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幕間その2 世界差談義

※討伐実習編その20とその21の間の話に行われた雑談

メイリン視点


 レーリー、ナナコと一緒に別室で先生たちが来るのを待たされていたが、なかなかやって来なかった。


「まだ先生たちは来ないみたいだし、今更なんだけど二人の以前の世界について、この機会にもう少し詳しく聞いてもいいかな」


 どうせ時間があるのだ。もう少し互いのことを知るようにしたい。


“わたしたちがいた世界のことですか?”


「うん、それぞれ別の世界から来ているみたいだし、違いをもう少しきちんと知っておきたいと思って」


“わたしもナナコがいた世界については少し興味があります”


 ナナコの確認に、わたしとレーリーが同意する。


“じゃあ、わたしから説明するね? といってもそんなにすごい世界でもないと思うけど”


 そこからのナナコの説明によると、彼女の世界もレーリーと同じく魔法は存在せず、代わりに科学が発達しているということだった。

 飛行機や自動車、列車といった交通網も発達しているらしい。


「交通網はいいわね。こちらでも飛行機や列車の研究開発はされているけど、いろいろ問題があってなかなか普及するところまではいかないわね」


“そもそもこちらの魔動車ですか? あれも驚いたのですが、ほかにも空を飛んだり、大量の人を運ぶ車まであるんですね。わたしの世界はその点ではずいぶん遅れているようです”


 レーリーは素直に関心しているが、ナナコには別の疑問があるようだ。


“こっちで飛行機や列車が実用化できない問題って、なんなの?”


 あー、そのことね。


「一つには、転送陣の存在があるわ」


“転送陣ですか。それってつまり人や物を魔法で移動させることができるってことですよね”


 ナナコが食いついてきた。一方のレーリーは何か分からないようで首をかしげている。


「うん、ただこれはコストが高くて、しかも一度に運べる量も限られているから、基本的にはある程度の規模の都市の間だけにあって、貴族やお金持ちが移動するのに使っているのが一般的ね」


“一般人はつかえないの?”


「平民も利用は可能だけど、利用にあたって役所でパスポートを取得する必要があるし、しかも利用料が高いうえに予約が取りにくいから、さっきも言ったようにお金持ちでもなければまず利用することはないわね」


“そうなんですか”


「あと、こちらのほうが理由として大きいかもだけど、魔獣の存在だね。飛行機は空を飛ぶ魔獣に狙われやすいらしくて、実験段階で落とされることが多いんで中々実用化まで行けないと聞いたことがあるわ。

 列車については、一応市内を回る路線と大都市間で数本は運用されているけど、特に都市間の路線はレールをスライムに食べられてしまうとかで維持管理費が馬鹿にならないらしくて、採算の取れる路線が限られるらしいわね」


“スライムですか。スライムが嫌がるような物を置いておくとか、そういう対策はできないの?”


「一応あるにはあるんだけど、効果が1か月ほどで範囲も100mほどだから、結局費用がかさむことには変わらないとか」


“スライムとは、あの粘液みたいな体をしたものですよね? あれは金属も食べてしまうのですか?”


「うん、種類にもよるけど、結構何でも食べちゃうんだ。ゴミ処理場とか製鉄所では重宝しているけど、野生のスライムはかなり厄介だよ。

 動きは遅いし攻撃力も弱いから滅多に襲われることはないけど、打たれ強い上に魔法も効きにくいから、傭兵が嫌がる討伐依頼のトップ3に入ると聞いたことあるし」


“なるほど。町や村の中には入ってこないのですか”


「普通に町や村の中にも入ってくるわよ。

 ただ、スライムは不思議と生きている動物や植物を食べることは滅多にないし、むしろ掃除屋として重宝されているわね。

 ただ野生のスライムが家の中に入ると厄介だから、自分の家を持てば、家の周りにスライム除けの薬をまくのがルールね。別に罰則があるわけではないけど、まかないと家の中に入り込まれてあっという間にいろんなものを駄目にされてしまうから、それがそのまま罰になるわ。

 あと、たまに悪食のスライムが出現すると石でもなんでも食べてしまって大変なので、そういったスライムに討伐依頼が出されるんだけど、下手すると武器を駄目にされたりするらしいわね。だから嫌がられるんだけど」


“なんか、スライムのイメージがわたしの持っているものと異なります”


 ナナコはどんなイメージを持っていたのだろう。


「話がズレてしまったけど、レーリーの世界はどういう世界だったの?」


“私の世界はこちらやナナコの世界と比べると、技術面ではかなり遅れていたようです。普通に馬が乗り物として使われていましたから。

 あとはわたしが死ぬ数年前に天下統一されたばかりだったので、まだまだ戦国の荒い気風が残っていたようにも思います“


“ガチ戦国時代に生活していたんだ。なんていう国?”


“ええと、最初は『ホウ』という国にいて、その後『エイ』という国が天下統一したのでその国に仕えました”


“聞いたことないから、やっぱりわたしの世界とは別だね”


“わたしも『ニホン』という国は聞いたことがありませんので……”


 そんな話をしているうちに、先生方が見えられて話はそこで終わった。


次回幕間も来週末くらいに掲載予定です。

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