にもモテる」

 子供の親にもモテるようになってしまったのか。

「あんた、どっちにも手を出さないでよ」

「オマエはオレを何だと思ってる」

 ゼロが肩を落とした。




 道の先から禍々しいオーラを纏った何かが歩いて来ている。

「アレ何?」

 それを指さす。

「ああ、あれはね、野良リッチ」

「野良リッチ、え? 野良……リッチ?」

 野良とリッチ、かけ離れた言葉の列に聞き直す。

「そうだよー、レアアイテム落とすんだけど、強いんだよね。レベル99だし」

 ヒメキチが微妙な顔をしている。かなり強いってことか。


 野良リッチが杖を掲げた。杖の上に闇が集まる。

「来そうですね。こっちをロックオンしてますね」

「ベルさん! ベルさん! これ結構ヤバイ奴だよね!?」

 ベルは悟った顔をしてヒメキチは慌てふためいている。


 野良リッチの闇魔法が飛んで来る。

 闇魔法は言い合いをしている二人の間を通り過ぎ、地面にぶつかり爆発した。

 二人がゆっくりと同時に野良リッチの方を向く。


「魔王砲カイザーハウリング!」

 ゼロの魔法ビームで野良リッチの杖を破壊する。野良リッチの体力が半分消し飛んだ。

「そーれっ!」

 魔法の終わりと同時に野良リッチの後ろに回り込んで居たクリスティーナがハンマーを振り下ろす。

 野良リッチの残りの体力が一撃で消えた。

「ふぅ」「よし」

 二人は何事もなかったかのように言い合いを再開した。


「本当にこの2人は……ねー? 兄助」

 ヒメキチが腕に抱き着いてくる。

「ああ、うん、そうだな」

 野良リッチが落とした宝箱を開ける。

「杖……」

 リッチが使っていた杖だ。

「それも最高レアなんですけどね……」

「えぇ……」

「兄助が物欲センサーにやられてる」

 ショックで膝を着く。後ろで繰り広げられるゼロとクリスティーナの罵倒の応酬、ベタベタなヒメキチ、悟ったベル、もうちょっとゆっくりやりたい……

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