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50  海底の炎

 アトランティスの一角、袋小路でシューベルトはメニューを開き解析をしていた。

 シューベルトの顔が歪む。何重にも重ねられたセキュリティを一つ一つ解除している。しかし、解除したセキュリティの数はもう百を超えていた。

 終わりの見えないセキュリティと地震への思いが表情に出ていた。

「珍しい」

 コツコツと足音が聞こえる。しかし、シューベルトは無視してセキュリティを対処する。

「クソだな。無視すんなよ、ゴミが」

 ノイズ混じりの機械音声にペストマスク、変装で自分がしていた姿だ。変装の案はこいつだ。

「付き合っている暇は無い」

「チッ、こっちはわざわざご足労して、こんなゴミ溜めまで報告にやってきてやってるのによ」

 悪態を吐き続ける。醜い奴らだ。

「報告なら手短に」

「ブラムが殺った中華マフィア、あのゴミ仲間に全部話してやがった」

 日本に進出してきた中国系マフィアの右腕にクーデターを起こさせ乗っ取る計画は、奴がしてしまった一つのミスと桜川哲也の手によって真相がバレる所だった。

 そこでブラムに口封じさせたのだが、奴は身の危険を感じ仲間に話していたようだ。

「ソウセキ、貴方こそ、足ついていませんよね?」

 一切振り向かず尋問する。

「密入国してきたカスだ。コンクリ詰めて東京湾に沈めればサツも分かんねえよ。お前も見たかったのか?  生きたまま沈められる事を知った奴らの表情が」

「下衆が」

 吐き捨てる。こいつは悪事を楽しむ事ができるサイコパスだ。

「同じだろ。それとも薬物で気持ち良い状態で殺してやる分、自分達は上質だとでも言いたいのか? 」

「薬物に手を出さなければ死ぬ事は無い。それでも彼らは手にした。それだけだ」

 マジカルステッキを売る相手はしっかりと選別している。次の世界に行けないクズから金を受け取り天国へ送る、これがフィクサーの考え方だ。

「お前らは自分達を救世主か革命家か何かと勘違いしてるのか?  実際は俺と同じ悪党なのにな」

 実行部隊のブラムは弱みを握られている為、ソウセキに手が出せない、ソウセキ自体、悪党としての知識は豊富で、薬物に手を出すようなタマじゃない。仕方なく契約している状態だ。

