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100 革命の時

「ゲームでも眠れるもんなんだな……」

 目は覚めたが、嫌な事に気がついて、絶望感に浸ってベッドから出られない。

 ハチマン、様々な分類の企業を内包しているが、医療は特に力を入れていたはずだ。それも全てこの計画の為というなら馬鹿げているし、少し悲しみも感じる。

「おっはよー! 兄助、おはよー」

 ヒメキチが入ってきてカーテンを開ける。

「兄助は、何で世界が欲しく無いの?」

「ヒメキチは欲しいのか?」

 ベッドから抜け出て、椅子に座る。

「私は、兄助と一緒ならどっちでも良いかも」

 はにかんだ。

「俺が世界を手に入れた所で持て余すだけだから」

「欲が無いよねー」

「俺にも欲はある」

 姫花が幸せに暮らせる世界は欲しい。でも、それは世界征服したとしても手に入らないって事くらい分かっている。

「兄助の欲かぁ……新作ギャルゲ! とか?」

「ヒメキチ」

 優しい笑顔で微笑む。そして、ヒメキチに頭突きをする。

「いったぁー!」

 ヒメキチがベッドに倒れ込んだ。

「よし、今ので欲が解消された」




「作戦会議始めるぞ」

 頭突きした痛みで完全に目が覚めた。

 リビングルームにはヒメキチと虎助さんとカレンとリノ、そして、クリスティーナしか居なかった。

「作戦は無し、以上」

「いや、オマエそれで良いのか?」

「良い」

 メニュー画面を開き、装備を全て取り出す。

「何やってるの、兄助」

「スキル付けてる」

 答えながら作業をする準備をする。まずはスキルの整理だ。集めたスキルを倉庫に投げっぱなしにしていたから、何を持っているのか分からない。

「スキル付けると戦術がバレるから付けないって言ってなかった?」

「言った」

 目ぼしいスキルが無い。仕方がない、ある奴で組むだけだ。

「どういう心変わり?」

「戦術なんてバレても大差無い」

「ええ……自分から言ってたのに?」

「今はもう誰もが、俺がアインだと知ってるからな」

「……なるほどぅ」

 スキルを装備品に付けて、使わない装備を倉庫にしまっておく。遠距離武器は軒並み要らない。

「兄助が超本気だ……」

「ザイン君が本気を出すとどうなるんですか?」

「相手は負けるよ」

「……いつもと変わらないのでは?」

「それは兄助だもん」


「……うーん?」

 スキルがあまりにも弱い。10%HPアップとか、細々とした初心者スキルしか持っていなかった。

「どしたの? 兄助」

「スキルが無くて、微妙」

「そう言えば兄助は引き継ぎ特典貰って無いんだよね?」

「コードがもう無いからなぁ」

 メールで送られて来ていたのだが、引退中の事で何も考えず消してしまった。

 だから、もうコードはこの世に無いのだ。

「私覚えてるよ」

「メールは消えてるし、メモもして無いしなぁ」

「だから、私覚えてるんだって」

 手をぶんぶん振って主張している。

「俺の引き継ぎコード?」

「うん、だって私が設定したもん」

「ヒメキチが設定?」

「そうだよ? 兄助が引退した後、私がアインでログインして設定しておいたんだー」

「マジか!?」

「そうだよー、コードは()()()()()ね」

 酷いコードだ。だが、コードを入れると引き継ぎ特典が貰えた。


「アフターグロウ、天上天下唯我独尊、ブラックモルモットまである!」

 引き継ぎ特典は愛用していた武器だ。最初から最後まで愛用していた剣、アフターグロウに、仲間と一緒に取った初めての刀、天上天下唯我独尊、そして、大会の優勝で公式に作ってもらった銃、ブラックモルモット。

 手に馴染む、何年も使って来た武器だから、癖も知っている、それに、スキルも付いている。

「ドヤァ、また私の活躍で兄助を助けてしまった」

 胸を張って目を瞑ってドヤ顔している。

 可愛いので頭を撫でる。

「えへへ」


「何ですの? その武器、シンプルなデザインですが高級感があって良い物ですわね」

「分かる? 素晴らしい審美眼の持ち主だな。このブラックモルモットは俺が1からデザインした武器なんだ」

「その重厚だけど無駄に装飾が無いスマートさがグッドですわ」

「何で勝手にこの人、ギルドハウスに侵入してるの!?」

 ヒメキチはイリヤを指差してふらふらとソファーに倒れ込んだ。

「これは申し訳ありませんわ。ザインさんをお呼びに来たのですわ」

「ハッキングってそんなに時間が要るのか?」

「世界をハッキングするから、かなり時間が要ると仰っていましたわ。それにメタトロン・システム以外の妨害も考えられますわ」

「分かった。行くか」

「待って!」

 ギルドハウスから出ようとするとヒメキチが目の前に立ち塞がった。

「私も一緒に行くよ!」

 ヒメキチが手をしっかり掴んでいる。これは良いと言うまで離さない時のヒメキチだ。

「良いか?」

「良いと仰っていますわ」

 イリヤが耳に手を当てている。アーサーと通信しているようだ。

「まあ、ヒメキチなら大丈夫か」




 イリヤに連れてこられた場所はアトランティスだった。

「連れて参りましたわ、フィクサー様」

「ああ、助かった。俺が直々に出向く訳にも行かなかったからな」

 フルフェイスのメットに重装備のテロリストみたいな服の連中とシューベルトが待っていた。

「俺と手を組む気になってくれたか? ザイン」

「今はな」

「それで良い。どのくらい時間がかかるか分からない。すぐに出よう」

「では、わたくしは他にやる事がありますので」

 イリヤがワープで消えた。

「過酷な継続戦になるだろうな。それでも来るか?」

 フィクサーがヒメキチの正面に立ち、問いかける。

「もちろん」

 ヒメキチがフィクサーを睨んでいる。

「ふっ、良い気概だ」


 シューベルトがホログラムのキーボードにプログラムを打ち込むと、何も無い場所にドアが現れた。

「準備は良いか? 人類史上最大の革命の時だ」

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