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107 無限の始まり

 王都のとあるサロン

 雰囲気の良いバーもあり、紳士淑女の社交場としても使われるし、そうで無い人間も使う。

 このバーで公式なブックメーカーが行われている。いつもはセレブからギャンブラー、庶民もギャンブルを楽しんでいる。

 しかし、今日は、ほとんどの人間が絶望に打ちひしがれていた。

 そんな中に明るいふざけた笑顔の女性が入って来る。

「にゃん嬢か……」

 バーのマスターがやる気無く呟く。

「ちゃんとマオって名前があるんだから、そっちで呼んでよ」

「悪いが、仕事は無いぞ。この有り様だからな」

 みんながみんなして絶望した顔で決勝の様子を観ている。

「オッズは?」

「はぁ、もしもザインが勝ったら、一人勝ちだ。誰も入れやしねえよ」

 フィクサーが0.9倍でザインの方は空白だった。

「そっかー、じゃ、私、パピーに賭けるね」

 サロンに居る人間全員が一斉にマオを見る。

「悪い事は言わねえ。もうアーサーの勝ちは決まってる。賭けるだけ無駄だ」

 マスターは止めようとしてくれる。

「そうねぇ、5000かな」

「5000ドルも賭けるのはバカだけだ」

「違う違う、5000万ドル、私の財産ほぼ全部」

 金額もあって、目を見開いてマオを凝視している。

「な、何を、気が狂ったか?」

 マスターは持っていたシェイカーを落とした。

「一人勝ちプラス、倍率もかかるよね? これで最高に勝ち組じゃない?」

 マオはニヤニヤ笑う。

「どうしても賭けるのか?」

 マスターは声も手も震えている。もしもザインが勝てば大惨事が起きる。クビだけでは済まない。

「もちろん」

 マオはうなずいてカードを渡す。

「パピーの仲間はパピーを信じて今も戦ってるし、パピーは絶対に勝つって言ってくれたし、信用出来る情報を信じないなんて情報屋として失格だよ」

 モニターではザインが足払いを喰らい、倒れている。状況は最悪だけど、諦めている気配は無い。

「みんな大して賭けてないんでしょ? だったら、パピーを応援してよ」




「痛たた、頭打った」

 足払いを喰らい地面に倒れてしまった。

 ガチャガチャと音がして銃口に囲まれた。

「これだけ人数が居ると何処かで不意打ちを喰らうのは分かってたけど、やってしまった」

 起き上がれる気配がない。余裕はあっても油断はしてない、アーサーという男の底が見えない。

「最強で常勝無敗の男が、この程度な訳無いだろ?」

 アーサーは余裕を絶やさない。

「さあな。っていうか、一回負けてるんだけど」

「その一度の負けからお前の伝説は始まった。それが今日こうして追い詰められている」

「俺の負けがお前の伝説の始まりって事か?」

「そうなるかもな」

「俺に勝てればの話だけどな」


 アーサーの分身が一気に2割くらい消えた。囲んでいたアーサーの1人が消えた。

「やっと見つけた」

 空中に浮いていた全ての武器が1人のアーサーの胸に刺さっている。

 そのアーサーは仰向けに倒れながら消えた。

「分身と本体はステータスは違う。というか、同じにはならない。分身は本体のステータスの3割だ。1万人の中から探すのは骨が折れるが、見つけられない事はない」

 本体さえ見つけられれば、デストラクション・エアーで投げた武器の急降下は、簡単には避けられない。

 グラウンドの最高の高さからの急降下、その速さは一般的な弾丸の速さを超えている。

 俺を見ながら、避けられるなら、もう負けで良いとまで思う最強の必殺技、それがデストラクション・エアー。

「はっ、最高に面白い!」

 アーサーの優位はまだ変わっていない。アーサーはまた余裕がある。

「もう本体の場所は全部分かっている」

「……ほう」

 アーサーは少し思案する声になった。

「そこまで言うのなら、ここで倒すとしよう」


 囲んでいるアーサーが指にかけている引鉄を引いた。

 頭の横に手をつき、足を振り上げ、その勢いで跳ね起きる。

 左腕を弾丸が掠める。少しダメージが入ってしまった。

 本体に直進する。アーサーの本体は陣形の重要な場所などでは無く、そこら辺に居る分身の中に紛れ込ませていた。

「ちっ」

 アーサーの舌打ちが聞こえた。余裕が無くなってきたと言う事だ。

 本体の前で分身が壁になる。アサルトライフルを構え撃ってくる。

 力を使う時間は無い、一応、水晶突剣でガードし、ながら、ダメージ覚悟で突っ込む。

 分身がブラックモルモットの射程範囲に入る距離に接近した。ブラックモルモットは攻撃力は高いが、その分射程範囲が少し短い。射程範囲に入れる為に危険を犯さなければならない。

 10人を越える分身の壁と、背後と横に居る9000人近くの分身から弾丸が飛んでくる。

 力を使っていないから、軌道も読めない。当たらない事を祈って、ブラックモルモットの引鉄を引く。

 弾丸は分身を撃ち抜き、分身が仰向けに倒れる。

 その分身を踏み台にして、本体に飛びかかる。

 本体が撃った弾丸が脇腹を掠める。ダメージを少し受ける、直撃しなかっただけマシと考える事にする。

 ブラックモルモットで頭を殴り、地面に倒す。そして、頭を押さえて、首を水晶突剣で刺す。

 剣が首を貫通したタイミングで分身の一部がまた消えていく。


「流石に想像出来なかったな」

 アーサーの声から焦りが見える。先程までの余裕は完全に消え、焦りを隠そうとしている。

 流れは今、俺にある。だが、分身が消え、アーサーを追い詰めた時がポイントになるだろう。

 1人だけ分身を作ってない、ステータスが他よりも高い奴が居る。それがアーサーの1番に使っている本体だ。

 そいつは必ず最後まで残る。理由は無いがそう確信している。

「さあ、まだまだ行くぞ、アーサー! 俺の全てを持ってお前を倒す!」

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