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11 聖女の闘争

「おわぁ!? ま、真島!?」

 月曜の11時50分くらい。校門の前でボーっとしていた教師が素っ頓狂な声を上げる。

「お、お前、今何時だと思ってる!」

「12時じゃねぇっすか?」


「そうだな。いや、違う! 登校時間から何時間経ってると思ってる!」

 教師の言うことは真っ当だ。

「いや、体調悪かったんで少し遅れてきました」

「え、あ、そうなのか? いや、おい! それなら連絡くらいしろよ!」

 本当は寝坊だから連絡なんて出来るわけが無い。

「あー、はい、気を付けます」

 適当な返事に嫌気がさしたのか、教師はそれ以上何も言わなかった。


「あ、あにす……真島先輩、おはようございます」

 偶然廊下で会った姫花が丁寧にお辞儀をする。姫花の周りにはいつも友達が何人か居る。

「おはよ、弁当が無かったんだが」

「あ、間違えて持って来てました、えへへ」

「そうか」

「はい、お昼ご飯一緒に食べませんか?」

「分かった」

「えへへ、嬉しいです」

 笑顔の姫花に友達は心配している。昼に登校してくるような奴と仲良くして欲しく無いのだろう。


 学校での姫花は淑女かつ才媛で通っている。

 学校のマドンナとして男子人気が高く、その上女子からも人気が高い。誰からも好かれる美少女と言った所だ。

 それも全て姫花の演技なのだが。




「あ、真島だ」

 自分の教室に入ると、まだ授業が続いていた。姫花達が移動教室から帰ってきているのにまだ終わって無かったのか。

 何食わぬ顔で自分の席に座る。

「真島君? 流石にこんなに遅れて何も言わずに座るのは、先生、どうかと思う」

「いや、すんません」

 一言だけ返す。


 外を見る。一番後ろの窓際、学校の桜が綺麗に見える。ついでに、教室の中も反射して見える。

 そして、椅子から滑り落ちた。

「真島君!?」

「だ、大丈夫です」

 慌てる教師に手を振って無事を知らせる。


「大丈夫ですか?」

 隣の子、椅子から滑り落ちることになった原因が手を差し伸べる。

 西園寺加恋だ。

 今の今まで考えもしなかった。隣の席の西園寺加恋があのカレンということを。

 姫花がカレン先輩と言っていた理由がようやく分かった。


「……え?」

 加恋の方も気付いたようだ。完全に固まっている。

「あ、今日はここまでね、復習ちゃんとしておいてね!」

 教師の声で加恋は気を取り戻した。

「あ、後で、話があります」




「そうですよ。真島先輩、兄助がアインです。これで満足ですか? 加恋先輩」

 加恋と莉乃は固まっている。姫花は学校では見せない不満な顔をしている。姫花だけは気付いていたようだ。

「なら、力を貸してください。私達、いえ、西園寺製薬ゲーム部は今力が必要なんです」

 加恋はゲームの中と全く同じだ。平たい胸さえも。平たい胸が気にならないくらい美人だが。


「おい、オマエ、今姉様をいやらしい目で見ていただろ!」

 佐々木莉乃、加恋をしたう一年生で姫花と同じクラスだ。髪で目が隠れているメカクレ系女子だ。こっちはこっちで男嫌いで有名だ。

「莉乃ちゃん、兄助が見るわけないじゃん」

 マジギレトーンで莉乃に詰め寄る姫花、莉乃はビビッて加恋の後ろに下がった。


「正直なところ、優勝賞金は要りません。勝ったことによる名声が西園寺製薬には必要なんです」

 真剣な顔で俺を見ている加恋。

「高校生がやらないといけない事なのか?」

「高校生とか関係ありません」

「ギルドマスターはこっちだ」


「受ける気はありません。加恋先輩」

 はっきりと言い切った。

「な、何で? 姫花ちゃん、そんな男……」

「莉乃ちゃん、誰にも人を悪く言う権利は無いんだよ」

 真面目な顔で真面目に莉乃に説教をする。

「……っ」

 莉乃は悲しそうな顔をして下がった。


「加恋先輩は勘違いをしています。私達は私達で楽しくやることが目標ですから」

「初耳」

「うん、言ったこと無かったもん」

 今作った感満載の目標だ。


「でも、ギルド戦は受けます。ふふっ、ということです。加恋先輩。よろしくお願いします」

 いつも通りのマドンナ笑顔に戻った姫花が加恋の手を取る。

「あ、はい……」

 姫花のペースに飲まれている加恋と莉乃はタジタジになっている。




「……はぁ」

「兄助? どうしたの?」

 カレン、リノ、ウィル、そして、その他12人に対し、こちらは俺とヒメキチだけ。

「ベルが休みの時に何でギルド戦をやろうと思った?」

 遂に約束の日を迎えた、もう少しでギルド戦が始まる。

「え? 勝てるから」

「対戦相手を前に言っていいことじゃないし、それにあのウィルが居るからな」

 ウィルが俺に手を振っている。

「大丈夫、私達強いから」


「随分と余裕があるんですね」

「これでも元世界一だもん」

 笑顔のヒメキチと真摯な表情のカレンの視線がバチバチしている。

「はぁ」

 溜息が出る。




 開始の銅鑼が鳴る。

 ウィルをリノが守り、カレンとその他が突撃する戦法か。カレンの得意な戦法だ。

 カレンが最初に突っ込んでくる。突き出された槍を身を反らし避ける。

「ヒメキチ、攻撃バフ頼む」

「りょーかいだよ!」

 後ろに退避したヒメキチからバフを受ける。


 槍をぶん回すカレンに足払いをして転がす。

 続けざまに左右から挟み撃ちを仕掛けてくる。

 右の奴の胸を蹴って跳び、左の奴を飛び越え、背後を取る。

 そして、首をしっかり斬り付ける。

 一撃で体力が0になった。

「一撃なら回復なんて関係無い、だろ?」


 このゲームは人間にも部位設定があり、部位によってダメージが変わる。人間の弱点である首や胸(心臓)はダメージが大きくなるが、手足のような命に関りが低い部分はダメージが低くなる。


 蹴られ倒れた奴の胸を剣で突き刺し、こちらも一撃で体力を0にする。


「多対少の戦いに慣れて無いな」

 起き上がったカレンをスライディングで足を蹴ってもう一度倒す。

「少人数の一騎当千型のギルドと戦う時は、初手で確実に潰さなければいけない」

 カレンの援護に来た奴に剣を投げつける。ガードされるが、剣を空中で拾い、ガードの隙間を縫って喉に突き刺す。

「一度暴れられると味方の人数が減り、人数補正もあって更に手が付けられなくなる」

 後ろから斬りかかってくる奴に回し蹴りを入れ、倒す。


 カレンが起き上がる前に主戦力の3人以外を倒した。カレンは混乱している。開始数分で12人がやられるのは想定していなかったようだ。

 リノも慄いている。ウィルだけは冷静に2人を見ている。

「ここからが本番だろ?」

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