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褒賞編その1

メイリン視点


 朝、妙に苦しいと思って目を覚ましたら、ナナコの足がわたしの上に乗っていた。


「ナナコ、足が重いよ!」


“ふぁい、ごめんなさい”


 昨日寝る前は香箱座りをしていたのに、今は腹を見せてだらしなく寝ている。

 そういえば外がもう明るいし、いつもならレーリーがわたしを起こしているころじゃないかな?


 レーリーを探したら、足元で寝ていた。

 部屋の時計を見たら、もう7時を回っている。普段は6時起きでトレーニングをしているから、どうやら珍しくレーリーが寝坊したようだ。今からだともう学園に行く準備をして朝食を食べに行かないと間に合わない。


「レーリー、もう朝だよ」


 声をかけるが目を覚まさないので、軽くゆすってみる。


“うーん、どうしましたか”


「もう朝だよ。7時を回っているから、朝食を食べに行かないと」


“もうそんな時間なんですね。すっかり寝坊してしまったようです”


 そう言いながらも、なんとなく動きに切れがない。


「レーリー、もしかして体調が悪いの?」


“いえ、そういう訳ではないのですが。たぶん大丈夫です”


 そう答えると、レーリーはいつものようにわたしの肩に移動してきた。


「朝の訓練は中止だね」


“わたしのせいです。すみませんでした”


 わたしが部屋を出ようとすると、後ろからナナコもついてきた。


「ナナコも食堂までついてくるの?」


“異世界料理に興味あります! 食べなくてもおなかは減りませんが、おいしいものを食べられればモチベーションが上がるじゃないですか。

 昨日は部屋に来てそのまま寝てしまったので、いよいよ初食事です!“


「ごめん、レーリーなら私の分から少し分けてあげられるけど、ナナコだとそれじゃあ足りないよね。

 寮の食堂は寮生の分しか用意してないはずだから、ナナコが満足する量はちょっと無理だと思う」


“がーん! わたしの異世界料理道が早速挫折しました!”


「そのうち、何か食べさせてあげるからもう少し我慢してね」


“うう、じゃあ部屋で留守番してます。食べられないのに見ているのは悲しいので……”


 落ち込んだナナコが部屋に戻ってしまった。


“たしかにわたしたちは魔獣なので食べなくても生きていけますが、元が人間なので何かを食べたいという欲求も感じます。できれば早めにナナコの願いをかなえてあげてください”


「うん、ちょっとかわいそうだしね」


 いつかおなか一杯食べさせてあげたい。




 学園に行くときはやはり目立った。ナナコから乗っていくか聞かれて、乗せてもらったから余計だ。これなら歩いてくればよかった。自業自得だけど。


 ちなみにレーリーはわたしの首に巻き付いたまま寝ている。わたしも寝てしまおうかな。


 学園についたが、一年はまだ討伐実習の最中であり、戻ってきているグループは少ないので授業もなかった。

 とはいえ休みという訳ではなく、わたしたちのように早く帰ることになったグループはそれぞれでまとまって先生へ提出する討伐実習の報告書を準備している。


「わたしたちはどこまでが討伐実習扱いなのでしょうか」


 サシャ様が基本的な疑問を口にした。


「少なくとも最初の休憩をとるところまでは間違いないが、その後については実習ではなくて完全に実践だったよな」


「ですが最後までいたのですし、報告自体はダブタン氏からも行っているわけですから、全部含めてしまってもよいのではありませんか」


 アルドア様が自分の考えを述べると、エリナ様が反論した。


「俺は逆に、最後まで含める必要はないと思う。下手に含めると発表会でいろいろ面倒だからな」


 シーベル様、面倒というのはどうかと思う。同意するけど。


「魔獣暴走の件については特に口止めされませんでしたけど、あまり口外してほしくないという感じでしたわよね」


「隠すわけにはいかないけど、積極的に公開したくないという感じだったな。やはりノルマを達成したところまでを報告書にまとめることにしよう」


 結局そういう結論となった。

 実際にその方針に沿って報告書をまとめるのはわたしやゲイツ君である。

 なのでまとめる範囲が狭くなり、かつ面倒な部分をカットできるのは素直にうれしい。


 とはいえ二人でまとめるといっても、他のメンバーもその内容について推敲し、良い報告書になるように頭を悩ませている。


 なおレーリーは相変わらず私の首に巻き付いたまま寝ている。

 ナナコは最初は興味深そうに見ていたが、やはりまだ言葉が分からず飽きたのか同じく寝てしまった。

 そして寝ているナナコをエリナ様がまた自前のブラシを持ち出してブラッシングしていた。

 ずいぶんと気に入ったようだ。


「そういえばいつもはわたしたちの話を聞いているみたいにこちらを見ているレーリーが、今日はずっと寝たままですのね」


 サシャ様が急にそんなことをいった。


 聞いているみたいって、実際のところ聞いているんだけどね。

 だけど確かに今日は朝起きた後、ずっと寝たままだ。


「従魔は寝ている時に魔力や体力を回復するからな。先日の戦いでレーリーも疲れたんだろう」


 アルドア様がそのようにサシャ様に答えたが、わたしはむしろその答えに疑問を持った。

 レーリーは先日の戦い程度で疲れが残るような子じゃない。

 ただ、わたしがナナコとの従魔契約をする際にわたしに魔力供給をしすぎてダウンしただけだ。


 翌日には起きたからもう回復したのだと思ったけど、よく考えたらその後も寝ている時間のほうが多い。

 討伐実習に行く前は夜遅くまで本を読んで勉強するほどだったのに、昨夜もすぐに寝てしまった。


 今朝、レーリーが寝坊したときにも違和感があったが、その時はレーリーから大丈夫と言われてそのまま流してしまった。

 だけど明らかに何か問題が発生しているに違いない。


 わたしは急いで報告書をまとめる。


「これで完成ですね。ではわたしがカイル先生のところへ届けに行きます」


「あら、そんなに急がなくても良いのでは?」


 サシャ様が止める。


「申し訳ありません、少しわたし自身もカイル先生に確認したいことがありますので、先に帰っていていただけますか」


「そうですか。ではまた明日」


 サシャ様たちが特に不審に思うことがなくてよかった。


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