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幕間その9 武装仙女トモエ 完結編

あくまでも「武装仙女トモエ」の「完結編」です。

 桜咲姉弟と白栗鼠の三人はその後共に旅をし続け、いろいろな事件に巻き込まれたり解決したりしつつ、仇を追い続けた。


 そしてついに仇である多田正兵衛景義の居場所をつきとめ、そこへ乗り込んだ。

 しかし予想外なことに、そこには黒幕と目されていた鵡戸藩家老前藤小十郎直孝が白猫を抱えて共におり、さらに見知らぬ男が二人いた。


「ここをつきとめるとは。余程幸運に恵まれたようだ。いやむしろ不運といったほうが良いかな」


 多田がそういうと、見知らぬ男の一人が立ち上がった。


「小川平八郎忠政殿は前藤様の護衛で、わたしの兄弟子でもあるだけに剣の腕も仙術の腕も私より上なのだよ。わたしを討ちに来た以上、返り討ちにあう覚悟もできているだろう」


「君たちに遺恨も何もないが、雇い主の意向に逆らうことはできん立場ゆえ、覚悟されたし」


「覚悟するのはそちらよ。わたしをただの子供と侮らないことね!」


 そういうと桜咲巴は変身用合言葉を唱えて武装仙女トモエへと変身をした。




 そんなやり取りがある一方で、白栗鼠が白猫へと叫んでいた。

「ハッタン・バラン! 貴様を今度こそ逮捕する!」


「まさかそんな格好になってまで職務に忠実なんて、さすがに多元警察だけのことはあるな」


「ほざけ! さすがの貴様もこんな世界では碌な装備はあるまい!」


「それがそうでもないんだなあ。次元転移技術こそないが、この世界の技術レベル自体はそれほど低くもないし、物分かりの良い者もいるのだよ。例えばこちらの人物のようにな」


 そういってハッタン・バランはその場にいた最後の一人に目を向けた。


「紹介に与りました山賀左之助源内と申します。いやはや異世界とやらの技術は素晴らしいものですな」


「バラン! 現地人に我々の世界の技術を教えたのか!」


「教えたといっても修理を頼んだだけだ。おかげで壊れていた次元渡航船ももうすぐつかえるようになる」


「『連盟条約』第301条違反を犯したな!」


「そもそも『連盟条約』そのものが傲慢なのだよ」


「それは俺やお前が決めることじゃない!」


「何とでも言うがいい。さあ源内よ、わたしをもとの姿に戻せ」


 ハッタン・バランがそう告げたが、山賀は動こうとしなかった。


「何をしている源内?」


「バランさん、あなたには感謝しています。これほどの技術を知る手がかりをくれたのですから。ですがあなたはこれ以上のものをわたしにもたらすことはできません」


「何?」


「あなた自身が言ったではありませんか。『連盟条約』により我々は本来、あなたがたとの正式な交流はできないと。

 そして正式に交流するには次元転移技術を手に入れたうえで、唐南蛮も含めた天下統一が必要になると」


「あ、ああ確かにそうだ」


「わたしがあなたから仕入れた知識はほんの欠片でしかないのに、わたしでも理解するのに半年もかかりました。

 では正式に交流できるようになればそれ以上の素晴らしい知識を知ることができるということです」


「お前は何を言っている」


「もちろんそれらの知識を自力で見つけ出せたなら、それが一番でしょう。ですがすでに他人が見つけた知識があるなら、先にそちらを受け入れ、さらなる新しい発見を目指すことこそ、わたしの進むべき道なのです。

 そのためにも異世界で犯罪者であったというあなたはもう不必要なのですよ。

 あなたから仕入れた知識だけでも、この天下を統一するには十分でしょう。そしてそれをもってこの天下を異世界に向けて開国し、より進んだ知識を手に入れることにしたのです」


「どうやら手下と思っていた相手に裏切られたようだな」


「くそっ、たとえ姿が変わっていても貴様如きが俺をどうにかできると思うな!」


 そういって白猫姿のバランは山賀に飛びかかったが、それは障壁に阻まれた。


「なに? 物理防御シールドだと? この世界にはそんな技術はないはずだ!」


「あなた自身が言ったではありませんか、この世界の技術も捨てたものではないと。

 わたしたちにも考える頭はあります。あなたがもたらした技術や知識を応用すれば、わたしにもこの程度のものを作ることは可能です」


「おまえ、とんでもない奴に余計な知恵を付けたな!」


「黙れ! こうなっては仕方がない! これだけは使いたくなかったが、イチかバチかにかけるしかない!」


 彼は前足につけていたリングを触った。


「ついでに行きがけの駄賃だ! ここにいる全員を本物の動物に変えてやる!」


 かれは変身グッズを銃の形に改造したものをその場にいるものに向けた。



 その後の展開はまさに一瞬のできごとであった。


 それまでトモエと激闘を繰り広げ、圧倒していた小川がバランへと突進し、かれの銃を持っていた前足をリングごと切り飛ばし、銃に装てんされていた弾丸のようなもの数個がその場にちらばった。


