プロローグその8
わたしは連戦もやむなしと思い、相手を待ち構えることにしました。
しかし現れたのは、意外にも子供ほどもある大鼠でした。
しかもこの鼠には角が生えています。
感じる気配的には小鬼や狗人より弱そうではあります。ただ、今のわたしにとってはむしろ戦いにくい相手かもしれません。
なにしろ今までは自分の小ささを武器に戦っていましたが、今度は相手も四つん這いなので、今までと同じ戦法をとることができません。
さらに言うと、なにやら小鬼や狗人とは別の力をその大鼠から感じます。
わたしは慎重に相手との間合いを取りつつ大鼠を観察していると、大鼠もこちらを警戒しているのか少し離れたところで止まりました。
しばらくにらみ合いを続けているうちに、なにか異様な気配が大鼠からしたかと思うと、いきなり大鼠から火の玉が飛んできました。
わたしは突然のことに混乱しながらも、素早くその火の玉を避けます。
幸い、洞窟の中で他に燃えるものもないので、とんできた火は壁に当たってすぐに消えました。
しかし避けたほうに大鼠……いや火を使うから火鼠といったほうがいいかもしれませんが、とにかく火鼠が突進してきています。
火の玉という予想外の飛び道具に驚きはしましたが、それでも飛び道具に別の攻撃を重ねるのは基本です。
ですから火鼠の突進は火の玉が飛んできた時点で想定済みです。
わたしは突進してきた火鼠を躱し、さらにその背中に飛び乗りました。
そこからさらに喉へ移動して噛みつきます。
この体勢になれば、あとは喉を食い破るだけで勝利を収めることができました。