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指名依頼編その9

指名依頼編その9


メイリン視点


 目的の村につくと、レーリーとマサトはさっそく森の調査へと向かった。


 わたしたちはというと、前回と同じくまずは聞き込みだ。

 といっても小さな村だから手分けをするほどでもなく、みなで村長や目撃者から改めて聞き落としがないかを確認する程度である。


 『鼠の牙』の皆さんの話では、大抵はギルドから得た情報と変わらないそうだけど、それでも本人から直接聞くことで微妙な認識の齟齬を修正できる場合もあるし、あるいはギルドへ連絡した後に状況が変わる場合もあるので、こういう確認作業は上位ランクの人ほど重視するということだった。


 で、今回もやはり話を聞いたことで新たな情報を知ることができた。


「氾濫を起こした魔獣が森の奥に居座っている?」


「はい。はっきりと確認したわけではないのですが、狩りのために森に入ると、どこからか魔獣がやってきて追い出されるのです」


「偶然ではないのか?」


「それが数匹の魔獣に追い立てられ、森を出ると去っていくのです。おそらく森の中を縄張りとしているのだと思います」


 村としては森の恵みを得られなくなったのは痛いが、村の畑等への被害は魔獣氾濫の時に多少あった程度で、それ以降はむしろ野生動物による被害が減っているためそこまで緊急性が高いわけでもないそうだ。


 とはいえ村のすぐ近くにある森の中に多くの魔獣が居座っているというのがあまりよろしくないのも事実なのだろう。村の人々はわたしたちに協力的だ。


「うむ、統率されたような動きを見せるということは、確かにボスのような存在がいるかもしれないな」


 聞き込みをしていたシーベル様がそう頷いている。


 わたしとしてはそれよりも森へ調査に入ったレーリーのことがまた心配になってきた。

 余程のことがなければ大丈夫だと思うんだけど、さすがに大群あいてではレーリー一人では太刀打ちできないだろう。


 そこは彼女もわかっているだろうから無謀なことはしないと思うけど、なにかあれば無理はしそうなんだよね。


 結局、その日は村についたのが午後だったこともあり、村人への聞き取りだけで森の調査は翌日以降ということになった。




 とりあえずわたしたちは村長の屋敷の離れを貸してもらえることになったので、夕食の準備をしながらレーリーとマサトの帰りを待つことにする。


「魔獣たちが森の中を縄張りにしているのはわかりますが、森に入った人を追い払うだけで襲わないというのは不思議ですわね」


「そんな話は聞いたことがありませんので、やはりレーリーたちのような転移者が統率している可能性が高いように思えるわよね。

 ただあまり魔獣が多いようだと干拓事業にも影響しそうで困るわね」


 サシャとエリナがそんな話をしている。

 開発地域のすぐ隣に大きな魔獣の群れがいる状況というのはよろしくないだろう。エリナが普段以上に魔獣の状況を気にしているように思う。


 そしてそれよりも気になることがあった。


「サシャもエリナも、料理の手際がいいわよね」


 そう。わたしよりも二人の方が料理がうまいのだ。

 貴族の子女なのだから、自分で作ることはないように思うんだけど……。


「私の場合は貴族といっても三女だから、どんな家に嫁ぐことになるかわからないし、それこそ傭兵になって生活費を稼ぐという可能性だってあるから、料理ぐらいできた方が良いと思って家の料理人に教わったのよ」


 そういえばサシャって昔から逞しいタイプだったか。


「私は家の方針が大きいかしら。もともとは商家だし、時には従業員のために一家総出で料理を振舞って労うこともあったから、貴族になってからも当然のように料理を教えられたわ」


 そうだったんだ。

 つまり家のこともせず本ばかり読んでいたわたしが一番料理下手なのは当然なのね。


「わたしは料理が苦手で……。教えてもらえませんか」


 かくして元庶民の下級貴族が、高級貴族の子女に料理を教わるという奇妙な構図ができてしまった……。




 なんとか夕食も完成したけど、いまだにレーリーたちが戻らない。


「おかしいなあ。夕食までには戻るって言っていたんだけど」


「何かを見つけたのかもしれませんわよ?」


「レーリーのことだから目標を見つけて連れてくるんじゃないかしら?」


 私が予想していることを二人も言い出した。


「ええと……お二人もレーリーに対する認識はそういう感じなんでしょうか?」


 そう尋ねると、二人は顔を見合わせて笑い出した。


「以前から賢い従魔だなあとは思っていましたし。以前にもメイリンの指示なしでシーベル殿下を倒されましたでしょう。あの時もただの賢い魔獣という域を超えていましたわよ」


「元人間と聞いてむしろ納得しました。こう言っては失礼ですが、野外実習の際にメイリンがなさったいろいろな提案も、本当はレーリーの言葉を代弁していたのではなくて?」


「う、確かにその通りです。別にだまそうと思ったわけじゃないんですが」


「だますだなんて大げさね。ただあの時はあなたに意外な才能があると思って驚きはしましたけど」


 うん、最近のわたしの功績になっているのは大体レーリーのせいだから!


 そんな会話をしているところへ、アルドア様が駆け込んできた。


「大変だ! マサトが一人で戻ってきたんだが、どうやらレーリーが敵中に取り残されているらしい!」


 それを聞いてわたしは思考が停止した。


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