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17 指輪のスキル

「ぽへ~」

「何その声? 大丈夫?」

 鍛冶屋から出てきた俺をヒメキチは心配そうに見ている。

「全然大丈夫じゃない」

 強化を終えたウタヒメを渡す。

「あ、出来たんだね! 兄助的にはどんな感じ?」


「すっごく高くて無駄に作るのが面倒な装飾の少ない綺麗な鉄の剣」

「……うぅん、ごめんね、あんまりよく分からない」

「スキルが無い、スキル枠も無い。おまけに攻撃力が鉄の剣並み」

 ヒメキチが困った顔をしてウタヒメを返す。

「一つだけ特徴があって、振ると歌みたいな音がする」

 ウタヒメを振ると妖精が歌ったような爽やかな音が鳴る。

「それでウタヒメなんだね」

「そう、唱剣ウタヒメ」


「あれ? どうしたんですか?」

 ベルが鍛冶屋から出てくる。ベルも武器の手入れの為に鍛冶屋に行っていた。

「あ、完成したんですね!」

 ベルにもヒメキチと同じように事情を説明する。

「……なるほど」

 沈黙が流れる。

「ギルドハウスに戻る?」

 ヒメキチの提案にベルがうなずく。

「そうするか」




「おかえりなさい! ギルドマスター!」

 ギルドハウスに帰るとルイスが出迎えてくれる。

「おかえり、ギルドマスターのお供とベルさん」

 ルイスを無視してソファーに腰を下ろした。

「ルイスくん、ただいま」

 ベルがルイスを撫でている。

「流石ベルさん、あの野蛮なお供とは違うね」

 こちらを流し見しながらふざけたことを言っている。

「お望み通りプールに沈めてやろうか?」

「あびゃ!?」

 ルイスは驚いて飛び上がり、天井に頭をぶつけた。

「自業自得だな」




 メニュー画面を開くと同時に、片付けをすると言っていたヒメキチが自室から戻って来る。

「何してるの?」

 ヒメキチが隣に座り画面をのぞいてくる。

「装備を見ようと思ってたところ」

「ふんふん」

 防具に至っては最初にヒメキチに貰ったものをずっと使い続けている。

 アクセルブラッド一式、布製で軽く速く動けるが防御力も低くない。固有のスキルは無いがスキル枠がその分多い、まだ、一つもスキルを着けていないが。


「ずっと私があげた奴使ってくれてるんだね」

「まあな」

「オーダーメイドした甲斐があったよ」

「……オーダーメイド!?」

「うん!」

 オーダーメイドは予想外だった。

「袖とか、ブーツとか、たくさんお願いしたから店員さんに申し訳なかったかなぁ」

 はにかんで笑うヒメキチを見て、一生使おう、と心にしっかり刻む。


「ウタヒメの方は?」

「ああ」

 真っ先にウタヒメの強化画面を開く。

「あれ?」

「どうしたんですか?」

 ヒメキチの声にベルも来て、俺を挟むように座る。

「何で強化素材が不明になってるんですか?」

 全ての裏ダンジョンまで攻略しきっているのに、不明の素材があるのは、普通はあり得ない。ドロップ率が低すぎるのか、まだ見ていない超レアな奴が居るのか見当もつかない。

「うーん」




「ヒメキチの装備は?」

「私の?」

 ヒメキチが立って杖を持つ。そして、ふわりと一回転した。ツインテールとフリルがふわっとしていて可愛い。

「どう?」

 隣に戻ってきた。

「可愛い」

「可愛いですね」

「いや、スキル……」

「えへへ、ごめん、ごめん、スキルはバフ量アップと回復量アップだけに絞ってるよー、装備はリリィドレス、杖はホワイトラブだよ」

 バッファー兼ヒーラーに特化している。普通なら、防御系も付けることがあるが、それは俺に守ってくれということのようだ。


「次、ベルさんだよ!」

「え!? 私もですか!?」

 何故か驚くベル。

「まあ、頼む」

「分かりました……」

 ベルも立ち上がりくるっと回る。回るとは思っていなかった。

