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41  彼岸の狩人

「一つ聞いて良いか?」

「何だ?  私は大人の女だ。何でも答えてやろう」

 パライソの対応にマオが肩を竦めている。

「カルトの巫女ってどういうことなんだ?  日本だぞ。非常識過ぎるだろ」

「私だってなりたくてなったわけじゃない」

 意外な事に真面目に否定された。

「未来予知なんて出来なければ、こんな世界に足を踏み入れることなんて無かった」

「悪かったな」

「まあ、信者に貢がせるのは楽しいけどな」

 もしかして、ロリコンしか信者が居ないのでは?

「何か言いたいことでもあるか?」

 ジト目で睨まれた。

「いや、別に」

「そうなら良いが、私は大人の、女だからな」

 胸を張っているが、平坦だ。崖だ。

 マオにマスクごとビンタされ、パライソに腹パンされた。

「失礼な奴だ」「レディに失礼よ。パピー」


 雑魚を突破しながら城に入る。

「パピーが居ると楽勝ねー」

「そうだなー、お前、何処のギルドなんだ?  良かったらウチに来ないか?」

「……結構です」

「そんなに嫌そうにする事無いだろ!」

 パライソがプンプン怒っている。幼女にしか見えない。

「まあ、それは仕方ないわね。日本一だし」

 パライソが固まった。

「ID調べればすぐ分かるんだから」

 ため息を吐く。

「え、ザインなのか?  ザインなのか!?」

 興奮気味に顔を近づけてくる。蝶を見つけた幼女か。

「そうだ。だから、寄ってくるな」

 肩を掴んで離す。

「だったら、私をお前のギルドに入れてくれ!  賞金は要らないから、頼む!」

 さっきまでの高慢な態度が嘘の様に頭を下げている。

「俺はギルドマスターじゃないから、無理だ」

「なら、ギルドマスターは?」

 城の奥を指差す。パライソは首を傾げた。




 城を登り玉座に入った。玉座だけでもかなり広い、野球のダイヤモンドくらいあるかもしれない。

 5メートルは超える大きな王の椅子の上に泡が浮いていて、その中にヒメキチが居た。

 敵も居ないし、助けて早く帰ろう。

 玉座に走り、泡に触ると、泡が割れてヒメキチが落ちてくる。抱きとめる。すやすや寝ている。

「パピー、感動の再会中悪いんだけどね」

 影が俺を覆う。

 恐る恐る振り返る。

 あの大きな玉座に負けないくらいの巨体で上半身半裸のおっさんが立っている。白い髭、三又の槍トライデント、つまり、こいつは。

「ポセイドンだぁ……」

「ふんっ!  不届き者が、わしが海の藻屑にしてくれる」

 喋った。それはそうですよね、海神ですからね。

 トライデントが振り下ろされる。

 トライデントを避けながらマオに走る。

「パピー?  こっち来るの?」

「ヒメキチを頼む!」

 マオにヒメキチを渡す。その直後、玉座の入り口で何かが光り、刃が飛んで来た。


 幾つもの刃が糸に繋がった武器、これは俗に言う蛇腹剣だ。

 武器としては扱い辛いが空間制圧力に長けている。しかし、これを使っている上位勢が居れば、かなり有名なはずだ。

 刃が地面から抜けて、地を這う様に戻っていく。

 この動きを見たことがある、いや、一時期死ぬほど見ていた。

 カインドさんの動きと完全に同じだ。だが、あの人は死んでいる。

「やっと見つけ……あれ?」

 蛇腹剣を持った少年とも少女とも言えない、美麗な人物が入って来た。


「誰?」

 マオに耳打ちする。

「あの少年は彼岸の狩人ダンテ、イタリアの優勝者ね。実力は折り紙付きなんだけど、性格に難ありって感じね」

 性格に難があるのは見れば分かる。

「こんな所で何をしているんですか?  ここは危ない所ですよ?」

 いきなり攻撃をしてきた人物と思えないほど穏やかな笑顔になる。

 ダンテ、シューベルトから聞いた名前だ。変装が功を奏し、まだ気付かれて居ないようだ。

「ザイン!  挟み撃ちにあってるんだからボーッとするな!  死ぬぞ!」


