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続く短編集

モブ(?)はヒロインを防守する

作者: 凛狐

よろしければもう1つの短編をお読みになってからご覧下さい。

俺の名はリック。

そして、それ以外にも2つの名がある。


(ノワール)、何故あの場に現れた?答えろ」


(ノワール)、これが俺の影名。

うちの一家は王族直属の少数精鋭の影部隊だ。

護衛、暗殺、情報収集…まぁ、色んな事を王命を受けて行う。

表向きは平民で親父は雑貨屋の店主として、お袋と兄貴は店員として働いている。

俺はまだ19歳なので、表向きの家業は手伝わずに普段は訓練や細かい仕事なんかをしてる。

1人前と言われるのは20歳からで、そうすれば擬態のために店員として過ごす予定だ。

ちなみに他にもそういう一家が2世帯いて、俺の家は王位を継ぐ方の直属になる。

つまり兄貴が第1王子で、俺が第2王子。

王子様達はまだ俺らの存在を知らない。

王太子になるのがどちらかに決まった際に、俺達の存在が告げられるのだ。

それまでは陛下の命次第で、城内にいない時間帯などを影ながら護衛している。

ちなみに順当に第1王子が王太子になり、そのまま即位すれば兄貴はそのまま影部隊を継ぐ。

なので俺は第2王子が王弟になって、その後亡くなるまでは付き添わなければならない。

それだと子供に継がせる必要はないから、自分の子供に裏稼業を話す事もないね。

この場合、話していいのは奥さんになる人だけ。

兄貴が子供出来なかったとか、そういう問題さえなければ俺で途絶えるようにするんだ。

んで、他の2世帯は王妃様と側妃様直属と、姫様方直属ってわけだ。

そっちの2世帯については、ほぼ案件は護衛のみ。

姫様方にいたっては影の存在を知らないし、降嫁されたり他国に嫁いだりすればそっと任を解かれる。

意外と若いうちだけの短期間任務なのだ。

まぁ他の2世帯も王命が何よりも最優先事項なんだけどね。


それから、もう1つの名前はこの仕事に関係してる。

たまーにだけど、情報収集のために貴族のお茶会とかパーティーとか、そういうところに直接出る事がある。

その時用に影部隊にはダミーの爵位があって、眼鏡をかけた俺は『リカルド=ガードルアン』という子爵家次男として活動していた。

まぁまだ両手で数えるくらいしか活動した事ないけどな。


そして今、父親(影頭)から問われてる内容というのが、ちょっと厄介な内容だった。


さっき、行きつけのパン屋へ向かったら、パン屋の周りに兄貴がフラフラしてて、察した。

ここは俺達が住む王都の隣街。

用もなく兄貴がこんなところにいるはずがなかった。


きっとここに、あの(・・)第1王子がいる。


そう思った瞬間に、俺は兄貴の横を通り過ぎてパン屋に入っていった。

一瞬見えた兄貴の顔が少し驚いた顔をしていたので、きっとあの後父親(影頭)に報告したんだろう。

そして、パン屋に入って第1王子を見つけた。

しまった、少し遅かったかもしれない。

既に王子は顔を赤らめて店員のアデレード…アディに近付いていた。

そして咄嗟に話しかけて、王子を追い払う事に成功。

その後は…ちょっと暴走しかけたけど、中々いい思いが出来たと思う。

さて…なんて答えるかな。


「…元々、あのパン屋は俺の馴染みの店です。ほぼ毎日通ってます」

「ほう、あのパン屋にか?」

「ちなみに、あそこの1人娘を妻にと思ってます」

「なんだと?!」


父親(影頭)の目が輝く。

おい親父、さっきまでの威厳はどうした。

うちはお袋よりも、親父の方が恋人とか結婚相手とかを気にしてる。

家業を継ぐから、というよりも単純にどんな娘か知りたいっていう好奇心から。

いい歳して恋愛小説を読む事が趣味なんだよな、この人。

お袋が呆れてたのを知らんのか?


「え?ど、どんな娘?どんな娘?」

「…歳は俺の3つ下で、働き者です。家業の都合で学校とかには通ってないけど、読み書き算術なんかはお手の物。器量良し、要領良しの下町の天使と言われてる女性です」

「なんだそれ!めちゃくちゃ優良物件じゃないか!え、告白したの?したの?」

「…さっきしてきました。まだ返事は貰ってませんけど、反応的にはいい感触です」

「っくはぁー!!!甘酸っぱい!!!最高だ!!!息子からそんないい話が聞ける日が来るなんて…!!!デールの方はなぁ…全くそんな話がなくて…アイツの方が早く結婚しなきゃなんねぇってのに…」


身悶えるようにジタバタしてから、頭を抱えて唸る親父。

ちなみにデールとは兄貴の名前だ。


「…こほん、ならばあまり王家と関わらせない方がいいな。今後お前と結婚すれば、ガードルアン家次男の婚約者役をやる事になるやもしれん。顔は覚えられない方がいいだろう」


