討伐実習編その16
ダブタン視点
やっとビッグボアを倒したと思ったら、レーリーという従魔が突然森の奥へ駆け出した。
そしてそれを追いかけて従魔の主であるメイリンという子もこちらの制止も聞かず、飛び出して行ってしまった。
「はやくメイリンを追いかけませんと!」
「駄目だ。今迂闊に森の奥に入るのは危険だ。少なくとも傭兵ギルドから増援が来るまではここで動くな」
サシャという子がメイリンを心配して追いかけようとしているが、アルドア君が押しとどめている。
実際、新たな魔獣は現れていないが、これだけ大量の魔獣が出てきたのだから油断はできない。
ちょっとした魔獣暴走だった。こんな依頼を学園生徒に割り振ったことで、傭兵ギルドにもペナルティが課せられる可能性すらある。
生徒に被害が出なかったことが不幸中の幸いだったのに、最後の最後にあのぶっ飛んだ従魔がやらかしてくれたわけだ。
彼女を追いかけるわけにはかない。なぜなら彼女は平民で、残っている者たちは貴族の子弟だからだ。
残酷だが、もしも彼らをおいてメイリンを追いかけるなら、それこそ責任を問われることになりかねないのである。
しばらく彼らは相談していたようだが、方針が決まったのかリーダーのアルドアが俺に近づいてきた。
「ダブタンさん、魔獣も出てこなくなったので、俺たちで森の中へ入ってもいいですか」
うん、平民の子であっても仲間として見捨てないその態度には好感が持てる。
「駄目だ。本当に安全なのか確認できない。君たちにこれ以上何かあれば、学園に対しても申し訳ない。せめて君の従魔が戻ってくるのを待ちなさい」
そう、現状では森の中を偵察する手段がない。
アルドアのウイングオウルは、一番近くの傭兵ギルド支部まで救援要請の手紙を運んでいる。
手紙を見てすぐに対応してくれれば、おそらく1時間くらいで増援を連れて戻ってこれるはずだから、そろそろ到着するはずだ。
そのことを伝えて、彼らだけで森の中へ突撃することは押しとどめる。
本当なら俺も一緒に探しに行きたいところだが、無責任な判断はできない。
まあ彼らをここに残している時点で俺の責任感なんて鼻で笑われるものだがな。
それから暫くして、傭兵ギルドからの増援が10人到着した。
思っていたよりも早い。おそらく殿下もいるので、念のためと待機していた者たちがいたのだろう。
「魔獣が多く出てきたということだが……これはすごいな」
増援のリーダーはギルド支部の副支部長だった。
彼の目の前に、すでに倒した40体以上のホーンラットと3体のビッグフォックスの死体が並んでいる。
「あと、そちらの空堀の下にビッグボアもいます」
「ビッグボアが出たか!」
「ですが、討伐済みです。今のところ、追加の魔獣は出てきていませんが、さすがにこれだけの魔獣が出たことで増援要請を出しました」
「なるほど。被害はないか」
「ここに残っている者たちは疲れているでしょうが目立ったけがなどはありません。ただ一人が自分の従魔を追って森の奥へと入ってしまいました。できれば魔獣の残りがいないかの確認もかねて、探しに行きたいと思っています」
「そうか。捜索と状況確認は確かに必要だな。まずは残っている学生たちを安全なところへ退避させたほうがいいな」
「待ってください! 俺たちもメイリンを探しに行きます」
アルドアがリーダーらしく宣言した。他のメンバーもその気らしい。
だがそれを受け入れるわけにはいかない。
「すまんが、すでに学園に出した以来の分は達成済みだろう。ここからは正規の傭兵による仕事だ」
副支部長がそう答える。
「ですが仲間が行方不明です!」
「だからこそだ。これ以上被害を増やすわけにはいかない」
アルドアも食い下がるが、当然副支部長も引かない。
そんなやり取りをしていると、別の声が上がった。
「奥からでかい反応が近づいてくる!」
どうやら増援の中に探知持ちがいたらしい。
その場にいた全員に一気に緊張が走る。
そのまま出てくる相手を待ち構えていると……。
「ただいま」
なんとメイリンが体長4mはあろうかというホワイトタイガーにまたがって現れた。
ナナコ視点
メイリンさんと一緒に歩くと、わたしの歩幅の関係でどうも歩きにくかったので、背中に乗ってもらうことにしました。
人を抱えて歩くなんて経験なかったけど、この体だと全く問題ナッシング。
で、案内されたところに到着したら……。
おおおおお! 獣人にエルフかな? それにあれはドワーフ? なんかいかにも異世界っ! て感じの方々がそろってお出迎え。
ただこちらに武器を向けているのがちょっと怖いよ!
わたしは無害だから! 人畜無害! 超おとなしいよ!
メイリンさんが前に出て説明してくれたので、事なきを得ました。
で、早速メイリンさんに聞いてみます。
“あの耳の先がとがっている方とか、ケモミミの方とかいらっしゃいますが、ここはこういう方がデフォルトでいらっしゃるので?”
『……レーリーは全く反応しなかったから異世界人は気にしていないのかと思ったけど、ナナコは気にするんだ』
“気にするというか、わたしのいた世界では物語の中にしかいなかった存在が目の前にいるんですよ! ふぉおおおお血が滾ってきたぜぇぇぇぇぇ!”
なんかメイリンさんがドン引きしているけど気にしていられません。
“メイリンさん、皆を紹介してくださいよ!”
『従魔に皆を紹介するとか、普通しないから』
“えええええー。何でですか紹介してくださいよ隠すなんてズルいですよせっかく異世界っぽい方々とお近づきになれるチャンスなのにー。
そうだ! しっぽ、しっぽモフモフしてもいいですから! モフモフ好きでしょ? さっきわたしの背中に乗った時にモフモフしていましたもんね?“
わたしがしっぽを差し出すと、どうも心惹かれるものがあったらしい。
『別にしっぽモフモフなんて、命令すればできることだし。だけど高位の魔獣だからある程度判別がつくことにすれば、紹介しても不自然じゃないわね』
“おおう、メイリンさんはクールさんかと思ったらツンデレさんでしたか。今時珍しいですよ。ツンデレは”




