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褒賞編その6

メイリン視点


“メイリン、それだけの年金を単純に今回の功績だけで与えるというのは少し多すぎる気がします。何か裏があるのではないでしょうか”


 準男爵に叙せられた時の年金額を聞いて、レーリーが何やら不穏なことを言ってきた。


『裏があるってどういう意味?』


“一番考えられるのは、やはりナナコのことですね。ナナコ自身が戦えるか微妙ですが、それでも彼女が非常に強い魔獣であることに変わりありません。

 そんな強力な従魔を従えているメイリンを、国が放ってはおかなかったということでしょう“


 う、確かにレーリーの言う通りかも。


「サシャ様、今回の叙爵の件ですが、わたしにはとても荷が重く感じます。辞退などはできないでしょうか」


 できれば面倒ごとは避けたい。平民の分際で叙爵なんて恐れ多いと言って辞退してもいいんじゃないかな?

 そう思ったけど、サシャ様の反応は微妙だった。


「辞退ですか。できないことはないと思いますが……」


「いや、辞退しないほうがいいだろうな」


 さらにサシャ様の言葉を否定するようにシーベル殿下が口をはさんできた。


「どうしてでしょうか?」


「おそらく今回の叙爵は、おまえのナナコが関係しているだろう」


 あ、やっぱり。


「あれほどの従魔を従えたお前を、国が放置できないと考えるのは自然なことだ。今回の叙爵は、いわばお前がこの国にとって危険かそうでないかの一つの試金石だろう。

 おまえが今回断ったからと言って、すぐに危険だと判断されることはないだろうが、それでも国に従う意思がないとみなされる可能性はある。

 そうなれば学園にいる間はともかく、卒業後はいろいろ苦労することになるだろう」


「ですが、卒業後は領主者のところで働こうと思っているのですが」


「国がお前の叙爵を決めた時点で、お前に教育を受けさせた領主やサシャの実家であるマイナル伯爵家にも、その通達はしているはずだ。

 その際、相応の金銭も支払うことについても話し合いがなされる。

 しかしお前が断るとその話もなくなるわけで、国からの叙爵を蹴ったお前を改めて雇う気になどならないだろう。

 まあその前に、学費等の資金援助を打ち切るだろうが」


 あー、すでに外堀は埋まっているということですか。

 たしかに吹けば飛ぶようなうちの領主様が、国の意向に逆らうような人にいつまでも資金援助してくれるはずもないよね。


 サシャ様も頷いているので同じ意見なのだろう。おそらく先ほど話そうとしたことを、シーベル様が言ってしまったのだ。


 それでもわたしはいきなり貴族になってしまうことが怖い。


 そんなわたしの気持ちを感じたのか、エリナ様が声をかけてくれた。


「メイリンさん、いきなり貴族になることで怖がっているのだと思いますが、そこはあまり気にしなくても大丈夫ですよ」


 なぜ気にしなくてもいいんだろう。


「そもそも大抵の貴族は、準男爵を本当の貴族とは認めていません。一代限りの名誉貴族ですし、功績を上げた平民に与えられると知っていますから」


 さらにエリナ様が言うには準男爵は年始に行われる国王主催のパーティーへの出席義務はあるが、それ以外の貴族のパーティー等へは招待されない限り出席義務はなく、実際コネがない限りは招待されないし、またパーティーを開く義務もないとのこと。

 このパーティーというのが曲者で、男爵以上であれば最低年一回はパーティーを開く権利があるのだが、実質的にこれは義務となっており、それはつまりパーティーを開けるような屋敷を持たないといけないし、そのための使用人も雇う必要があるわけである。


 こうした事情から、年金額も男爵の場合は三千万以上と一気に跳ね上がるが、それでも何らかの役職に就いてその手当をもらっていなければ、かなりぎりぎりの生活となるらしい。


 それに比べれば準男爵はまだ気楽ということのようだ。


 さらにアルドア様が励ましてくれた。


「別にお前が準男爵になったところで、俺たちのチームが変わるわけじゃない。それに必ずどこかの家が寄り親になり、貴族に必要なことを教えたり世話をしてくれたりする。

 大体、お前はナナコに魔石を用意する必要があったんだろう。

 年金が入るなら、そのお金である程度は賄えるだろうし、部屋も貴族寮に移動できるのだから今よりも広い部屋を使える。

 叙爵を受ければお前の抱えていた問題の多くが解決するんだ。断る理由がないだろう」


 確かにそう言われてみればそうなのだ。

 気が動転してしまっていたが、断ることができないのであれば受け入れるしかない。


「1週間後に式典ということでしたが、何を準備すればいいでしょうか」


 わたしがそういうと、サシャ様もほっとした顔をした。


「そうね。先ほど渡された準備金であなたの爵位にふさわしい服を用意する必要があります」


 そうか、わたしは普段着のほかは学園の制服しか持ってないけど、さすがに学園の制服で式典に出席するわけにはいかないか。

 だけど貴族服ってオーダーメイドのイメージがあるけど、今から間に合うんだろうか。


 わたしの疑問に対して、エリナ様が答えてくれた。


「本格的な服を作るには間に合いませんが、こういう時のために貴族服のレンタルをしている店があります。平民が準男爵や騎士爵を叙爵するときは、服を作るのが間に合わないことが多いので、意外と需要があるそうですよ」


「ですがそのような店で、メイリンに合ったドレスを見繕えるのでしょうか」


 今度はサシャ様が疑問を呈したが、エリナ様が問題ないと答えた。


「ある程度合う服を探して、あとは期間内で調整してもらうのですよ。時間に余裕があったほうがきれいに仕上がりますから、今からサシャ様も一緒に行きませんか?」


 エリナ様がサシャ様も誘い、結局その日は三人でレンタル服店へと向かうことになった。

 そして散々着替え人形にされて、ようやく決まった時はもう夕方だった。




 それから式典までの一週間は、授業以外の時間は式典の準備で大変だった。


 服だけでなく靴やアクセサリーなど揃えないといけないものがたくさんあり、さらに叙爵時の受け答えや振る舞い方などについて教えてくれる指導員が来てくれたりと、ほぼ休みなしだった。


 おかげでレーリーとナナコはその間、ほぼかまってあげることができなかった。


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