プロローグその6
しばらく一本道が続きましたが、ついに分かれ道が出てきました。
それぞれの方向の気配を探ってみると、右側に何かがいるようです。
感じる気配からして、おそらく先ほど倒した小鬼とは別の何かのようです。
安全を考えるなら左へ行くべきですが、今はとにかく少しでもこの洞窟のことを知るべきですし、余裕があるうちにどんな生き物が徘徊しているかを把握することも重要です。
相手にしないまでも、せめて様子を見に行きましょうか。
……今、何かよくわからない感触がすり抜けたような気がします。
どうも気のせいではないようで、先ほどから確認していた気配が急にこちらに近づいてきました。
おそらく今の感触は相手がこちらの気配を探っていたのでしょう。
そうすると、こちらが気配を探っていることも相手に伝わっていた可能性があります。これは今後、気を付けなければなりません。
どちらにしろ相手はこちらにすでに気づいているようです。
不意打ちができなくなったのは残念ですが、今更考えても詮無いことです。
せめて少しでも有利に迎え撃つために、岩陰に隠れましょう。
しばらく岩陰から様子をうかがっていると、近づいてくる相手が見えました。
今度は狗の頭をした人です。しかも手には剣を持っています。とりあえず狗人と呼ぶこととしましょう。
感覚的に、先ほどの小鬼よりも強そうです。
狗人はきょろきょろ何かを探しています。おそらくわたしでしょう。
このままやり過ごせるならそれに越したことはありませんが、辺りを伺いながら近づいてくるので、それも難しいでしょう。
わたしは改めて戦う決断をします。