討伐実習編その21
カイル先生がルース学園長と一緒に来たのはわかるけど、なぜ今日もマダラン魔術局長が一緒にいるんだろう。
「さて、ダブタン殿からも一通り聞いていますが、今回はそちらのホワイトタイガーを従魔にしたということで間違いないですか」
カイル先生が代表してわたしに質問してくる。
「はい。まあいろいろありまして」
「その時にレーリーがホワイトタイガーを探知して森の中へ駆け出して、それをあなたが追いかけたというのは本当ですか」
いきなりそれを聞いてきますか。
隠すわけにもいかないので、正直に答えるしかない。
「ええと、その通りではあります。一応追加の説明をすると、レーリーは走り出す前に、わたしに森の奥へ誘導するので、わたしには逃げるようにいっていました」
「では君がレーリーを追いかけた理由は?」
「……あの時は混乱していたのだと思いますが、レーリーに置いて行かれることが凄くつらく感じたので追いかけました」
「やはりか……」
わたしの話にカイル先生と学園長は驚いていたけど、マダラン局長がなにやらつぶやいた。
やはりと聞こえたけど、なにかあったんだろうか?
「あれから従魔契約のことをいろいろ調べてみた。まだ解除方法は見つからないが、過去に従魔契約を人に対して行った実験の記録を見つけたんだよ」
マダラン局長の言葉に、わたしは驚いた。カイル先生と学園長も同じく驚いている。
「それって、禁止事項ではないでしょうか」
そう、特に契約が絡む魔法の取り扱いについては厳重な規則が存在する。
当然、人体実験などは禁止されており、悪質な場合はかなり重い罰則が適用されたはずだ。
「もちろんだ。その記録自体は今から300年ほど前に行われた人体実験のもので、一般閲覧はできない資料になっている」
「300年前なら、確かにそういうことが行われたとしても不思議はないか」
ルース学園長がそうつぶやいた。
人体実験とか怖いけど、過去のそういう積み重ねの上に現在の魔法技術が成り立っているのも事実なんだろう。
「それで、その記録には何が書かれていましたか」
「細かい点は省きますが、従属された側の行動として、いまメイリン君がいったように、主人側の近くにいたがる傾向があると。主人の命令なく引き離されると落ち着かなくなり、なんとかして主人の元へ戻ろうとしたことが記録されていた」
あの時のわたしと同じ状態になったんだろう。
「つまり従魔契約にはそうした影響が出るということですね」
「そうなる。ただなにしろ300年前の記録だし、実験も一人に対してしか行われなかったらしいので、それが本当に従魔契約の影響だったのか、従魔契約の影響だったとして個体差がでるのか、ほかにどんな影響があるのかまではわからなかった」
「そもそも当時でもさすがに公になれば倫理的に問題になっただろう。よく記録だけでも残したものだ」
魔術局に記録が残っていたということは、誰かが行った記録を手に入れて公になる前に隠ぺいしたか、もしくは魔術局自体で、ということなのだろう。
怖いからあまりそのあたりは突っ込まないでおく。
「メイリン君の話から、過去の実験結果が思いかけず検証できたわけだが、その時に実験台にされた者が従魔契約を解除できたかどうかの記録は残っていないので、その資料自体は君の役にはたたなかった」
それは仕方のない話である。
「レーリーとも時間をかけてどうにかしようということで話し合いはついています」
「従魔契約の件についてはそんなところだ。
次に確認したいことだが、ホワイトタイガーを従魔にできた件なんだが」
マダラン局長が尋ねてきた。まあ当然だろう。




