討伐実習編その14
メイリン視点
レーリーを追って森の中を駆けていく。
従魔契約のおかげか、どの方向にいるのかなんとなくわかる。
やっと追いついたと思ったら、そこにはでっかいホワイトタイガーがいた。
先ほどのビッグボアよりさらに一回り大きい。
そしてそのホワイトタイガーとレーリーが一対一で対峙していたようだ。
しかしレーリーはわたしに気付くと、ホワイトタイガーを無視してわたしに近づいてきた。
“メイリン、逃げるようにいったのに、なぜこんなところまで来てしまったのですか”
「だってレーリーがわたしを置いて行ってしまったんだもの。わたしはあなたの従者なんだよ。主人が従者を置いて先に行ってはダメだよ」
“……そういうことですか。つまりメイリンは従魔契約に縛られてしまっているのですね”
「そういうことよ。あなたが命令で『逃げろ』と言ったら、逃げるしか選択肢はなかったでしょうね」
“以前から思っていましたが、あまり健全な関係だとは思えません”
「しょうがないよ。もともとは危険な魔獣を安全に扱うために開発された魔法だし」
“……メイリンは従魔を使い捨てだと考えますか”
「え?」
“以前、エリナ様もそう言っていたと思います。……ちょっと言い方が悪かったですね。もしもわたしが普通に従魔になっていたとして、使い捨てにしても良いと思っていたでしょうか”
「わからないわ。ただ使い捨ては言いすぎだけど、弱い従魔だと敵の足止めくらいにしかならない場合もあるから、結果的には一度の戦いで死んだり、大けがを負う場合が多いの。
大けがを負った場合でも、治療自体が難しいことが多いし治療する費用もばかにならないから、大抵は苦しまないようにとどめを刺すことが多いわ」
もしかしたなら、使い捨てにしないという返事を望んでいるかもしれない。
だけどレーリーに嘘を言っても仕方がない。たぶん見破られる。
それなら最初から事実を伝えたほうがいい。
「ただ、あくまでも結果的に使い捨てのようになるというだけよ。
そもそも戦いながら新たに召喚することはできないから、その召喚獣を失えば自分の攻撃手段が減るわけだし」
“いえ、いいのです。そもそも召喚獣というものの立場がそういうものなのでしょうから。
ただ、今からお願いすることがそういう召喚獣の立場に少々反してしまうかもしれないのです“
「なんのこと?」
“あそこにいる魔獣ですが、どうもわたしと同じように別の世界からこちらに魔獣として生まれ変わったばかりのようなのです。
それで、そういう生まれなのでできれば人の近くで過ごしたいということなのですが、やはり魔獣のまま人里近くに住むのは難しいですよね“
「そうだね。本来は従魔になることで制御できるからこそ街の中に入れるから、いくら元は人間だといっても従魔にならないと難しいと思う」
“わたしはメイリンの従魔ではないですが、同じように従魔のふりをするというのは?”
「レーリーの場合は先生の目の前での出来事だったし、すぐに学園長やマダラン局長も確認した上での特別対応だから、今回は難しいと思う」
“そうですか。ではやはりメイリンがあの子と従魔契約を結ぶしかないですね”
「え、わたしが?」
“他に方法がないではないですか”
「だけど1年だと従魔は1体と決まっているから、勝手に増やせないんだけど」
“たしか学則できまっているのですよね。ですが例外措置として、学園が特別に認めた場合は決められているより多くの従魔を持つことも許されていたはずです”
げ、学則まで目を通しているの?! わたしだって全部は読んでないのに。
“彼女の名はマチダナナコ。彼女は見知らぬ土地で魔獣になって森を彷徨い、やっとここまででてきたそうです。
あなたが従魔契約をしてくれないと、また森の奥を彷徨うか、もしくは人里に近づいて討伐されてしまうかもしれません“
「だけどそれが例外措置として認められるとは……」
“メイリン、よく考えてください。ナナコが通常の魔獣と考えた時、どのランクと判定されるでしょうか”
「たぶん、ランク3以上は間違いないかと」
“そうです。少なくともビッグボアがその強さを感じて逃げ出すくらいです。ランク4はあるでしょう。では、ランク4の魔獣が村を襲ったらどうなるでしょうか”
「それは、ほぼ間違いなくその村に全滅かそれに近い被害が出るわね。近隣にいる傭兵総出で対応することになるかな。もしかしたら国軍が出陣するかもしれない」
“つまり、目の前にはそれだけの騒動を起こしかねない魔獣がいます。それを被害を出さずに収める方法があれば、それを試すべきではないでしょうか”
「確かにそうだけど……」
“メイリンが従魔契約すれば、騒動を起こすまでもなく丸く収まるわけです”
レーリーの説得技術が半端ない。