 パライソの言葉を聞き、ダンテの顔に影が落ちる。

「へー、あなたがザインですか、そうですか、死ね!」

 穏やかな天使のような表情から憎悪に満ちた悪魔のような顔になる。

 直球な殺害予告と共に蛇腹剣の刃が飛んでくる。うねうねとした軌道で予測し辛い、カインドさんの動きと完璧に同じで戸惑ってしまう。

 回避に徹してダンテの攻撃を避ける。後ろから襲いかかるポセイドンにも気を回さないといけない。

 攻撃するタイミングを測る。厄介なのはダンテを倒してしまうと、ダンテがヒメキチみたいに現実に戻って来れなくなる可能性がある事だ。


 ハンマーの柄に蛇腹剣が絡み付く。

「死ね死ね死ね死ね死ね!」

 これはこっちの話を聞いてくれるような感じじゃ無いな。発狂状態に入っている。

 絡みついたハンマーと蛇腹剣、お互いに動けない。

 その時、地面が大きく揺れた。

「ひゃう!?  地震!?  あれ、ここ何処?」

 ヒメキチが目を覚ました。

「あ!  兄助、おはよー!」

 こっちを見て目を輝かせている。ペストマスクを付けているのによく分かるな。

「おはよう、ヒメキチ。でも、今、そんなこと言ってる場合じゃ、いや、何でもない。とにかく起きて良かった」

 揺れに慣れてないダンテが尻餅をつき、蛇腹剣からハンマーが解放された。

 振り返り様にハンマーをポセイドンの足に叩き込む。

 ポセイドンのHPは1%も削れていない、思った以上にダメージが入らない。


「ザイン君!」

 シューベルトの声が聞こえる。地震でフラフラしながらシューベルトが玉座に入って来た。

「すみません。色々あって、リヴァイアサンが起動してしまいました。この地震はリヴァイアサンがアトランティスにタックルして起きているものです。はい」

 冷静に地震の原因を説明してくれるシューベルト。

「いや、はい、じゃないが」

 ダンテがシューベルトを見る。

「僕の邪魔をするなぁ!  シューベルト!」

 発狂したままシューベルトに剣を振り始めた。

「ダンテ、やめなさい」

 シューベルトはリボルバーで剣を撃って攻撃を防いでいく。

 パライソがダンテの背後から現れ、飛び蹴りを背中に入れた。

「ちっ!  これで良いか?  ザイン!」

「ナイスだ、パライソ!」

 身を翻し、ポセイドンの足にハンマーを叩き込む。ダメージは全然入らない。

「シューベルト、ここから出る事は出来るか?」

 ボス戦時はそのエリアから出る事が出来なくなる。ポセイドンを倒すのは時間がかかり、事故る可能性は大いにある。

 それならいっそのこと、シューベルトのチートでボス戦エリアから逃げた方が良い。

「ええ、出来ます。時間を稼いでください」

 ポセイドンと対面する。時間を稼ぐだけなら余裕だ。


「あれ?  私、服変わってるし、槍持ってる。兄助、使う?」

 今更、気がついたのか、マオに抱き抱えられなが服を見て驚いている。

「……マオさん!?  何で私マオさんの抱かれてるの?」

 驚いて顔を赤くして照れている。

「おはようヒメちゃん、早く槍渡してあげて」

 マオに促され、ヒメキチが槍を投げる。

 槍を受け取った。バルキリーの槍、ロンギヌス、スキルも素の性能も破格だ。こんなの使えば誰でも勝てると言い切れる性能をしている。

 ポセイドンがトライデントを振り下ろす。槍でトライデントを防ぐ、ハンマーなら防ぎ切れず飛ばされていた。

「出来ました!」

 シューベルトが声を張り上げる。

「よし!  それ持って早く行け!」

 ポセイドンの攻撃を避けながら、パライソに踏みつけられ、床で伸びているダンテを指差す。

 マオさんとヒメキチが最初にボスエリアから出る、その次にパライソ、そして、シューベルトがダンテを持って出た。

 それを確認して、ポセイドンを最後まで引き付けて、ボスエリアを抜けた。

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