「良い事教えてやるよ。悪党ってのは、必ず何も成し遂げられない。だが、最後を誰かに押し付ければいくらでも甘い汁は吸ってられる。精々頑張れよ」

 ソウセキは去っていった。享楽に生きる悪人である彼にはフィクサーの抱く大義は分からないだろう。




「くっ」

 先回りしてヒメキチの前まで行き、ポセイドンの水流をウタヒメで斬り裂いて、ヒメキチを守る。

 斬り裂かれた水流は弾け飛んだ後、棘のような形になり雨のように降りかかってくる。

 避ければ後ろに居るヒメキチに当たってしまう。ガードしても全て防ぎきれる保証はない。

 それでも、やるしか無い。

 野球ボールくらいの大きさの水の棘をウタヒメとロンギヌスでガードする。

 バキッという音が上から聞こえる。上を向いて確認する余裕は無い。

「兄助!  リヴァイアサンが上から落ちてくる!」

 今の音はリヴァイアサンがアトランティスに侵入した音か。

 リヴァイアサンが視界に入る。リヴァイアサンは城の真上に落下した。

 体が痺れるほどの地震と音がする。体勢が崩される。


 その隙を狙われ、水の棘が右肩に刺さる。その衝撃で吹っ飛ばされる。

「ぐぅっ!?」

 急所でもない右肩に当たっただけなのに体力が全てもっていかれた。食いしばりが無ければ死んでいる。

「兄助!」

 絶叫のようなヒメキチの声が聞こえる。ヒメキチがこっちに走っている。それを見たポセイドンがトライデントでヒメキチを狙い澄ます。

「来るな!」

 飛び起き、突き出されたトライデントからヒメキチを守る。

 リヴァイアサンが落ちてきた時の衝撃で体はまだ痺れているがなんとか防ぎ切れた。

 ポセイドンを睨みつける。

「ヒメキチに手を出した分、ツケは払ってもらう」

 トライデントを斬り払う。


「ダークネスストーム」

 魔法を唱えると闇の竜巻が出来る、闇の竜巻は魚人を吸い込み、魚人を殲滅していく。

 無限湧きだから、また出てくるが、それでも今は数が少ない。その間にポセイドンとリヴァイアサンにケリをつければ良い。


 これ以上攻撃をガードする気は無いのでウタヒメを片付け、ロンギヌスを構える。

 リヴァイアサンが暴れて、地震がまた起き始める。最初に比べたら大分慣れた。

 ポセイドンがトライデントを構える。

 正面から全力で走る。何度もくり出される突きを避けながらポセイドンに走る。

 そして、ポセイドンの股下を抜けそのまま走る。ポセイドンはバックステップをした。

 ポセイドンは接近されると距離を開けるためにバックステップをする。AI故にそのルーティンからは抜け出すことは出来ない。そのうえ、バックステップの距離も基本的一定だ。距離が一定ならバックステップの着地点は少し考えれば分かる。


 攻撃力が跳ね上がる。ヒメキチがバフをかけてくれている。

 ポセイドンの着地と同時に足をロンギヌスで斬り払う。凄まじいダメージが入ってポセイドンはバランスを崩し、膝をついた。

「まだだ。お前はもっと落ちろ!」

 ポセイドンの腕にロンギヌスを刺し、そのまま地面に叩き伏せる。

 顔面から地面に叩きつけられポセイドンはジタバタする。ポセイドンはジタバタしながら水流を放った。

 水流は追尾する上に、斬り払ってもバラバラになって襲いかかってくる。

 水流を斬り払う。バラバラになり水の棘に変化する。

「フレアピラー」

 魔法を唱えると、太陽まで昇るかのような巨大な火柱が出来る。火は水で消えるが、水もまた火の熱で蒸発する。

 水の棘は俺の前に出来た火柱に突っ込んで行き、蒸発していく。


「お前は焼き魚にしてやるよ」

 火柱はポセイドンに向かって進んでいく。

「ああ、悪い悪い、言い忘れてたが、料理は苦手なんだ」

 火柱は、起き上がり逃げようとしていたポセイドンを飲み込み焼き尽くした。

 宝箱が火柱の中で出来る。


「次はお前だ」

 リヴァイアサンを睨む。散々地震で苦しめられた分、恨みは溜まっている。

 リヴァイアサンは水を吐き出し火柱を消そうとするが火柱の熱で先に水が蒸発していく。

 ポセイドンを焼き尽くした火柱はリヴァイアサンに向かう。

 リヴァイアサンは火柱に噛みついた。火柱を少しずつ口の中で押さえ込んでいる。巨体に任せた技に驚きを隠せない。

 ロンギヌスを火柱に投げる。


 ロンギヌスは火柱の炎を纏い、リヴァイアサンの口の中に入る。

 そして、リヴァイアサンは爆発し、燃え上がった。

 爆発で飛ばされたロンギヌスは近くの地面に刺さった。

 ロンギヌスは自動で手元に帰ってくるスキルに超攻撃力、欲しいものが全て揃っている。


「兄助……」

 落ち込んでいるヒメキチの頭を撫でる。

「終わった終わった。早く帰って甘い物が食べたい」

「むぅ」

 何か言いたげな顔だが、感情に任せて話すより、一回整理してから話した方が良いだろう。

「ザイン君」

 シューベルトがやってきた。

「終わったのか?」

「ええ、失敗で終わりました」

 一瞬固まる。

「失敗?」

「はい、コントロールルームには行くことが出来ましたが、セラフは全自動で動くシステムらしく、ここからは止める事が出来ませんでした」

 何を言えば良いのか分からない。

「止める方法は分かりました」

 全く収穫が無かったわけじゃないようだ。

「セラフを倒す事以外は何もありません」

 淡々と絶望をシューベルトは突きつけてくる。

「それ、無い事と一緒じゃ無いか」

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