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褒賞編その5

 放課後、わたしたちはカイル先生から呼ばれて学園長室へ向かった。

 討伐実習の件という話だけど、1週間も過ぎてからなにか叱られるんだろうか?


「さて、皆さんになにか問題があって呼んだわけではありませんので、気を楽にして聞いてください」


 わたしたちを前にして、ルース学園長がそう前置きした。

 問題があったわけじゃないならいいけど、それならなんだろう?


「先日の討伐実習の際に、皆さんは小規模とは言え魔獣暴走に直面し、それをほぼ被害なしで抑えるという成果を上げました。

 そのことは学園からだけでなく傭兵ギルドからも国へ報告されており、裏付けもとれております。

 その功績に対して、国は皆さんに褒賞を与えることを決定しました」


 おお、それって結構すごいんじゃないかな。

 他のメンバーもちょっと驚いているのが分かる。


「それからメイリンさん」


 え、わたし?


「君にはさらにランク5超の魔物を押さえ、それを従魔とした功績があります。

 それに対して、別途準男爵位への叙爵が決定しました。おめでとう」


 は? 今なんて言いました?

 ジョシャク? ジュンダンシャクイ?


「授賞式および叙爵式は1週間後を予定します。それまでに式典参加への準備をお願いしますね」




レーリー視点


 メイリンが貴族に叙せられることになったようです。

 その可能性は予想していましたが、絶対ではなかったのでメイリンには言いませんでしたが、やはり心の準備をさせておいたほうが良かったかもしれません。


 メイリンが立ったまま放心状態になっています。


“メイリン、メイリン、こんなところで意識を失わないでください”


「は、はい」


 やっと戻ってきました。


 ただこの後もほぼ上の空状態でまともに学園長の話を聞けていません。

 メイリン、せっかくの準備金をそんな雑に扱ったら落としてしまいますよ。


 ほら、部屋を出たところで落としました。

 仕方がないのでわたしが拾いに降りたところ、それに気づいたサシャさんが拾ってくれました。


「レーリー、あなたって本当に賢いのね。メイリン、ほらそんなにぼうっとしているから渡された準備金を落としましたよ」


「え、あれ、すみません」


 サシャさんから一時金の入った袋を渡されてやっと自分が落としたことに気づいたようです。


「メイリン、急なことで動転しているのはわかりますが、わたしがいろいろ教えてあげますので、気をしっかり持ってくださいね」


「そうだぞ、名誉貴族とはいえ、貴族になれるんだ。しかも騎士爵ではなく準男爵位だ。法衣貴族として年金も出る。うらやましい限りだ」


 うん?アルドア君によると年金が出るのですね。

 もう少し詳しく知りたいものです。


“メイリン、こちらの国の貴族制度はどのようになっているのですか”


『え、わたしもそこまで詳しくないけど』


“それならこの機会にきちんとサシャさんに聞いておきましょう”


『……うん、そうしたほうがいいよね』


 メイリンもやっと落ち着いてきたようです。




「サシャ様、わたしはあまり貴族の細かい制度や仕組みについて詳しくないのですが、まずそこを教えていただいてもよろしいでしょうか」


 教室に戻ると、メイリンが早速サシャさんに聞き始めました


「そうね、今まではそれほど詳しく知らなくても問題なかったでしょうし、この機会にもう少し詳しくお話ししましょうか」


 そういってサシャさんが教えてくれた内容は大体こんな感じです。


 まず大雑把な爵位として、公王、公爵、侯爵、辺境伯、伯爵、子爵、男爵、準男爵、騎士爵があるそうです。


 このうち、公王位は帝国の統一戦の際に帝国に降った国の王族が封じられた爵位で、現在四家あるそうですが、今後減ることはあっても増えることはおそらくないとのこと。

 このおそらく、というのはすでにこの大陸には他の国はないからですが、一方で海の向こうにある大陸にはまだ数多くの国があるからだそうです。


 あくまで可能性の話ですが、そちらの大陸の国がもしも帝国に降るようなことがあれば、公王が増えることもありえるということです。


 公爵位は基本的に皇族が封じられる爵位だそうですが、現在5つ存在しており、これも滅多なことでは増やさないそうです。

 まあすべての皇族を公爵にしてしまうと、国が破産してしまうでしょうから、当然と言えば当然です。


 侯爵位と辺境伯位は、帝国創建の際に功績の大きかった臣下が封ぜられた爵位で、違いとしては侯爵位は文官系が封ぜられ、辺境伯位は武官系が封ぜられたとのこと。

 また領地についても、侯爵は都に近い場所か領地を持たない法衣貴族が多いのに対して、辺境伯は都から離れた場所で、ダンジョンや未開の地などが多く含まれるような比較的広い領地が与えられているそうです。