「ど、どうですか?」

「綺麗だったよ~」

「凄く綺麗、格闘技やってるだけある、体の芯がしっかりしていてバレエみたいだった。でも、スキルと装備を教えてくれるだけで良かったのに」

 顔を真っ赤にして恥ずかしがりながら戻ってきた。

「韋駄天の籠手です。スキルは全部スピード系にしてます」

 テーブルの上に籠手を置く。恥ずかしくて顔を上げられないようだ。

「装備は、ノアシリーズか」

 軽量化に速度アップ、移動に関係するスキルが付いているノアシリーズ。ベルの動体視力や反射神経は桁外れだ。




「スキルくらい付けたら?」

「分かってるんだけど、今スキルの検証を調べてる」

 正直な所、どんなスキルを付ければ良いか迷っている。

「じゃあ、目瞑って」

「え?」

「いいから、はーやーくー」

 催促され目を閉じる。ヒメキチが手を触っている。

「もういいよ!」

 目を開けて手を見る。指輪が左手の薬指にはめられている。

「私からのプレゼント、どう? お守りってことで」

 ヒメキチが柔らかく笑っている。

「ありがと」

 指輪についていたスキルは、食いしばり、一度だけ体力が0にならないスキルだ。基本的に攻撃に当たらない俺には、確かにお守り程度かもしれない。

「どーいたしまして」

 ヒメキチの笑顔なので良いとしよう。




「しかし、大会が始まるまでにスキルは用意したいしなぁ」

 ソファーに座ったままスキルの画面と睨めっこになる。


「やっぱり、回避を重視した方がええんとちゃう? 速度系を僕はおすすめするで」

「回避を重視しなければいけないような仮想敵が居ない」


「そうだろうな、俺としては攻撃が良いと思うぜ」

「火力は十分足りてる。急所を狙えば倒せるくらいには攻撃力はあるし、ヒメキチのバフもある」


「兄弟! やっぱりここは魔法だ! 魔法はカッコいいからな!」

「却下」


「あたし的には……ファッション? おしゃれな方が良いよねー」

「スキル以前の問題じゃないか?」


「え? 私ですか? そうだよねぇ、ザインくん……カッコいいからオッケーかなぁって」

「私の兄助なんだけど!」


「うるせーよ、っていうかさ、何で勢揃いしてるんだ」

 振り返ると好き好きにくつろいでいる。

「え?」

 とぼけた声を出す影月。

「え、じゃねえよ」

「え~」

 義務のように舐めたことをする影月。

「この男、性格悪いね~」

 驚くことに言ったのはルイスだ。お前も同じくらい性格悪いだろ。

「ウサギって腹黒い言うよなぁ」

「は? もしかして、この愛らしいぼくの事を言ってるの?」


 ヒメキチがプールに繋がる大きな窓を開ける。

 それと同時に二人の首を掴みプールに投げ飛ばす。

「うひゃ!?」

「ぎゃあ!?」

 水飛沫と水の音が聞こえる。

「よし、静かになった」




 水浸しで痙攣している1人と一羽が庭に打ち上げられている。

「それで用は?」

「無いけど」

「は?」

「3人が居るから寄っただけだよ。全員」

 クリスティーナの言葉にゼロ兄もウィルもうなずく。ハイドは特に反応しないから、たぶん肯定だ。呆れて言葉が出ない。


「僕は一応話したいことがあったんよ」

 反応する気になれない。

「何日かしたら、そっちっていうか東京行くんやけど、お土産、何が良い?」

「八つ橋で良いんじゃね?」

 ヒメキチの顔を見る。うなずいて親指を立てている。

「ベルはんは?」

「私ですか? う~ん」

「僕これでも社長やから遠慮せんでええんよ、知らんけど」

「まあ、甘い物なら」

「りょーかい、で?」

 影月が俺の方を見る。

「いらねーよ」

「……そっか、じゃ、そー言うことで」

 特に何かを言うことも無く挨拶だけして帰っていった。

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