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58  究極のデカ盛り全部乗せ乱世パフェ、一つ

「兎乃君、テンション高いですね」

 昼ご飯を食べ終わり、少し休憩してから、凛さんと二人で街に繰り出す。

 目指すは大型ショッピングモール。

「そう?」

 つい、ニヤけてしまう。

「はい、何かあるんですか?」

 凛さんにスマホを見せる。

「……究極のデカ盛り乗せ乱世パフェですか?」

 凛さんが読み上げた名前に我ながら興奮が隠せない。

「今、スイーツフェアがあってさ。色んなお店が参加するデカ盛り乱世って言うイベントがあるんだけど、そこに参加したこのお店、めちゃくちゃ美味しいんだよ!  少し根は張るけど絶対食べたいと思ってたんだ。まあ、最近忙しくて最終日の今日まで行けるチャンス無くてさー」

 凛さんが唖然としている。早口で語り過ぎた。ドン引きされたかも……

「あ、ごめん……」

「あ、いえ、兎乃君がこんなに興奮するなんて珍しいって思っただけです。静か過ぎて、たまに、もしかして死んでる?  と思う時があるので」

 加恋にも同じ事を言われたのを思い出した。

「よく言われる」

「え!?  よく言われるんですか!?」

 言った凛さんが驚いているのが凄く謎だ。

「加恋に言われた」

「加恋さん?  なるほど」

 納得したようだが、加恋で納得した理由も謎だ。




 姫花と水着を買ったショッピングモールに着いた。

「まだおやつの時間には早いか」

 時刻は午後2時、まだ食べるには早い。

「買い物する?」

「買い物ですか?」

 本気で悩んでいる。少し真面目過ぎるのが可愛い所だ。

「別にそんなに悩まなくても」

「そうですよね。少しまわってみましょうか」

 凛さんはてへっと笑った。


「水着、試着室、うっ、頭が……」

 頭を抱えてうずくまる。

 姫花と来た水着を売っているお店の前に二人で立っていた。

「ええ!?  兎乃君、大丈夫?」

 凛さんが頭を撫でてくれて、少し落ち着いた。

「姫ちゃんが海に行くかもって言っていたので、私も水着を買おうと思ったんですけど、やめときましょう」

 店の前から去ろうとする凛さんの腕を掴む。

「大丈夫、大丈夫だから大丈夫」

「そこまで言うなら……」


 姫花と違いテキパキと凛さんは買って店を出た。

 凛さんは可愛らしい装飾の凝った泳ぎには向いてないビキニを選んだ。

「もしかして凛さん泳げない?」

「はい、恥ずかしながら、全く泳げません」

 恥ずかしそうに顔を赤らめる。

「いや、俺もそんなに泳げないし」

 学校で習った以上の事は出来ない。人に泳げると誇れる程の実力は無い。

「ビーチボールも買ったし、そっちで遊べば良いんじゃ無いですか?」

「そうですよね」

 朗らかな笑顔になった。

 ただ、凛さんのパワーでボールをぶつけられて俺が耐えられるかどうかが不安だ。




「ついに、ついに……」

 お店に入り、注文も終えて、あとは待つだけになった。

 緊張した面持ちで凛さんが俺を見ている。

「兎乃君」

「何ですか?」

「3キロもあるんですね」

「そうですね」

 メニューを見てからずっとこんな感じだ。

「そんなに食べたら糖尿病になりますよ?」

「最近は甘いもの抜いてたから大丈夫」

 凛さんに親指を立てる。心配は分からなくも無い。

「いつもあまり食べないから、ちょっと心配です」


「究極のデカ盛り全部乗せ乱世パフェ、一つ」

 いつの間にか見た事も無い大きさのパフェを持ったウェイトレスが立っている。色取り取りのフルーツとアイスに、大量の生クリーム、チョコレート、クッキー、苺のムースなど、ありとあらゆる甘いものがそのパフェに集まっている。

「あの、普通にクレープが乗ってるんですけど……」

 凛さんは困惑しながらパフェを眺めている。

「全部乗せですから」

「全部乗せでも普通乗せませんよ?  乗せませんよね? 」

 ボリュームに圧倒され、混乱している。

「いただきまーす」

 アイスを頬張る。糖分控えめにしてあるけど甘くて美味しい。

「う〜ん、さいこ〜。凛さんもどうぞ」

 勧めたら凛さんが何故か固まった。美味しいのに。


「あの、兎乃君?」

「何ですか?」

 何故か周囲の客からも視線を感じる。

「そんなにパクパク食べれるものなんですか?」

 気がつけばもう残り半分くらいになっている。

「美味しいし、色々あるから、飽きずに全然行けます。凛さんは食べないんですか?」

 凛さんも普通のパフェを頼んでいるのに、手をつけていない。

「え?  あ、はい、食べます」

 アイスをスプーンですくう。

「美味しいから、少し食べてみてください。あーん」

「え?  え?  今日の兎乃君、積極的過ぎです!  まだ心の準備が!」

 アイスを凛さんの口に突っ込む。

「はむっ!?」

 凛さんがゆっくり味わっている。育ちが良いのが出ている。

「確かに美味しいですね。量を考えて砂糖を控えめにしてあるのが分かります」

「でしょ?」

「あと少し、兎乃君の味もします」

 周囲の客が咳き込んだり、飲み物を吹き出した。

 とんでもない一言にスプーンを落としかけた。

「いや、しないから! 」


「ごちそうさまでした」

 パフェを全て食べ切った。周囲の客が俺を見て口を開けたまま動かない。

「完食記念のキーホルダーです」

 いつの間にかウェイトレスが立っていてキーホルダーを置いて行った。

 急に出て来てスッと消える、幽霊かよ。

「全部食べたんですね……びっくりです」

 笑顔でうなずく。

 すると、凛さんもつられて笑顔になった。

「夜ご飯まで時間はあるし、また、買い物かウィンドウショッピングでもしませんか?」

「そうですね。ちょっと歩いてお腹を空かせないと、流石に食べられませんよね」

 代金を払うためにレジに行く。

 レジを置いているカウンターの下からスッとさっきのウェイトレスが出てきた。

 体がビクッと反応する。

「究極のデカ盛り全部乗せ乱世パフェと苺パフェ、合わせて4,500円になります」

「結構お高いですね」

「量が量だから、むしろ安いくらい」

「そうなんですか……」

 凛さんが頭を抱えている。

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