 しかしすでに引き金が引かれていたその光線は同時に小川へと当たる。


 さらに事態は進展する。


 突然、切り飛ばされたリングを中心に時空震が発生し、小川はそれに巻き込まれて消えてしまった。




 一方、小川と戦っていたトモエは相手が突然自分に背を向けたことに驚いた。


 しかし彼女の仇は小川ではなく多田である。

 目的を見失っていなかった彼女は自分を邪魔するものがいなくなると、小川を追うことなく真っ直ぐに多田を狙った。


 多田は生じている出来事についていけず茫然としていたところに、トモエからの致命傷ともいえる一太刀を受けた。


「政之輔、今です!」


 トモエは弟にそう声をかける。

 仇のとどめは跡継ぎである桜咲政之輔自身で行わなければならない。


 政之輔は気合の雄叫びを上げつつ、多田の首をとった。




 トモエと政之輔が遂に宿願を果たした余韻に浸る間もなく、事態はさらに進む。


「トモエ! 時空間の裂け目ができた! なんとか封印できないか! 転送機器が暴走したらしい!」


 白栗鼠の言葉にそちらを向くと、なにやら得体のしれない色の渦が小川のいたはずのあたりに渦巻いており、しかも徐々に拡大していた。


「くそっ、あのサイズなら暴走してもこんな大きくなるはずはないんだが! おい、そこの山賀とか言ったな、お前のシールドも最大出力にしてこの時空震を抑えろ! そうしなければお前も含めて四里四方にいるものがすべて死ぬぞ!」


「むう、逃げる暇はないようですね。この試作機でどこまで抑え込めるかわかりませんがやってみましょう」


 山賀のシールドが時空震を抑え込もうとする一方で、トモエが封印術発動の合言葉を唱えて時空の裂け目の修復にかかるが、徐々に時空震の渦が拡大していった。


「トモエの封印術でも修復できないか……!」


「……おそらく別の世界で大規模かつ強引な次元転移が行われたんだ。俺の携帯転移装置の作動がその余波を呼び寄せたのだろう」


 腕を切られて呻いていたバランが、そうつぶやいた。


「なるほど、さらに別世界からこの世界に穴が開いてそこから吸い出されようとしているというわけですね。それならば簡単です」


 そういうと山賀はシールドを維持しつつ、懐から札を数枚取り出した。


「我が国の仙術にもそちらの封印術に当たるものがあります。こちらを使えば穴をある程度はふさぐこともできましょう」


 そういいながら山賀は札を次々にその渦へ向かって投げ込んだ。

 渦は札を吸い込みながら徐々にその勢いを弱めていった。


「これで今の手持ちは最後ですが、どうやら足りないようです。それでもその大きさならそちらのお嬢さんでも対処できましょう」


 言われるまでもなく、トモエは展開していた封印術により、最後まで残っていた渦を完全に消し去った。




 前足を失った白猫姿のままのバランから自分の変身前データを回収した白栗鼠はやっと元の姿に戻った。


「これでやっと元の世界に帰ることができます」


 バランが持っていた通信機器で多元警察本部へと連絡を取り終わった男はそう語った。


 あの騒動の中で家老の前藤はいつの間にか行方をくらましていた。

 鵡戸藩へと戻ったのであろうが、それはもうこの世界の問題であり、彼が口出しすべきことではなかった。


 桜咲姉弟は見事に仇討を成し遂げた。見届け人としてなぜか山賀が名乗り出た。


「もともとわたしはバランという男の持つ技術や知識をこの世界で再現できる人物ということで前藤殿に雇われていただけで、別に彼への忠義を尽くす義理はありませんから」


 山賀が作った機器は最後のシールド展開で無理をさせすぎて壊れていた。


 修理しようにも多額の費用がかかるため、前藤という出資者がいなくなってはそれもままならない状態だった。

 しかも開発にかかった費用に対して、前藤はいつも金がかかりすぎると苦情を言っていたので、そろそろ見限ろうかと考えていたので、彼を裏切る形になっても山賀の心はまったく痛まなかった。


「お前については本来なら連盟条約301条違反で逮捕する事案なのだが、なにしろ現地人を無断で処分するわけにはいかない。後日連絡があるからそれまでは静かにしているように」


「わかっていますよ。できれば連れて行ってほしいところですがね。それがあなた方にとっては一番安心できるでしょう」


「……私の一存では判断できないが、そのような事態になる可能性はあるとだけ言っておこう」


 その返答を聞いて、山賀はいかにも楽しみだという顔をした。


「あの、わたしと戦った小川という方はどうなったのでしょうか」


「……あの男は時空の彼方へ飛ばされてしまった。助かる確率は低いが、運がよければあの時に大規模転移術を行使した世界に流れ着いている可能性はある」


「あの方がこのまま亡くなられるのは惜しいと思うのです。もしも助かっていたなら一度私たちに会いに来ていただくようお伝え願えませんか」


「俺はその方面で関われるかはわからないが、機会があれば伝えよう」


 こうして武装仙女トモエは姿を消し、桜咲巴は弟の政之輔、見届け人となった山賀左之助源内とともに故郷の鵡戸藩へと帰っていった。


というわけで以前に没にした話が丁度この話の伏線に使えそうだったので再利用。

ちなみに前回書き忘れましたが、変身後のトモエの姿はおそらくニチアサでも問題ない感じ。

ただし彼女の生きている時代ではかなり際どかったのでしょう。


次回から、本編に戻ります。

またしばらく間が空くと思いますが、気長にお待ちいただければと思います。


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