指名依頼編その5
指名依頼編その5
メイリン視点
先ほどまで村長の家で魔獣氾濫が起きたときの状況について改めて伺っていた。目新しい情報はほとんどなかったが、彼らが依頼を取り下げた本当の理由は判明した。
というかすでに目星はつけていたけど。
つまりあの白猫が村に居着いたことで魔獣たちが森から出てこなくなり、なし崩し的に魔獣氾濫も収まったということだ。
で、村人たちとしても白い魔獣が村の中に居着かれるのは困るけど、おかげで被害が小さくて済んだわけだし、現状特に悪さをするわけでもないので、村の外まで来るのは放置していたそうだ。
それでも子供達には近づかないように言っていたらしいが、いたずら盛りの子供がそんな言いつけを守るはずもなく、結果的には子供が白猫の見張りをしているというか、白猫が子供たちのお守りをしている先ほどの状況が生まれたらしい。
というわけでその日は村長の屋敷の離れをお借りして泊めさせていただくことになった。
この手の村には宿屋はないことが多いが、たいていは村長宅にある程度の人数が宿泊できる離れが用意されている。
役人などが視察に来ることもあるし、そうでなくても旅人や行商の人が一夜の宿を求めることもあったからだ。
車でも眠ることはできるが、せっかく泊まれる場所があるのだから、ありがたく使わせていただく。
で、明日は形だけだが森の調査に行くわけだけど、その前に今のうちにチームメンバーへ伝えないといけないことがあるため、食後に皆で集まった。
こっそりと白猫の魔獣にも部屋まで来てもらっている。
「ええと、実は出発前に皆さんへ伝えようと思っていたのですが、どう説明したものか迷ってしまいこんなギリギリになってしまったのですが」
「レーリーとナナコのことか?」
先回りしてシーベル殿下が口をはさむ。
「はい。もしかしてご存じでしたか?」
「いや、何か秘密があるだろうことは感じていたが、具体的には知らない」
「そうですか。今から話す件は学園長や魔術局長、強いては陛下もご存じの話なのですが、実はレーリーもナナコも元は人間で、異世界から転移してきたときに今の姿になったそうなのです」
さすがに私の話に、皆驚いた顔をしているが、先に陛下たちにもすでに伝わっていることを言ったので、反論はなかった。
「最初にレーリーとわたしが従魔契約をしたときに、レーリーと明確な意思疎通というか、会話ができるようになったんです。
その時に学園長とたまたま同席していた魔術局長に確認いただいています。
その後、ナナコについてはレーリーが最初に対峙したときに魔獣同士だったせいか会話できたそうで、レーリーがナナコに従魔になることを進め、彼女がそれを受けいれた、という流れになります」
「たしかにレーリーもナナコもとても大人しいですし、主人以外の話も聞いているような素振りを見せることがありましたわね。その話を聞けば納得ですわ」
サシャ様がそういって頷いている。
「で、今回の調査に当たっても同じように白い魔獣が目撃されていることから、もしかしたら同じように異世界から魔獣になって転移してきた人間かもしれないということで、わたしはレーリーやナナコを使って白い魔獣が対話可能かを確かめるように、そして相手が受け入れるなら従魔とするよう言付かっていたのです」
「そんな大事なことをなぜ今まで黙っていたんだ?」
アルドア様が当然の疑問を差しはさむ。
「ええと言い難かったといいますか、考えすぎだったかもしれませんが、いきなりレーリーとナナコが元は異世界人ですと言っても信じてもらえるか不安で、どうやって切り出すか考えているうちにずるずると……」
「「「「「「あー……」」」」」」
みなわかってくれたらしい。
「で、このタイミングで話したということは、そこにいる白猫の魔獣も元異世界人ということか?」
「はい。レーリーによるとマサト・ムラバヤシという方で、ナナコと同じ世界から飛ばされてきたそうです」
「なるほど。ということは彼が同意するなら、またメイリンが従魔にするということかい」
「いえ、さすがに従魔3体は目立ちますので……。できればマサトが同意するほかの方にお願いしたいのですが」
「それで本当にいいのか?」
「はい。そもそも今回の件がわたしたちのチームに対して指名依頼が出されたのも、わたし一人がこれ以上目立つ従魔を従えることがないようにするためですから」
わたしが説明すると、みな納得の顔をした。
「それで誰がマサトを従魔にしますか?」
今回は短くてすみません。
というか一回の投稿はどのくらいの長さが適当なんでしょうね。




