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59  女子会の妙

「ごちそうさまでした」

 凛さんの好きなラーメン屋で夕食を食べた。

「ごちそうさまでした。どうでしたか?  兎乃君」

「美味しかったです」

 不安そうだった凛さんの顔がパァッと明るくなる。

「それなら、また一緒に行きませんか?」

「良いんですか?」

「それは私も兎乃君と行くのは楽しいですし」

 凛さんが少し照れる。

「それなら、スイーツフェスがあるんですけど……」

「あ、それはちょっと……」

 拒否られて固まる。

「え、え、そんな……」

「スイーツは胸焼けするので、また期間を置いてにしましょう」

 頬を膨らませる。

「そ、そんな顔しないでください」

 困った顔をしている。それが可愛い。

「ええー」


 見た事ある顔が見えて隠れる。

「どうしたんですか?」

「嫌な奴の顔が見えた」

 男2人と女3人、男の1人は広田啓斗、病院で会った広田刑事の息子で同じクラスだ。怨嗟の声を上げる事も無く何もかも無関心な表情をいつもしている。サッカー部のエースでウェイ系なので関わりたくない。

「それなら、あそこの服屋さんでやり過ごしませんか?」

 少し先に凛さんが示した服屋がある。

「流石、凛さん」

 凛さんの手を引き服屋に逃げ込んだ。


「何見てんだ、啓斗、何か面白いもんでもあったのか?」

 啓斗は兎乃達から視線を逸らす。

「ねえよ」

「ねえのかよ」

 隣で茶化している男は伊藤淳也、啓斗と同じくサッカー部で正真正銘のウェイ系だ。

「つまんねーよなー?」

 淳也は女子3人から賛同を得ようとしている。

「え、全然、啓斗君と一緒に居るだけで楽しいけど、ね?」

「ねー」「ねー」

 サッカー部のエースという勝ち組にあやかりたいだけ、そう感じた。

 しかし、この場から逃げられもしない。飽き飽きする。




「第一回女子会開催しまーす!」

「イェー!」

 都内某所にあるティナの部屋、部屋の中心にはたこ焼き器が置いてあり、それを女子達が囲んでいた。

 部屋の主、ティナに、姫花、そして、加恋と莉乃、明日葉がたこ焼き器を囲んでいる。

「ところで、凛はよかったの?」

「うーん、でも、凛さんが居ないと兄助大変な事になるんだよね」

 ティナの疑問に姫花が答える。

「兎乃、何やらかすの?」

「カップ麺に七味とかデスソース突っ込んで食べて、倒れてるとかあるし」

「それは、凛さんが居ないとダメそうですね」

「あいつ、生活力無いのか」

「無いわけじゃないんだけど、ある分厄介かも」

「ま、まあ、凛居るから大丈夫でしょ」


「くしゅんっ!」

 凛さんの服を見ていると凛さんが可愛く、くしゃみをした。

「大丈夫? 」

「はい、少しムズムズしただけです」


「凛には悪いけど、たこパ始めよ!」

 ティナが材料を用意する。

「たこパ、初めてです!」

 加恋は目を輝かせている。

「って言うか、その人気モデルの部屋に呼ばれてたこパって私には恐れ多いというか……」

 莉乃は正反対に恐縮している。

「何言ってんの。姫ちゃんの友達でわたしにも紹介してくれてんだから、もうわたし達友達でしょ」

 莉乃の隣にティナは座り抱きしめた。

「ひゃあ!?」

「そのスカート、この前雑誌でわたしが着てた奴じゃん、ありがとね、莉乃ちゃん」

「ひゃいい」

「ティーナン、莉乃ちゃん気絶してる」

 莉乃は口から魂が抜けかけている。

「莉乃ちゃん、純真無垢なんだからね!」

 ティナの反対側から姫花が莉乃に抱きついた。

「たこパ……」

 たこ焼き器を見つめて加恋は呟いた。


「チーズ入りと普通の奴と……チョコは後かな」

 ティナが適当に中身を焼いている奴に入れていく。

「わぁ」

 その様子を加恋を見つめている。

「加恋ちゃん、すっごい見てるんだけど」

「友達とたこパ、初めてのこと緊張してます」

 目を輝かせてティナに振り向いた。

「天使か!  いや、聖女だったわ」

「加恋先輩、友達少ないから」

「え!?  こんなに可愛いくて良い子なのに!?」

「まあ、高嶺の花だからねー」

「高嶺の花なんて、そんな」

「モデルやらない?」

 ティナが加恋の手を取る。

「申し訳ありません、芸能活動は父母から禁止されておりますので」

「ちぇー」

「ティーナン、焦げてる」

 姫花は手際よく出来たたこ焼きを皿に移していく。

「ごめんごめん」


 たこ焼きが焼き上がり、食べ始める。

「これ、見てよ。流石にあり得なくない?」

 ティナが自分が写っている雑誌を取り出した。

 表紙にはティナが写っているが隣のモデルが肘を被せている。

「確かにあり得な……水族館デートかぁ」

 姫花の目は表紙に書いてある水族館デートの文字に釘付けになっている。

「……見る?」

「見る!」

 姫花はティナから雑誌を受け取り食い入るように読んでいる。

「チーズもウインナーも美味しいですね」

 加恋は一人でたこ焼きを頬張っている。

「加恋ちゃんはブレないね」


「やっぱりあいつと行くのか?」

「一緒に行く?」

 起き上がった莉乃が姫花の後ろから雑誌を覗いていたのだが、姫花の一言に照れて顔を隠す。

「兎乃もそうだけど、姫ちゃんも大概、天然たらしだよね」

「私は兄助に一途だもん」

「あいつが関わらなければ、クールで優しくて女の子からの人気も高いんだけど」

「りーのーちゃーん?」

 姫花が莉乃の頬を挟む。

「うわぁ、ごめん、ごめんって姫花ちゃん!」

「ごちそうさまでした」

 加恋が自分の皿を片付けている。

「マイペース……」


「チョコも美味しかったです」

「良かった良かった」

 全員が食べ終え、ティナが紅茶を沸かす。

「兄助、何してるんだろ」

 姫花がスマホを取り出す。加恋は後ろからスマホを覗き、ティナはニヤニヤして姫花を見ている。

「もう、テレビ電話にするから、そんなに見ないでよ」




 急にスマホが鳴り身構える。シューベルトだったり、桜川刑事だったりで、恐怖症になりかけている。

 しかし、表示には姫花の文字が出ていた。

「もしもし」

「もしもし、あにす……け……え?  今何処に居るの?」

「前行ったショッピングモールの帰り道?」

 画面には加恋や莉乃にティナまでも映っている。

「兎乃君、誰からですか?」

 凛さんが画面を覗き込む。

「え?  あれ?  凛さん?」

「姫ちゃんにティナちゃんに加恋ちゃんと莉乃ちゃんまで居るんですね」

「もしかして、デートだったり?」

 ティナの言葉に凛さんが赤くなる。

「そ、そういう訳では……無いと思うんですけど」

「兄助、何でショッピングモールに?」

「スイーツフェア」

「あ゛っ゛!?」

 姫花がしまったという顔をして頭を抱える。

「今度私も行きたいです!」

 加恋の言葉を聞き、加恋以外の全員が俺を睨む。

「え?  え?  ええ!?」

「兎乃、あたし、話があるの。今度で良いから、時間開けといてね。結構長く」

 ティナが怒っている。これは間違いなく説教だ。

「ええー!?」

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