表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/110

49  海神と海竜神の挟撃

「おい、来たぞ」

 シューベルトが指定した日時きっちりにアトランティスの待ち合わせ場所に行く。

 当然シューベルトは先に来て待っていた。

「時間より少し早いですが、会議と行きましょう」

 ヒメキチは俺の後ろからちょこっと顔を出してシューベルトを睨んでいる。

「少しずつ困った事になりました」

 作戦も何も聞いてないのに、いきなり悪い事を聞かせるのか。

「ポセイドンのボスエリアがアトランティス全体になっています」

「は?」

 シューベルトがマップを見せる。チートによる解析で全てのモンスターの位置、ボスエリアが表示されている。ポセイドンとリヴァイアサンのボスエリアが完全に重なっている。

「最悪な事に、どちらかと戦闘を始めると、もう片方も近づいてきます」

 いつもの事だけど、シューベルトは他人事のように言う。

「私がセラフのコントロールを止めます。止めるために、ここ、アトランティスからこの世界の中心、コントロールルームに行ける扉をハッキングして開けます。ただ、当然リヴァイアサンに狙われます。ザイン君には、リヴァイアサンを止めて頂きたい」

 無理難題を涼しい顔で押し付けてくる。

「リヴァイアサンを止めればポセイドンも集まって来るんだろ?  死ぬわ」

 ヒメキチもうなずいている。

「出来なければセラフが止まらないだけです」


「そもそも確実にセラフが止められるのか?」

 当然の疑問をシューベルトにぶつける。

「いえ、3割くらいですかね」

「成功率3割かよ……」

 あまりの低さに笑いも出ない。

「3割もあるって言ってください。相手は世界最大の企業のプロテクトなんですから」

 正論ではあるが、こちらも命をかけている。アトランティスでHPを0にされれば何が起きるか分からない。最悪の場合、姫花のようにゲームの中に意識が取り残され、死ぬまで起きられなくなる可能性もある。

 死ぬまで起きられないは流石に言い過ぎか。


「リヴァイアサンとポセイドン、同時に両方とも相手にしないといけないのか。流石にきつい」

 シューベルトに言い放つ。

「それが?  君が出来なければ私も同じように死ぬだけです」

 問答無用、取り合ってくれる気は無いらしい。顔の左半分の表情も変わらない。

「はぁ、何でこんなに厄介な事ばっかり……」

「ファイト、私がついてるから頑張ろ?」

 あざといポーズで応援してくれる。

「やるか」




 ポセイドンを探しながらアトランティスを歩き回る。

「綺麗だよね」

 上を泳ぐ魚達を見てヒメキチが呟く。

「水族のアクアリウムみたいだな」

「うん、水族館にもデートに行きたいなぁ」

 乙女な顔で願望を口にする。

「そうだな」

 曖昧に答えてお茶を濁す。

「大丈夫だよ、兄助は私を幸せに出来るもん。私は兄助と一緒に居て幸せだもん。だから、私を遠ざけないで」

 真剣な顔で俺を見つめている。

「本当に……いや、何でもない」

 頭を掻く。そして、先を歩く。

 誘拐されたりと傷つくことも多いのに姫花は何で……いや、考えのはやめにしよう。




 それにしてもポセイドンもリヴァイアサンも現れない。リヴァイアサンなんてアトランティスと同じくらい大きいのに何処に消えたんだ。

「出ないね。出なかったらこのままデートして終わりーってならない?」

「さあ?  出ないに越した事は無いけどな」

 威圧感のある何かを感じる。さっきまでは何も無い平穏そのものだった、それが一瞬の内に空気が変わった。


 目の前の何も無い空間からポセイドンが現れ、魚人達も周りから出てきて、俺達を囲んだ。

 日の光が何かに遮られ、暗くなる。それと同時に地震が起こる。

 真上でリヴァイアサンがアトランティスの泡に噛み付いている。

 ポセイドンがトライデントを振り上げた。

「さあ、始めるか」

 ロンギヌスでトライデントを防ぐ。リヴァイアサンの攻撃で起きる地震もあり、バランスを崩しそうになる。これは防御するより回避した方が良さそうだ。


 全ての思考を戦闘に集中させる。

 ポセイドンの動きを観察する。巨体で動きのキレが良い、速さもパワーも今までのボスモンスターとは比べものにならない。そして、体力も桁違いと来ている。

 だが、本当の問題は無限に湧いて来る魚人からどうやってヒメキチを守るか、だ。

 ヒメキチに近づく魚人の顔を槍で刺す。

 ヒメキチは地震で立っていられない状態だ。バフも頼める状態では無い。

 時間はかかるが、ポセイドンのターゲットを取り続け、攻撃を回避しながら、魚人を処理していくしか無い。


「兄助、ごめん」

 不意にヒメキチが謝った。

「いや……」

 励まそうと思ったが、ポセイドンの攻撃を避けながらは、話せない。舌を噛みたく無い。

 魚人の首をナイフで掻き切る。影月の動きと比べるとこいつらの動きは遅すぎる。

 魚人が剣を振り上げる、しかし、振り上げた時には、ナイフが届く場所に近づいている。そして、ナイフが魚人の首に刺さる。

 傷が浅かったのか魚人のHPは残っている、魚人はナイフが刺さったまま剣を振り下ろした。

 ナイフに蹴りを入れ捻じ込む。やっと倒れた。

「兄助!  後ろ!」

 ヒメキチの声に反応して前に回避する。さっきまで居た場所にトライデントが突き刺さり水流の竜巻が出来る。

 ポセイドンはすぐにトライデントを戻し何度も突いてくる。リヴァイアサンの起こす地震で連続で回避が出来ない。

 仕方なくウタヒメを取り出し、ロンギヌスと二本でトライデントを防ぐ。一撃一撃の重さが尋常じゃない、何度も体勢を崩され、すぐに防御体勢を取って防御する。

 ポセイドンは正確に俺を狙って攻撃してくる。トライデントを大きく回避し、ポセイドンに走る。ポセイドンの巨体とトライデントの長さでカウンターも出来ない程距離があり接近しなければならない。

 ロンギヌスを長く持ち、突き出す。しかし、ポセイドンがバックステップをする。それだけで数メートルは距離を作られてしまう。

 そのままポセイドンに走る。ポセイドンはトライデントを掲げた。水の玉がいくつも空中に出来て、そこから高圧水流がビームのように襲いかかってきた。

「兄助!」

 ヒメキチの叫ぶ声が聞こえる。狙いは俺じゃ無かった、ヒメキチだった。

 ヒメキチに水流が迫っている。

 身を翻しすぐにヒメキチに走った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