 いわば中央の目が届きにくく、またある程度の力がないと治めるのが難しい地方における重しになっているということのようです。


 ちなみに公王と公爵、また侯爵と辺境伯はそれぞれ宮廷内では同格だそうです。


 伯爵は上記以外の功臣に与えられた爵位で、基本的には領地持ちだそうですが、中には法衣貴族もいるそうです。

 また大臣や将軍など国の高官に就くには、少なくとも伯爵位以上を持つことが条件だそうです。


 子爵位は少し特殊で、公王から伯爵までの嫡子は自動的に名誉子爵位になるそうです。

 ただしそれとは別に、領地持ちや法衣の子爵もいるそうで、そのあたりはいろいろ政治的に面倒な経緯があったそうですが、詳しいことはサシャさんも話すのが面倒とのことで教えてもらえませんでした。


 さらに男爵位ですが、これは基本的には法衣貴族のみだそうですが、しかし中には代官として任地を持ち、そのままその土地を代々任されてほぼ領地持ちと変わらない人も多いそうで、どうやらメイリンに教育を受けさせた領主様もこれに該当するようです。


 そして今回、メイリンが受けるという準男爵位と騎士爵位ですが、これはどちらも法衣貴族扱いだそうです。


 この二つの違いは騎士爵位から説明したほうが早いとのことで、実は騎士爵とひとくくりに言っても、その中にいろいろ違いがあるそうです。

 まず公王から伯爵までに生まれた子供うち嫡男以外の男子は、騎士爵が自動的に与えられます。


 また子爵と男爵の嫡男にも騎士爵が自動で与えられます。


 他に、今回のように何らかの功績を上げて勲章が与えられる場合、爵位を持っていない平民や下級貴族の子供であれば同時に騎士爵位が与えられます。


 他にも、外国人であっても我が国に何らかの功績があると認められた場合や、外交官などが任期を終えて国に戻る場合などにも騎士爵位が与えられるそうです。


 これらは名目上は同じ騎士爵ですが、実際にはいろいろな違いがあるそうで、ただ一つ共通していることは年金はなく、褒賞などの形で一時金が支払われるだけ、ということです。


 いわばあくまでも名誉を与えるものなので、外国人に与えても問題ないという訳です。


 ですので元々貴族の子弟だった場合を除けば、騎士爵に任じられてもほとんど義務がない代わりに特権もありません。

 せいぜい転移陣の利用など一部のサービスにおいて貴族待遇が受けられる程度とのことです。


 また罪を犯した場合も貴族に準ずる罰則が与えられることになるそうで、詐欺など罪の内容によってはかなり重くなることもあるようです。


 そして準男爵ですが、これは功績を上げた平民か騎士爵位に与えられるものと決まっていて、騎士爵との大きな違いは年金が出るということです。

 ですから騎士爵、準男爵とも一代貴族ではありますが、年金の有無という大きな違いがあることになります。


「ということは、わたしも今後は年金がもらえるということ?」


「ええ、そうなりますわね。準男爵ならおそらく年間800万から1000万程度だと思いますが」


 サシャさんが年金額を言ってくれましたが、金額が大きくてすぐにピンときません。


“800万から1000万というのはどの程度の価値なのでしょうか”


『ええと、たしか平民一人が1年暮らすのに必要な額が200万から300万だったかな』


“するとかなりのお金持ちということになりますね”


『そうなるけど、実感がまだわかない……』


 それはそうでしょう。ただもう一つ気にしないといけないことがあります。


“メイリン、それだけの年金を単純に今回の功績だけで与えるというのは少し多すぎる気がします。何か裏があるのではないでしょうか”


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