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57  神様への不遜

「んああああ!?」

 急に地面が消えた。体が落ちて、地面に叩きつけられた。

「いったぁぁぁ!?」

 ゲームの中の落とし穴は見つける手がかりが全く無い、クソトラップだ。

「楽しそうだね、アイン」

 上から落とし穴の中の俺を笑って見ているカインドさん。

「な訳あるかぁ!」

 落とし穴の中で暴れる。

「早く助けろー!」


 やっとカインドさんが引き上げてくれた。

 ここはダンジョン、蟹の洞窟、ふざけた名前の蟹しか出てこないダンジョンだ。

「疲れた……」

「そんな中年みたいなこと言ってると老けるよ?」

 殴りたくなる怒りを堪える。

「それもこれも、全てあんたが原因だろ!」

「そうだった?」

 すっとぼけた顔をしたので殴る。そして、綺麗に避けられた。

「ぬぐぐぐ」

 何回殴りかかっても全て避けられた。

「イライライライラ」

「はいはい、悪かった悪かった」


「はい、アイン、ゴー」

 やる気の無い指示がカインドさんの口から出てきた。

 目の前にはダンジョンのボスの蟹が居る。一生この蟹だけ食べてもなくならないくらい大きい。

「大丈夫、大丈夫、あれ、弱いから」

 カインドさんは大あくびをしながら壁にもたれかかった。

「あんたも戦えよ」

 カインドさんは耳を手で塞いだ。

 ため息を吐いて、蟹に向き直る。

 そして、剣を投げつける。剣は甲殻に弾かれ手元に戻ってきた。

「新しい曲芸?  5点かな」

 いつも通り煽ってくる。

「曲芸でも無いし、5点は低過ぎだろ」

 蟹が爪を叩きつけてくる。爪を掴んで蟹の動きを止める。

「いつゴリラと中身入れ替わったの?  あ、ごめん、昔からだった」

「この野郎……」

 カインドさんが蛇腹剣を振る。蛇腹剣は蟹の関節に巻きついた。どんな動きなら、そんな事が出来るのか不思議だ。

「ほら、チャンス」

 カインドさんが動きを止めている間に終わらせてしまおう。

 大型のハンマーを取り出し、蟹に叩きつける。蟹は呆気なく沈んだ。


「お疲れー」

 カインドさんが宝箱を漁っている。

「要らないの?」

 欲しい物は特に無い。それにこの程度の蟹なら、一人でも倒せる。

 宝箱を漁り終わり、カインドさんが渋い顔で帰ってくる。

「外れ、次行こう、次」

 もう一周か。毎回カインドさんに落とし穴に落とされるこっちの身になって欲しい。

「自分はさ。アインと一緒なら楽しいし、楽」

「楽の方が本音だろ」

「まあね。でも、自分達なら何にも負けないでしょ?  負けないなら、何でも楽でしょ」

 ふざけているのか本気なのか分からない顔だ。

「でも、まあ、飽きては来るよね。次の大型アプデは近いけどさ」

「大型大会用のアプデ?」

「そうそう。個人大会も開けるようになるんだってさ」

「へー」

 それにはさほど興味は無い。

「ダンジョンも追加、次は神様くらい来て欲しいところ」

 ゲームのボスで神っての割とあるにはある。それを望むかどうかは別だが。

「神様ねぇ」

 不敵なカインドさんを眺める。

「自分達相手なら神様レベルじゃないとね」

 不遜不敵極まりない。

「罰当たれ」

「当たれ!?」

 カインドさんと顔を合わせて笑った。




「う、うぅ……」

 目が覚める。目の前には凛さんの顔があった。リビングのソファーで寝てたのか。

「おはようございます。兎乃君」

「おはようございます……」

「うなされてました。大丈夫ですか?」

 心配そうに救急箱を持っている。

「大丈夫」

 起き上がりソファーに深く座る。まだ少しぼーっとする。過去の事を夢見るなんて思いもしなかった。

「お昼ごはん作りますね。もし、体調悪かったらすぐに言ってくださいね」

 凛さんがキッチンに行って料理をし始めた。


 カウンターから凛さんが料理をするのをじっと見つめる。

「どうしたんですか?  もう少しご飯は待って欲しいんですけど」

 凛さんが困った顔で食べられる物を探し始めた。

「いや、違うんだけど」

「あ、姫ちゃんですか?  ティナさんと遊びに行きましたよ」

 そうだったのか。

「いや、それも違うって」

「え、えっと?」

「料理手伝いたい」

 凛さんは困った顔をしている。

「大丈夫ですよ。それに私、兎乃君のご飯作るの好きですから」

「それは良い奥さんになれそう」

 凛さんの顔が真っ赤になる。

「手伝いたいんだけど」

「……ダメです」

 少し戸惑って、はっきりと断られた。

「辛過ぎるのも甘過ぎるのも健康に悪いですから」

 信用が全く無い。

「そんな事、俺一人の時しかやってないんだけど」

「大人しく待っていてください」


 凛さんが手際良く冷やし中華を作り上げる。栄養のバランスも良く、見た目も華やかで美味しそう、これは俺には作れない。

「夜食べて帰るって姫ちゃん言ってましたよ」

 珍しい、用事で昼空ける事は前にもあったが、夜居ないのは初めてかもしれない。

「そっか、いただきます」

「はい、召し上がってください。私もいただきます」

 凛さんの料理は何を食べても美味しい。レパートリーも充実していて、並のファミレスよりも多い。

「夜、食べに行かない?」

「え、えっと?」

 凛さんが困っている。

「いつも作ってもらってるし、そのお礼」

「お礼なんて、お給料も貰ってますし」

 頑なに断ろうとする凛さん、しかし、その顔からは迷いが出ている。

「それなら、俺が食べたいものについて来てくれるだけで良いから」

「え、えぇ」

 迷いが大きくなったが、まだ拒んでいる。

「お願い」

「もう、分かりました」

 ダメ押しが効いたのか、凛さんが折れてくれる。

「凛さん何食べたい?」

「もう、全然さっきと言ってる事違います!」

 凛さんの語調は怒っているが顔は笑っていた。

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