今更取り繕っても遅いから。


「ただ、1つ問題があるんです」

「なんだ?落とせなさそうってか?」

「それは大丈夫そうなんで」

「うほっ…う、うむ、そうか」

「…彼女の出自ですが、あのパン屋の主人は実の父親ではありません。彼女の実の父親はガーラン伯爵です」

「…なんだと?あの見た目だけの種なし節操なし男か?」


親父の言葉に頷く俺。

そう、アディは実の父親なんて知らないだろうけど、ガーラン伯爵は裏で色んな女に手を出す節操なし男だった。

なのにあの伯爵家には後継がいないし、庶子もいないとされていた。

それを皮肉って、俺達影部隊の中では『種なし節操なし男』と呼ばれていた。

アディの母親はメイドとして仕えている時にお手付きになったらしい。

そして逃げるように辞めて、身を隠しながら今の主人と結婚して暮らしていた、と。

その情報を得れたのも、あの夢(・・・)のお陰だ。


実は、先週俺はとある夢を見た。

ヤケにリアルで長い、不思議な夢だった。

簡単に言うと、想い人のアディが第1王子とパン屋で出会い、実の父親に騙されて引き取られ、学院に通う夢だった。

俺はそれを遠くから見てるだけ。

なんせ第2王子はアディの1つ下で、まだ学院に通ってなかったからな。

たまに城下のお忍び中に会うくらいだった。

そんなアディは学院で令嬢達に虐めを受けていた。

それでも健気に頑張るアディに、俺は夢の中で惚れた。

実は夢を見るまでは、アディの事を妹としてしか見てなかったんだよな。

そして最後には第1王子と結ばれて、ハッピーエンド…


…とはならなかった。

アディは頑張ったんだ、慣れない貴族の中で一生懸命勉強したりして。

でも第1王子はただアディに溺れて政務や義務を放り出していた。

アディはまだ貴族になったばかりで、第1王子の仕事内容なんかを把握してなかったから放り出してた事を知らなかった。

結果、第1王子が婚約者との婚約破棄を勝手に行った事で、陛下の怒りを買い。

誑かしたとして、アディは牢屋に入れられて。

そして元婚約者に内通していた者からその夜の食事に毒を盛られて、そのまま死亡。

陛下も激昂したのは一瞬で、兄貴や親父からの報告をアディが死んだ翌日に受けて、後悔するように体調を崩した。

第1王子もそれで心を病み、王位継承権を破棄。

結果第2王子が王太子となり、俺は次代の陛下の影となる事になった…という内容だった。


目が覚めて、めちゃくちゃ胸糞悪かった。

いやいや、俺助けろよって感じ。

陛下の命なんかいっそ放り出して、アディ連れて逃げろよ。

あんな状態で次代の影頭になったって嬉しくねぇだろ。

そんなモヤモヤした気持ちを持っていて、ふと思った。


これ…夢だよな?


なんだか嫌な感じがして、空き時間でアディの出自を調べた。

そしたらまぁ、本当にあの伯爵の娘だと分かったわけで。

血の気が引いたよな、もしかしたらアレが現実に起こるかもしれないだなんて。

そこからは3日に1回だったパン屋通いを日課にした。

いつ第1王子が現れるかわかんないから。


そして今日、あの夢と同じ事が起こっていた。

見た目は冷静だったけど、かなり焦ったよね。

咄嗟に夢で見た行動じゃない事をした。

だからかな?

アディも夢とは違う行動だったみたいだ。

でも、2人は出会ってしまった。

ここからは、俺がアディを守らないと。


死なせてたまるか。


「…種なしじゃなかったのか…」


親父がポツリと呟く。

だよな、俺もそこには驚いた。

でも確かにアイツの瞳の色はガーラン伯爵と同じ色で、アメジストのような珍しい澄んだ紫色だった。

長めの前髪で目元を隠してるようだけど、夢曰く、母親の言い付けがあったかららしい。

引き取られてからは髪型を変えて、すっかり印象も変わっていて、めちゃくちゃ可愛かった。

あのアディも見たいけど…伯爵にアディが見つかるわけにはいかないから我慢だな。


「…伯爵に動きは?」

「どうやら娘の存在をどこかで嗅ぎ付けたようです。政略の駒として使うつもりらしく、捜索中の模様。なので早々に彼女をうちに嫁がせたいなと。いや、なんなら俺が婿に入ってもいいんですけどね」

「あぁ、それも手だなぁ…どうやら第2王子は廃嫡されるかもしれんし…」


そう、第2王子は廃嫡予定なのだ。

中々俺様のガキンチョで、色々と問題を起こしている。

夢の中ではギリギリ廃嫡されずにいたんだけど、アディに出会い、惚れて、玉砕してた。

んでアディが死んで王位を継ぐ事になって、ショックを受けて、恨みからか第1王子の元婚約者を王妃に娶り、精神的にも肉体的にも追い詰めて…みたいな感じだった。

そこら辺は詳しく見なかったな、見たくもないけど。


「兎に角、娶るなり婿に入るなり、早く告白してしまえよ。そこはもう、認めてやるから」


流石親父、恋愛事ならめちゃくちゃ味方だ!

めちゃくちゃいい笑顔でサムズアップされた。

よーし、絶対俺に惚れさせてみせる!!


こうして親父の許可を得て、俺は毎日アディに会い、耳元で愛を囁いて腰をくだせさせるのだった。

そんなアディから長年の片想いについて告げられるのは、また先の話ーーーーーーーー

リックは乙女ゲーの幻の隠しキャラで、そのルートに入ると虐めを受けるヒロインの前に現れて攫ってくれます。

リックが見た夢は王太子ルートとその後になります。

ゲームでは王子様と結ばれました!で終わるけど、実際にはそうはいかないよねって話。

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