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109 革命の終わり

 一緒なんだ、俺達は。力に目覚め、誰かの為に戦っている。その過程の中で、俺はカインドさんを失い、アーサーは多くの仲間を失った。

 それでもまだ俺達は戦っている。その先にある世界を信じて足掻いている。

 だが、1つだけ違うとすれば、それは……

 今の仲間か、失った仲間か。




 後悔のないように全ての力を振り絞る。そして、アーサーとほぼ同時に走り出す。ただ相手だけを見据えて、相手を撃ち倒す為に走る。

「アーサー!」

「ザイン!」

 叫ぶ。雄叫びを上げる。次の瞬間には水晶突剣とナイフがぶつかる凄まじい音が闘技場を支配する。

 アーサーが突き出してくるナイフを水晶突剣でガードする。アーサーは何度もナイフで斬りつけてくる。体重を乗せた重い攻撃が何度も何度も襲いかかってくる。

 水晶突剣で防ぐ度に、火花が散り、少しずつ剣が削られていく。あまりの攻撃の重さに手が痺れる。

 反撃にアーサーの足を蹴る。しかし、アーサーは苦しい顔はするものの耐えてくる。


 遂にアーサーの一撃により、水晶突剣の先端が折れた。折れたタイミングで水晶突剣が手から抜ける。手が痺れていて力が入らなかった。水晶突剣は地面に刺さった。

 アーサーの猛攻は止まらない。水晶突剣の破片が体に当たってもナイフを振ってくる。

 アーサーの手首を手の甲で受け止めて、ナイフを止める。アーサーはすぐさまアサルトライフルの引鉄を引く。こちらもホワイトヒロインの引鉄を引く。

 片手でアサルトライフルを撃った事で、ブレが生じ、弾がバラけた。アーサーが撃った3発の内1発は当たる事なく体の横を通り過ぎていったが、2発は腹と胸を貫通し、凄まじいダメージになった。

 HPは食いしばりのスキルで耐えた分の1だけになった。

 しかし、アーサーも弾丸を腕に喰らい、アサルトライフルを落とした。これまでに無い大きさのダメージを喰らい、アーサーは顔を苦痛に歪ませるが、怯まない、すぐにナイフを振り上げる。

 後ろに引きながら、アーサーに銃口を向け、引鉄を引き続ける。アーサーは攻撃を止めて、弾丸をナイフで叩き落とす。

 アーサーも弾丸を1発も喰らえないHPしか残っていない。次に攻撃が決まった方の勝ちだ。


 ホワイトヒロインの照準をアーサーに合わせる。持ち込める武器やアイテムの枠は全て武器に取られているので、リロードする弾は無い。近くに武器も落ちていない。弾切れになれば大きな隙を作ることになる。

 アーサーはナイフしか武器が無いから、接近するか、弾切れを待つしか無い。しかし、アーサーは俺が予備の弾を持っていない事を知らない。いつ来るか分からない弾切れを待つのは得策じゃないはずだ。

 絶対に仕掛けてくる。


 アーサーが走る。残りの弾丸も多いとは言えない。蹴りや殴るレベルの攻撃一回ではアーサーのHPを削りきる事は出来ない。

 力を使いながら、引鉄を引く。

 アーサーの動きは読めないし、弾丸はナイフで叩き落とされた。それでも、引鉄を引く。

 ホワイトヒロインからカチカチと音が聞こえる。全弾撃ちつくし、空撃ちしている合図だ。

 引鉄を引くのを止める。銃口はアーサーに向けたまま動かない。

「弾丸は尽きた。武器もお前の手元には無い。さあ! どうする、ザイン!」


「セカンドディール、もう一度だけチャンスをこの手に」

 ホワイトヒロインのスキルを使う。外した弾丸が再装填された。

 再装填された弾丸はたった1発だけ。雲を晴らす為に空に向かって撃った奴だけだ。

「これが、最後の1発、最後の一撃」

 息を吐く。アーサーはもう手の届く範囲に来ている。

「最初からそれに賭けてたって事か」

 もう互いに引けない距離だ。


 迷いなく引鉄を引く。

「ぐっ!?」

 アーサーは無理矢理体を捻って、弾丸を避けようとしている。弾丸が至近距離過ぎて叩き落とす事は不可能と考えたのだろう。

 そして弾丸は、アーサーには当たらず、通り過ぎていった。


「紙一重だった。だが、俺の勝ちだ!」

 アーサーのナイフが胸を貫く。しっかりと心臓に突き刺さっている。動かず、ただ結末を待つ。

 試合終了の合図の銅鑼が鳴った。




「俺の勝ちだ……アーサー」

 アーサーは目を見開き、俺を見ている。

「何故、HPが0にならない!?」

 アーサーの横を通り過ぎ、アーサーの背中から水晶突剣を抜く。

「何で、俺の背中に……?」

 アーサーは驚き、水晶突剣を目で追う事しかできなかった。

「俺の狙いは、お前じゃない。水晶突剣だった」

 水晶突剣を一回転させる。

「弾丸で地面に刺さっていた水晶突剣を撃ち、お前の背中に刺さるように弾き飛ばす事が狙いだった」

 力を抜き、水晶突剣を地面に落とす。地面とぶつかる鋭い音がして、地面を転がる。

「は、ははっ、はははははっ」

 アーサーは笑い出し、地面に膝をついた。

「弾丸を避けた事で安堵し、本当の俺の目的に気が付けなかった。いや、気が付けないように誘導したんだけどな」

 わざわざ、スキルように1発だけ、空に撃った。どのような形であれ、この1発が切り札になると考えていた。

「そうか……俺の負けか」

 アーサーはうつむいた。

「顔を上げろ。お前は世界2位だ。ファンが待ってる」

「今頃、俺に組織を滅ぼされた残党共が、俺の命を狙って来ているだろう。どちらにしろ破滅だった。それだけだ。俺自身も多くの人間を殺しているしな」

 諦めのついた顔をしている。アーサーの言葉が事実なら……

「アーサー!」

 名前を叫ぶ。考えるより先に声が出ていた。

「悪かったな。巻き込んで。楽しかったぜ。決勝戦」

 アーサーが消えた。ログアウトしたのか!?

「アーサー!!」

 アーサーにこの声が届く事は無かった。

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